目次
監訳者はしがき:知識基盤社会の教育と学習
序文
第1部 学習社会のナレッジ・マネジメント
第1章 学習経済における教育の役割を理解する
第1節 はじめに
第2節 知識の用法
コラム1 アリストテレスの知識の分類
コラム2 ソーシャル・キャピタル
コラム3 知的資本の社会的ストックとして知識を定義し測定することができるか?
コラム4 知識の占める位置について
第3節 知識の生産、普及、活用における経済的視点
コラム5 学習や探索の成果としての知識生産:アダム・スミスの視点
第4節 学習経済と教育の役割に向けて
コラム6 学習経済の中で学習を定義すること
第2章 各セクターにおける知識の生産、普及、活用
第1節 はじめに
第2節 教育セクターにおける知識
第3節 医療セクターにおける知識
第4節 工学セクターにおける知識
第5節 ICT:すべてのセクターのための知的ツール
第6節 知識集約組織:すべてのセクターにとっての生成的概念
第7節 知識のプロセス:各セクターの主要な比較
第3章 教育セクターへの教訓:学習システムの創造
第1節 はじめに
第2節 ナレッジ・マネジメントの認識を育てる
第3節 ナレッジ・マネジメントの中での実践家の役割を広げる
第4節 ナレッジ・マネジメントのネットワークを設立し活用する
第5節 ナレッジ・マネジメントのサポートのためにICTを使う
第6節 よりよい教育の研究開発の支援を目指す研究者と実践家の新たな役割と関係
第7節 ナレッジ・マネジメントの重要性を反映して支援する、実践家のための専門的開発形態の工夫
第8節 知識資本とソーシャル・キャピタルの統合
第9節 ナレッジ・マネジメントをサポートする下部構造のデザイン
第4章 新たな研究テーマ
第1節 はじめに
第2節 第1の領域:知識と学習のマネジメント
第3節 第2の領域:知識や学習の新たな測定に向けて
第4節 第3の領域:教育におけるイノベーションの政策
第5節 第4の領域:教育における研究開発システムに向けた新たな取り組み
第6節 第5の領域:学習科学のための新しい研究テーマに向けて
第2部 知識の創造・普及・活用の事例
第5章 ナレッジ・マネジメントに関する専門家の見解(ジャン=ミッシェル・ソーソワ)
第1節 学習社会におけるナレッジ・マネジメント
第2節 知識経済を理解するための認識枠組みの刷新
第3節 セクターごとにアプローチすることの意義
第6章 知識とイノベーションのシステム(リチャード・R.ネルソン)
第1節 はじめに
第2節 人のノウハウの本質
第3節 テクノロジー進歩の本質
第4節 なぜ成果は均等ではないのか?
第5節 社会的テクノロジーとノウハウの進展
第7章 学習経済:医療システムと教育システムの知識ベースのためのいくつかの示唆(ベンクト=オーシェ・ランドバル)
第1節 はじめに
第2節 学習経済
第3節 学習経済の分析枠組み
第4節 暗黙知の決定的な重要性
第5節 知識創造の2つの異なるモード
第6節 2つの発展モデル:西洋と東洋
第7節 知識生産の新たな背景
第8節 結論
第8章 経済発展における産業政策、能力ブロック、科学の役割:産業政策の制度理論(グンナー・エリアソン)
第1節 はじめに
第2節 スピルオーバー、能力ブロック、経済的選別
第3節 実験的組織と競争選別を通しての成長
第4節 知識の創造と普及
第5節 知識基盤産業における学術界の役割
第6節 経済発展におけるサイエンス・パークの役割
第7節 事例研究
第8節 技術革新と経済発展の架け橋
第9節 結論
第9章 産業のイノベーションと知識の創造と普及:産学連携の省察(ハンス・G.シュエッツ)
第1節 はじめに:大学と「技術移転」
第2節 企業はどのようにイノベーションを行うのか?
第3節 大学はどのように産業界と協同するのか?
