目次
はじめに
Ⅰ 政治
第1章 国土と人口――10万平方キロに5000万人
第2章 冷戦と分断――朝鮮民族に関わりなく始まった分割占領
第3章 冷戦の構造化――反共体制に支えられた上からの開発政策
第4章 民主化運動の高揚と市民社会の形成――転機としての6月闘争
第5章 平和的政権交代と保守政権の復活――過渡期から民主化の実現、そして停滞
第6章 憲法と政治形態、政党――強力な権限を持つ大統領制
第7章 南北対立から和解へ――冷戦克服への模索
第8章 韓国の軍隊と徴兵――社会の変化が軍に問うもの
第9章 日韓関係――無関心から韓流ブーム、そしてヘイト・スピーチ
【コラム】竹島=独島について
第10章 韓国の外交関係――東北アジア地域協力に向けて
Ⅱ 社会
第11章 教育システムと受験戦争――大学受験に競争が集中
第12章 いじめ・学校暴力――制度的対応も功を奏さず
第13章 教育の新しい動き――多様化への試み
第14章 環境問題と環境政策――反公害から環境保全へ
第15章 環境に関わる市民運動――地球サミットを契機に定着
第16章 原発の現状と脱原発――大都市の市民が問われている
第17章 女性の人権とジェンダー――ダブルスタンダードは依然
第18章 性暴力と社会的対応――男性優位文化との葛藤
第19章 開かれた社会をめざして――在韓外国人と移住労働者の受け入れ
第20章 定住外国人――多文化政策の進展
第21章 在外コリアンの過去・現在・未来――世界に広がる700万人
第22章 社会保険制度――成熟期に向かう四大社会保険制度
第23章 福祉サービス――子ども・高齢者・障害者のニーズに応える
第24章 貧困と雇用――広がる協同組合
第25章 住宅と福祉――公共賃貸住宅はこれから
第26章 地方と地域格差――ソウル一極集中と社会両極化
第27章 地方自治の成果――進む自治体改革
第28章 世代差と社会意識――拡大する高齢者の割合
第29章 88万ウォン世代――非正規職と労働市場
第30章 大学生の就職活動――4年生の就活ないが日本より激烈
第31章 労働運動――雇用を守る闘いが長期化
第32章 社会を動かす市民運動――問われる政治との距離
第33章 離散家族、「脱北者」――分断の内面化
第34章 自殺の増加を食い止める――求められる死についての教育
第35章 変貌する家族関係――大家族の時代ははるか昔
Ⅲ 経済
第36章 韓国経済の成長と現況――めざましい発展と今日的課題
第37章 財閥と経済構造――韓国経済を支配する力
第38章 経済と財政運営――経済計画から民生安定へ
第39章 為替レート、金融と貿易――輸出を左右してきた重大要因
第40章 農業と農村――存亡の岐路に
第41章 韓国のFTA政策――積極策が奏功
第42章 韓国流通産業――製造業に次ぐ巨大産業
第43章 韓国企業の海外進出――グローバル生産体制と企業責任
第44章 貧富の格差――アジアのなかで最小
第45章 所得と家計――日本との比較の視点
Ⅳ 文化
第46章 現代韓国語の形成――表記法の確立に向けて
第47章 テレビドラマの変遷――日日ドラマから週二回放送へ
第48章 多様化し深化する韓国映画――興業記録の更新もしばしば
第49章 K-POPへの道のり――米軍ショーから広まった洋楽
第50章 K-POPアイドルの誕生とファンダム――ソテジの革命
第51章 演劇・ミュージカル――NANTA観客は1000万人突破
第52章 文学――海外に目を向ける作家たち
第53章 韓国のプロ野球――どん底から這い上がった国民的スポーツ
第54章 韓国人とオリンピック――巨大スポーツイベントを通しての、国造り、地域おこし
第55章 出版――日流ブームは出版界にも
第56章 美術――世界に開かれたアートシーン
第57章 新聞・放送――多彩な報道メディアが社会を活性化
第58章 宗教――多文化時代を迎える多宗教社会
第59章 パン食とケーキ――食文化の現代化
第60章 SNSとソーシャルテイナー――新しい連帯の可能性
現代韓国を知るための参考文献・サイト
前書きなど
はじめに
明石書店のエリア・スタディーズから舘野晳さんとの共編で『現代韓国を知るための55章』を出したのは2000年6月のことであった。ちょうど朝鮮半島では史上初の南北首脳会談が行なわれ、新しい時代の到来が予感された。
その後、日本では2002年のワールドカップ日韓共催を経て、2003年ごろからテレビドラマ「冬のソナタ」をきっかけとした韓流ブームが起こり、2000年代後半にはKポップへの関心が高まった。年齢の高い層から若者に至るまで、文化を通じて韓国は日本社会にとってとても近い存在になったように思われた。実際、韓国に行ってきたとか、韓国の〇〇に関心があるとかいったことを、日常生活で人に語るのがちょっとはばかられた時代は、21世紀には過ぎ去ったかに思われた。
(…中略…)
本書は『55章』出版後、かなりの年月がたち、改訂版を出す必要に迫られて準備してきた。舘野晳さんは別途、「もう少し韓国のことを知ってみたい」という人たちに向けて『韓国の暮らしと文化を知るための70章』を2012年末に刊行した。それに対し本書『現代韓国を知るための60章【第2版】』は、大学生など韓国のことをきちんと研究してみたい人を対象として、進んで韓国を知ろうとする皆さんの入門書になるように書かれている。韓国に関するこの間の学問的成果をふまえつつ、わかりやすく叙述するように努めた。参考文献は日本語のものを基本としたが、入門的な書籍がない場合は学術書も含め、場合によっては韓国の資料も含めて紹介している。
かつて1970年代、日本社会が韓国に関心を持ち始めた時代に、多くの日本人は民主主義、人権を求めて闘う韓国民主化運動の人びとに感動と敬意を覚えた。それはつらい現実のなかにおける出会いであったが、日本人みずから日韓関係を平等かつ自由なものへとただそうと努力し、韓国人がそれに呼応することで、日本人と韓国人が友人となりうる道が開かれた。今、日韓国交正常化から半世紀を前にして、時代は変わり、出会いの道筋はかつて思いもよらなかったほどに増えている。真摯に考えるところに希望が開ける。事実に基づき深く知り、心を開いて交流すれば、出会いと協力の喜びがあるはずだ。(……)
(…後略…)