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タイ上座仏教と社会的包摂 -ソーシャル・キャピタルとしての宗教-

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詳しい情報
読み: タイ ジョウザ ブッキョウ ト シャカイテキ ホウセツ : ソーシャル キャピタル ト シテ ノ シュウキョウ
出版社: 明石書店
単行本: 360 ページ
ISBN-10: 475033796X  ISBN-13: 9784750337968  [この本のウィジェットを作る]
NDC(9) : 187.6

紹介

タイにおいて公共領域や社会生活と大きく関わっている上座仏教について、「現代タイ社会の構図と再編の課題」「タイ仏教によるソーシャル・サポート」「タイ仏教の新潮流」という構成によりその全体像をとらえ、宗教とソーシャル・キャピタルとの関係を探る。

目次

はじめに タイ上座仏教とソーシャル・キャピタル(櫻井義秀)


第Ⅰ部 現代タイ社会の構図と再編の課題

1章 地域社会の再編とソーシャル・キャピタル(櫻井義秀)
 一 はじめに
 二 地域社会の変動
 三 都市‐農村関係再編への試み
 四 社会的包摂のためのソーシャル・キャピタル
 五 おわりに
 [コラム]総合学習としてのタイ研究とフィールドワーク

2章 社会的包摂としてのインフォーマル教育(北澤泰子)
 一 はじめに
 二 社会的排除と子どもたち
 三 生き直しの学校
 四 子どもの村学園
 五 生き直しの学校と子どもの村学園の比較
 六 おわりに
 [コラム]タイ体験学習


第Ⅱ部 タイ仏教によるソーシャル・サポート

3章 タイ上座仏教寺院とHIV/エイズを生きる人々(佐々木香澄、櫻井義秀)
 一 はじめに
 二 タイのHIV/エイズ問題と仏教寺院
 三 エイズホスピスとしての寺院
 四 HIV/エイズを生きる人々
 五 おわりに
 [コラム]バイクタクシーの運転手

4章 国際NGOによる上座仏教のソーシャル・キャピタル化(岡部真由美)
 一 はじめに
 二 北タイにおけるエイズの課題と僧侶による解決の取り組み
 三 国際NGOによる介入をとおした僧侶ネットワークの形成
 四 国際NGOによる上座仏教のソーシャル・キャピタル化
 五 おわりに
 [コラム]他宗教との対話

5章 瞑想と生きる実践――生きにくさに寄り添う(浦崎雅代)
 一 はじめに
 二 瞑想実践とは
 三 カンポン・トーンブンヌム氏のライフヒストリー
 四 カンポン氏をとりまく人々と環境――善友という概念と実践
 五 考察――生きにくさを学びに変える技法としての瞑想
 六 おわりに――「ただ観る」という生きる技法
 [コラム]タイでの原体験――バナナで火を消すお坊さん

6章 タイにおける洪水問題と寺院の社会活動(スチャリクル・ジュタティップ、櫻井義秀)
 一 はじめに
 二 二〇一一年の洪水問題
 三 寺院による救援活動
 四 洪水に対応した寺院・僧侶の役割
 五 おわりに
 [コラム]二〇一一年の大洪水


第Ⅲ部 タイ仏教の新潮流

7章 仏教・国王・学生と絆づくりのイノベーション(矢野秀武)
 一 はじめに
 二 事例紹介
 三 ソーシャル・キャピタルの形成
 四 おわりに
 [コラム]どうも勝手が違う…

8章 現代タイの「宗教の回復」(泉経武)
 一 はじめに
 二 プッタタート比丘の仏教思想――プラウェートのチットウィンヤーン理解の淵源として
 三 チットウィンヤーンに関する国家健康法案の議論
 四 おわりに
 [コラム]熱望からの覚醒/自己への覚醒

9章 ドイツにおけるタイの寺院とソーシャル・キャピタル(ティラポン・クルプラントン)
 一 はじめに
 二 ドイツの上座仏教寺院
 三 寺院の宗教活動
 四 寺院によるソーシャル・サポート
 五 ドイツに暮らすタイ人
 六 おわりに
 [コラム]ドイツ在住のタイ僧侶の温かさ


  あとがき
  索引

前書きなど

はじめに――タイ上座仏教とソーシャル・キャピタル(櫻井義秀)

 (…前略…)