第4節 結論
第10章 ヘルスケアの知識パラダイムの変化:アメリカにおける進歩的経験の意義(ジェフリー・C.バウアー)
第1節 はじめに
第2節 知識の意味の発展
第3節 知識の創造における重要な関係と媒介者
第4節 特別な利害関係者とヘルスケアの知識
第5節 イノベーションのその他の重要な決定要因
第6節 結論
第11章 20世紀末のフランスにおける情報、コンピュータ化、医療行為(ジャン・ドゥ・カーバスドゥーエ)
第1節 はじめに
第2節 なぜ診療はもはやコンピュータ化なしではありえないのか?
第3節 なぜ財政機関なのか:健康保険機関はコンピュータ化を必要とするのか?
第4節 コンピュータ化は保健医療システムの組織化に関してフランス社会と医療専門家の期待に応える貢献はできるのか?
第5節 診察室のコンピュータ化は診療をどう変えるのか?
第6節 原理から現実へ
第12章 ヨーロッパにおける高等教育研究(モーリス・コーガン)
第1節 はじめに
第2節 高等教育研究の現状
第3節 なぜ高等教育が異なるのか?
第4節 高等教育に関する政策の効果
第5節 知識のスタイル
第6節 知識の必要条件
第7節 知識の普及と活用に影響を及ぼす条件
第8節 まとめと高等教育研究の政策のためのポイント
第9節 結論
第13章 教育セクターにおける知識の生産と活用:事例と考察(マーティン・カーノイ)
第1節 はじめに
第2節 事例1:投資効果率
第3節 事例2:教育の生産機能
第4節 事例3:「私立学校」対「公立学校」
第14章 専門的知識にみる知識の生産、普及、活用:教師と医師の比較分析(デヴィッド・H.ハーグリーブズ)
第1節 はじめに
第2節 科学と職業知識ベース
第3節 専門的知識ベースのコア
第4節 専門的職業訓練と知識ベース
第5節 研究、知識の生産、専門的知識ベース
第6節 エビデンスに基づいた医療の実践と専門的知識ベース
第7節 エビデンスに基づいた授業と教師の研究者
第8節 科学、芸術、専門家のティンカリング
第9節 専門的知識:創造から制度化へ
第10節 専門的な知識ベースの包括的なモデル
第11節 結論
第15章 知識基盤を特徴づける指標:利用可能な指標と欠落している指標(ドミニク・フォーレイ)
第1節 はじめに
第2節 課題と方法論のレビュー
第3節 知識基盤の記述子・基本パラメータ・指標
第4節 結論
監訳者あとがき:ナレッジ・マネジメントの研究成果と課題
監訳者・訳者紹介
前書きなど
学習社会で働き、成功するために、知識(ナレッジ)のマネジメントは、民間企業でも公的組織でも重要な新しい課題となりつつある。企業や組織にとって、国内あるいはグローバルな規模で知識を創造し、共有し、活用することが次第に重要となってきている。しかし、ナレッジ・マネジメントの特徴や動きを理解し、事業の発展にとって最も適した道を明らかにするためには、微視的・巨視的なレベルで知識経済の分析を早急に行う必要がある。ところが、いろいろな領域や組織で知識を効率的に活用できる方法や学習組織としての組織を評価する方法はほとんど知られていない。
本書は、多様な領域における知識や学習プロセスについての優れた理解を通じ、こうした課題を方向づけようとする野心的な試みである。本書では、工学や情報通信技術、医療や教育の分野(セクター)における知識の創造や普及、活用のプロセスを具体的に分析し比較検討する。次第に相互連携を深める世界の中で、教育の実践や政策を決定するための優れた知識ベースを各国の政府は早急に必要としている。他のセクターと比べると教育セクターは、知識の創造や普及、活用の行われている割合や質、成功の程度が低い。医療や工学のようなセクターとは異なり、教育の領域はなお、技術的組織的な進歩に伴う持続的で明瞭な改善がみられないままなのである。本書は、教育のすべてのレベルにおいてそのナレッジ・マネジメントが強化される必要性を明確に述べている。