目次
はじめに
Ⅰ 多様性の国スペイン
第1章 多様な自然環境――国土の概観
【コラム1】環境問題と破壊衝動
第2章 多民族の国――イベリア半島は文明の十字路
第3章 多言語の国――スペイン語オンリーから多言語主義へ
Ⅱ 政治・外交
第4章 フランコ・スペイン時代を振り返る――わが初体験、軍事独裁国
【コラム2】歴史的記憶法―内戦およびフランコ時代の記憶をめぐって
第5章 民主化を進めた首相たち――スアレスからサパテロまで
【コラム3】ラホイ首相の手腕はいかに
第6章 自治州国家――政治の二重構造
第7章 スペインの王室――フアン・カルロス1世とその家族
【コラム4】フクシマの英雄、アストゥリアス皇太子賞受賞
第8章 スペインの貴族――名誉と忍耐の称号
第9章 EUの中のスペイン――ヨーロッパ主義の優等生
第10章 対米外交――大西洋主義と欧州主義の狭間で
第11章 対ラテンアメリカ外交――イベロアメリカ国家共同体は夢物語か?
第12章 対アラブ・アフリカ外交――モロッコ、西サハラ問題を中心に
第13章 対中東外交――イスラエルとパレスチナ関係を中心に
Ⅲ 経済・産業・観光
第14章 マネーゲームの戦場にて――節度なき「競争」との戦い
【コラム5】躍進する交通機関
第15章 不動産・住宅バブルの崩壊と金融・財政危機――高成長の光と影
第16章 若者が患う「慢性失業病」――恒常的な失業体質
第17章 観光立国の観光産業――太陽と海と祭りとワイン、その他いっぱい!
【コラム6】サンティアゴ巡礼
第18章 観光資源として見る世界遺産――何でもありのスペインは文化観光大国
第19章 スペイン語は重要な経済資源――世界で存在感が高まるスペイン語
第20章 世界に躍進するスペイン企業――加速する国際化
【コラム7】ファストファッションの雄、ZARA
第21章 スペインで活躍する日系企業――労働集約産業から高付加価値産業へ
第22章 スペイン産業の生き残り戦略――中南米地域でのビジネス拡大の可能性
第23章 再生可能エネルギー産業の将来性――持続可能な社会を目指して
第24章 水ビジネスのグローバル展開――日西企業の相互補完でビジネス拡大
第25章 日本とスペインのビジネス協力――途上国の水・環境ビジネスにチャンス
第26章 バルクワインからスーパースパニッシュへ――方向転換に成功したスペインワイン
第27章 スペインを支えてきた「オロ・リキド(液体の黄金)」――オリーブ油の魅力
第28章 古くて新しい究極の保存食――世界的に人気のハモン・イベリコ
Ⅳ 社会
第29章 治安は大丈夫!?――減少傾向にあるテロと犯罪の裏側
【コラム8】ETAはテロもバスク独立も放棄したのか
第30章 スペインを「麻薬王国」と呼ぶべきか?――先進国の宿命
第31章 若者たち――「ユーロ世代」あるいは「氷河期世代」
第32章 移民の素描――送り出し国から受け入れ国へ
第33章 どうなる「移民天国」スペイン――人口比13%の外国人を抱えて……
第34章 揺れる学校教育――教育における思索と実践
第35章 科学の貧困と頭脳流出――スペインが抱える問題と科学の未来
第36章 新しい女性の形成――妻、母から独立した一人の女性へ
第37章 ドメスティック・バイオレンス――女性への家庭内暴力と女性の男性に対する暴力
第38章 健康――増え続ける肥満、21世紀の伝染病
【コラム9】臓器移植は「スペインモデル」
第39章 新しい家族モデル――自由と平等と幸福のかたち
第40章 家族と住宅事情――人権としての住居、快適さを求めて
第41章 宗教――移民が塗り替える宗教地図と進むカトリック離れ
【コラム10】聖週間などの宗教上の伝統行事
第42章 カトリックに根付いた世界観――宗教的伝統と文化変容のあいだで
【コラム11】涙する聖母マリア
第43章 シエスタ――スペインの代名詞
第44章 スペインでもヘルシーブーム――地中海型食生活とファーストフードはどちらが人気?
