目次
読者の皆さんへ
Ⅰ アセスメントと治療に関わる全般的な課題
第1章 子どものためのアクセプタンスとマインドフルネス――そのときは今
子どもと成人それぞれを対象とした場合に「共通する課題」
子どもを対象とした場合の「固有の課題」
本書の目的と構成
第2章 子どもと青少年のための第3世代の行動療法――進展・課題・展望
子どもと青少年へのアクセプタンスとマインドフルネス――概観
マインドフルネス,アクセプタンス,そして子育て
その他の課題
結論――今後の展開
第3章 子どものアクセプタンスとマインドフルネスのプロセスに関するアセスメント
子どものマインドフルネスとアクセプタンスを研究する理由
人の歩まぬ道――「プロセスとしての認知」対「内容としての認知」
マインドフルネスの概念化
マインドフルネスとアクセプタンスのプロセスを評価する
成人を対象とした測定尺度
子どもと青少年を対象とした評価尺度
子育ての文脈におけるマインドフルネスとアセスメント
小児科を受診する子どものマインドフルネスとアクセプタンス
現在進行中の研究――新たな評価尺度と方法論
結論
Ⅱ 特定の集団への適用
第4章 マインドフルネスによる不安の治療――子どものためのマインドフルネス認知療法
子どものマインドフルネス
MBCTからMBCT-Cへの移行
MBCT-Cの目標と方略
今この瞬間にマインドフルネスを実践する
五感を通したマインドフルネスの習得
結論
第5章 小児慢性疼痛のためのアクセプタンス&コミットメント・セラピー
小児慢性疼痛
疼痛行動の行動的アセスメント
結論
第6章 ボーダーラインの特徴のある青少年のための弁証法的行動療法
DBTの概要
青少年と家族のためにDBTを改良する際の問題
青少年と家族のためのDBTに特異的な方略
弁証法を教える
青少年にアクセプタンスとマインドフルネスを教える
結論
第7章 学齢期の子どものためのマインドフルネス・ストレス低減プログラ
年齢に合わせた改良
研究結果
子どもと親に同時にマインドフルネスを教える
教室でマインドフルネスを教える
結論
第8章 子どもの外在化障害のためのアクセプタンス&コミットメント・セラピー
認知への行動的なアプローチ――関係フレーム理論
外在化障害のある子どもへのACT
結論
第9章 青少年のアクセプタンスとボディーイメージ,健康
青少年における摂食と体重に関する問題
ACTの概要
青少年への適用
ACTヘルス・プログラムの概要
ACTヘルス・プログラムの介入法
結論
Ⅲ アクセプタンスとマインドフルネスをより大きな社会的文脈へ組み込む
第10章 マインドフル・ペアレンティング――帰納的な探索過程
視点の問題
マインドフルネス瞑想と効果的なペアレンティング
行動的ペアレント・トレーニングでは不十分な場合
瞑想と親の視点の再構築
臨床過程――マインドフルネス,NRT,BPT
結論
第11章 小児プライマリーケアにアクセプタンス&コミットメント・セラピーを組み込む
ACTの概要
小児プライマリーケア
行動医療サービスをプライマリーケアに取り入れる際の問題
プライマリーケアのための行動医療モデルとACT
PCBHモデルに取り組み,ACT-PC手法を用いるための指針
患者と家族のためのACT-PCコンサルテーション・サービス
ACT-PC集団健康プログラム
結論
第12章 学校でのアクセプタンス推進に行動コンサルタントが果たす役割
学校文脈での配慮
全体的で完全で完璧なスタンス
現在の教育的文脈を認める
結論
新たなフェーズのための「福袋」――監修者あとがきにかえて
索引
前書きなど
第1章 子どものためのアクセプタンスとマインドフルネス――そのときは今
(…前略…)
○本書の目的と構成
本書はマインドフルネスとアクセプタンスの子どもと青少年への適用を念頭に置き,一人ひとりの子ども,家庭,学校,医療現場のそれぞれに焦点を当てていく。第Ⅰ部ではその概要を示す。第2章では,子どもを対象として開発と検証が進められているアクセプタンスとマインドフルネスの技法の詳細を解説し,第3章では子どもを対象としたプロセスのアセスメントと密接に関わる課題について考察する。これら冒頭の章では,それ以降の章に関わる技術的・知識的な文脈を提示する。
第Ⅱ部では,さまざまな対象集団に対するアクセプタンスとマインドフルネスの適用を検討する。たとえば,不安に対するMBCT,小児疼痛に対するACT,境界性パーソナリティ障害の特徴のある思春期の青少年に対するDBT,小学4~6年生の子どもとその親に対するMBSR,子どもの外在化障害に対するACT,思春期女子のボディーイメージと健康に適用する場合のアクセプタンスの技法などである。アクセプタンスとマインドフルネスのアプローチが適用できる対象は,到底ここで挙げたものだけには留まらない。本書は網羅的であることを目指してはいない。むしろ,さまざまな実例を豊富に提示することによって,起こりうる困難とそれに取り組むうえで効果があった各種の調整方法について,学生や臨床家,そして研究者に意識させ,アクセプタンスとマインドフルネスの技法を実行に移してもらえるようにすることが,我々の狙いなのである。
第Ⅲ部では,アクセプタンスとマインドフルネスをペアレント・トレーニング・プログラムやプライマリーケア,学校などの新たな状況や文脈へと拡大する方法を検討する。その目的は第Ⅱ部と同じく,読者が自分の研究や実践に合わせてこれらの技法をスムーズに修正できるように,内容と実例を十分に示すことにある。より広い社会的・文化的な文脈へと焦点を広げ,すでにアクセプタンスとマインドフルネスの技法を用いている研究者や臨床家が,さらに大きな変化を目指していけるよう後押しできれば幸いである。
最後に,本書は現在進行中の取り組みをまとめることを目的としている。本書の各章が,何らかの答えではなく,むしろ新たな問いを生み出すことを我々は期待しているのだ。それは,新たな領域が今ここで生まれようとしている,そんな刺激的な時代の到来を意味しているだろう。この領域での取り組みは,子どもとその世話をする大人たち,そして,やがて大人になる人々のニーズを満たすために,アクセプタンスとマインドフルネスをいかに創造的に用いるか,ということを明らかにしつつある。本書はきっと,読者にもそのような心躍る感覚をもたらすことだろう。