本書の構成

 Ⅰ部「現代タイ社会の構図と再編の課題」では、地域社会変動とそれが生み出した地域間・階層間格差の問題を扱う。家族や地域社会の扶養力が脆弱化したことに伴いこどもたちの教育問題も浮上している。1章「地域社会の再編とソーシャル・キャピタル」において、櫻井義秀が国連において提唱された人間の安全保障という概念に基づき、〈都市‐農村〉関係の再編過程をふまえた上で、地域社会で生活する人々の社会過程を分析する新しい視点としてソーシャル・キャピタル論の有効性を検討する。
 2章「社会的包摂としてのインフォーマル教育」では、北澤泰子が社会的排除を受けたこどもたちに家庭と学校を経験させて社会参加を促すインフォーマル教育の実践として、ドゥアン・プラティープ財団によって支援される「生き直しの学校」とA・S・ニールの教育理念に基づいて設立された「子どもの村学園」を比較検討して、タイ社会の課題を提示する。
 第Ⅱ部「タイ仏教によるソーシャル・サポート」では、上座仏教寺院と先進的な僧侶による社会事業を紹介する。3章「タイ上座仏教寺院とHIV/エイズを生きる人々――プラバートナンプ寺院を事例に」では、佐々木香澄と櫻井義秀が、一九九二年から現在まで二〇年間継続しているエイズ・ホスピスの事業内容から、僧侶とボランティア、患者達の協働の場としてのホスピスを描き出す。また、エイズという病と共に生きる患者達の生活史の聞き取りから、伝統的な共同体で排除を受けた感染者や患者達が「ケアの共同体」において自尊心の回復が可能になった心理過程を明示する。
 4章「国際NGOによる上座仏教のソーシャル・キャピタル化――北タイにおける僧侶のエイズケアとネットワーク形成を中心に」では、岡部真由美が、海外の社会活動型NGOが現地の活動拠点となる僧侶達のネットワークや学習を支援する事業を追いながら、外部資源の導入によって上座仏教のソーシャル・キャピタル化された事例を紹介する。しかしながら、僧侶達は資源導入を奇貨として自分たちの学習と実践を進める独自性を示してもいる。
 5章「瞑想と生きる実践―生きにくさに寄り添う―ある障害者のライフ・ヒストリーにみる「ただ観る」という生きる技法」では、浦崎雅代が東北タイのチャイヤプーム県ターマファイワン村のスカトー寺において開発僧調査(カムキエン師、パイサーン師、プラユキ・ナラテボー師等)に従事した際に知り合ったカンポン・トーンブンヌムの瞑想体験と社会活動を紹介する。この章ではタイの気づきの瞑想修行についてかなり詳しい説明がなされるが、個人がよく生きるための瞑想が周囲の人々と共鳴し、自助組織活動にもつながる瞑想法のソーシャル・キャピタルとしての潜在力に焦点があてられる。
 6章「タイにおける洪水問題と寺院の社会活動」では、スチャリクル・ジュタティップと櫻井義秀が、二〇一一年のタイの大洪水の際に地域の寺院がどのような被災者支援を行ったのかを報告する。寺院の規模や被災状況によって支援力に相違は見られるものの、寺院は地域の避難場所や被災者支援の拠点として機能した。
 Ⅲ部「タイ仏教の新潮流」では、文字通り、上座仏教としての新しい動向を扱い、ソーシャル・キャピタルとしてのポテンシャルを増している様を紹介する。7章「仏教・国王・学生と絆づくりのイノベーション――学校がつなぐ寺院と地域」では、矢野秀武が、教育省(基礎教育委員会事務局・教育運営イノベーション開発課)が主導する「仏教式学校」プロジェクトと、研究・社会活動を行う一僧侶が始めた「善徳」プロジェクト(Moral Project)を事例に、政府の肝いりや指導的な僧侶が主導するわけではないが、仏教を核として社会作りをしていこうというタイの志向性を解説する。タイの仏教が公共宗教だけではなく、じわじわと下からわき上がるソーシャル・キャピタルとして機能するというのは、こうした事業に対して政府の諸機関や民間、一般市民が賛同し、運動に参画することによって証明される。
 8章「現代タイの「宗教の回復」――プラウェート・ワーシーのチットウィンヤーンの見解に関する考察」では、泉経武がタイの知識人によるタイ仏教へのスピリチュアリティ概念導入の顛末について報告を行う。欧米あるいは日本においても壮年・青年世代の宗教組織離れが顕著であり、所属なき信仰(believing without belonging)や教団宗教(religion)よりも個人的な精神性(spirituality)重視の傾向が見られて久しい。タイ仏教に新しい生命力を吹き込むためには、サンガ・寺院主体の仏教に加えて個人的な仏教信仰の再興こそが重要であるという議論の可能性を論じる。
 9章「ドイツにおけるタイの寺院とソーシャル・キャピタル」では、ティラポン・クルプラントンがヨーロッパにおけるタイ上座仏教寺院の拡大(全七六ヵ所)、特にドイツの寺院(全三五ヵ所)中二四ヵ寺で調査した資料に基づき、タイ寺院の実態を報告する。ドイツには六万人弱のタイ人が居住し、うち七割がドイツ人男性と結婚したタイの女性であるが、寄進を集めてタイ人コミュニティの核となる寺院を開設し、タイから僧侶を招いて各種の相談事や年中行事を行うと同時に、仕事上の情報交換や取引のチャネルにも用いている。エスニック・チャーチとしての機能を果たすタイ寺院と寺院を核とするネットワークは、異国に暮らすタイ人にとってソーシャル・キャピタルである。
 以上が各章の概要紹介であるが、本書では執筆者に「タイのフィールドから」ということで章と章との間にエッセィを書いてもらっている。タイのフィールドワークを通して執筆者が何を感じ、フィールドでどう自分が変わる経験をしたのかを簡単に紹介してもらった。執筆者をより身近に感じてもらえれば幸いである。
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