第45章 バル――スペイン人の最高の社交場
Ⅴ 文化・芸術
第46章 現代美術――フランコ独裁政権後の模索
【コラム12】スペインに魅せられた邦人画家たち
第47章 スペイン建築における独創性――ガウディからカラトラバへ
【コラム13】アントニ・ガウディの食べられる建築―卵と貝とシェル構造
第48章 ポストフランコのスペイン語文学――ボーダーレス化する文学
【コラム14】児童文学
第49章 スペイン民俗芸術の華――フラメンコ
【コラム15】日本で見るフラメンコ―カンテを楽しむ
第50章 現代スペイン映画――調和と衝突の現在
第51章 闘牛消滅か?――バルセロナ・モニュメンタル闘牛場の光と影
【コラム16】スペインで得た夢の闘牛士人生
第52章 黄金時代を迎えたスポーツ界――サッカーだけじゃない! スポーツ大国を目指すスペイン
【コラム17】世界の頂点を極めたサッカー
第53章 音楽の奥深い魅力――「スペインの風味」を探る
第54章 エル・ブジ以前、エル・ブジ以後――21世紀のスペイン料理とは?
【コラム18】見違えるほど美味しくなった、日本のスペイン料理
Ⅵ スペインと日本
第55章 戦後の日本とスペインの交流――日本のサグラダ・ファミリアも一見の価値あり
【コラム19】慶長遣欧使節スペイン訪問400周年を迎えて
第56章 市民による日本・スペイン文化交流――草の根ボランティア
第57章 セルバンテス文化センター東京――日本で一番スペイン的な場所
第58章 日本文化に熱くなるスペインの若者――日本ポップカルチャーが大人気
【コラム20】バルセロナで開催される日本ポップカルチャーの祭典
第59章 日本食ブーム――グローバル化で世界に広がっていく日本食
【コラム21】スペインで盆栽ブーム
第60章 日本文学を読むスペイン人――ジャポニズムから新ジャポニズムへ
【コラム22】村上春樹を読むスペイン人
現代スペインを知るためのブックガイド
前書きなど
はじめに
1992年といえば、バルセロナ・オリンピックとセビリャ万国博覧会の同年開催によって、スペイン・イヤーと呼ばれた。かつて七つの海を支配し、世界に「陽の没することなき帝国」と謳われたスペインが、その後の衰退から甦り、再び世界の檜舞台に躍り出た年であった。
(…中略…)
ユーロ導入で経済危機から救われたスペインであったが、新たな経済危機に直面し、ユーロ導入前には可能であった自国に都合のよい金利・為替設定という手段はもはや実行できない中で、スペインはEUの一員として、国が一つになって史上最大の危機を乗り越える道を模索するほかないのではなかろうか。
エリア・スタディーズではすでに2002年に『スペインを知るための60章』が刊行されている。それから10年が経過したいま、新たに上梓する本書は、スペインに現代を冠して、地理、言語、民族、政治、外交、経済、産業、観光、移民、教育、女性、宗教、美術、建築、文学、スポーツ、音楽、日西交流など様々な側面から、現代のスペインを考察している。
本書の執筆者は総勢30人以上を数えるが、60章に共通していえることは、著者たちがスペインの経済危機に対してなんらかの緊張感を抱いていることが、行間に漂っていることではないだろうか。そして60章の中には、スペインがこの経済危機から脱出する道までも提案している章があるのである。
本書は、6部60章から成り、第Ⅰ部、多様性の国スペイン(1~3章)、第Ⅱ部、政治と外交(4~13章)、第Ⅲ部、経済・産業・観光(14~28章)、第Ⅳ部、社会(29~45章)、第Ⅴ部、文化・芸術(46~54章)、第Ⅵ部、スペインと日本(55~60章)に大別される。
以上の60の章に加えて22の「コラム」から、現代スペインの実像が広く日本の読者に理解されれば、これ以上の喜びはありません。
2013年2月 坂東省次