目次
一 江戸の町奉行のこと
二 江戸町のこと
三 町与力、町同心のこと
四 目明のこと
五 火附盗賊改のこと
六 辻番のこと
七 大坂町奉行のこと
八 代官のこと
九 御預所のこと
一〇 関東取締出役のこと
一一 勘定奉行のこと
一二 寺社奉行のこと
一三 突富のこと
一四 道中奉行のこと
一五 吟味筋のこと
一六 拷問のこと
一七 敵討のこと
一八 密通のこと
一九 離別のこと
二〇 本公事、金公事および仲間事のこと
二一 出入筋のこと
二二 身代限と分散のこと
二三 不離縁の担保のこと
二四 縁切寺のこと
二五 天皇のこと
二六 藩村的封建制度のこと
二七 江戸幕府の権力のこと
二八 宗門人別改帳のこと
二九 久離、勘当および帳外のこと
三〇 諸国人数帳のこと
三一 地方三帳のこと
三二 検地帳のこと
三三 村明細帳と村鑑(帳)のこと
三四 領主の権力のこと
三五 地頭の権力のこと
附録
一 年表
二 徳川氏略系図
三 明細帳と村鑑(雛形)
四 地方三帳(雛形)
前書きなど
序文
わたくしは、雑誌「時の法令」の第二六六号(昭和三三年一月三日号)より第二七九号(同年五月一三日号)まで、一四回にわたって、「古法漫筆─江戸時代」と題する拙文を寄せたが、本書はこれを一書にまとめたものである。もっとも時の法令には、江戸の町奉行以下二五項目を載せたが、今回出版に際しては一〇項目を追加して、三五項目とし、かつ既発表の分についても、増訂を加えた。もっとも論旨を変更した箇所はほとんどない。
本書の書名は、出版書肆の希望で、「江戸時代漫筆─江戸の町奉行その他」としたのであるが、「江戸の町奉行その他」という副題の示すように、著者の専門とする法制史に関する漫筆集である。項目を選ぶにあたっては、教科書類にあまり述べられていない事項に主眼を置いた。ときに考証にわたった所もないではないが、なるたけ史料は挿入せず、肩がこらないで読めるように書いたつもりである。
本書折込の江戸の朱引絵図は、雑誌「江戸会誌」第一冊第四号所載のものを基にしたものである。同誌の解説には、同絵図の朱線と緑線とは入れ違っていると書いてあるが、そうではなく、この絵図のとおりで宜しいのである。この朱引絵図は文政元年に出来たのであるが、この年にそれまでの御府内限り勧化御免の区域を御府内(江戸)と定め、ただ江戸御構の場所については、御定書の規定どおり、品川、板橋、千住、本所、深川、四谷大木戸の内側ということにしたのである。もっとも、本所、深川の中、町奉行所支配場は御構場所に入れられている。すなわち、この絵図で、朱界線の内側が御府内(江戸)、緑界線の内側が江戸御構の地域なのである。江戸の境域をはっきり示した絵図はこれだけであり、その意味で貴重な絵図である。
昭和三四年三月二八日 石井良助
(本書は、1989年11月、明石書店から刊行された。)