目次
日本語版序文(宮本晃司:OECD教育研究革新センターアナリスト)
序文
謝辞
概要
第1章 序論
第1節 政策的風潮
第2節 教育の役割
2.1 教育システムには社会進歩を助長する力がある
2.2 教育の効果は外部を通して増強されることがある
2.3 学習は多様な文脈で行われる
第3節 「学習の社会的成果」プロジェクト
第4節 学習の社会的成果を評価することに対する難題
第2章 実証分析のための枠組み
第1節 はじめに
第2節 教育システムの全体的なパフォーマンスの評価
2.1 教育の因果的効果
2.2 教育の非線形の効果
第3節 機能する教育システムの諸特徴の同定
3.1 教育的介入の因果的効果
3.2 因果的経路の分析
第4節 教育が誰により強く影響するかの同定
第5節 他の考慮すべき事項
5.1 操作変数法と最小二乗法による推定値の比較
5.2 国際比較
5.3 一般均衡効果
第6節 結論
第3章 教育と市民的・社会的関与
第1節 はじめに
第2節 教育と市民的・社会的関与の関係
2.1 教育は市民的・社会的関与に関連するのか?
2.2 教育は市民的・社会的関与に対して効果を持つのか?
第3節 因果的経路
3.1 情報、認知スキル、社会情動的スキルは重要か?
3.2 習慣と態度は重要か?
3.3 収入は重要か?
第4節 家庭とコミュニティの役割
4.1 後々のCSEにとって重要となる非認知的特徴の発達を青少年期のCSE体験が促進する
4.2 教育の累積効果と相対効果
第5節 社会的地位の役割
第6節 結果のまとめ:分かったこと・分からないこと
第4章 教育と健康
第1節 はじめに
第2節 教育と健康との関係
2.1 教育は健康に関係するのか?
2.2 因果的効果について頑健な結果が不足しているのはなぜか?
第3節 因果的経路
3.1 情報や認知スキル、社会的・情動的スキルは重要か?
3.2 習慣や態度は重要か?
3.3 収入と社会的ネットワークは重要か?
第4節 家庭とコミュニティの役割
4.1 家庭とコミュニティの重要な特徴
第5節 社会的地位の役割
第6節 多元的な経路と文脈に同時に対応する介入
第7節 結果のまとめ:分かったこと・分からないこと
第5章 費用効果の高い教育的介入による健康の向上
第1節 はじめに
第2節 経済的評価と政策形成
第3節 肥満に関する教育的介入の費用効果
3.1 研究の背景
3.2 結果
第4節 結論
付録5.A1 疫学モデル
付録5.A2 WHO-CHOICEモデル
第6章 政策メッセージと今後の展望
第1節 はじめに
第2節 政策メッセージ
第3節 研究への示唆
3.1 学習の社会的成果の評価に向けた整合性のある枠組みの構築に向けた努力
3.2 社会的成果の他の領域への対象の拡大
3.3 因果的効果および因果的経路の特定
3.4 重要な文脈を理解する
3.5 他の類型の学習を評価する
3.6 分析力を向上させるミクロデータの活用
第4節 OECDの役割
4.1 部門間の政策対話
4.2 部門間の研究対話
4.3 分析
第5節 結論
監訳者あとがき
表
表2.1 教育政策に基づく操作変数
表3.1 教育と市民的・社会的関与の関係
表4.1 教育と健康の関係
図
図2.1 回帰分断デザイン
図3.1 市民的・社会的関与の各国比較
図3.2 市民的・社会的関与の各国間分散に対する個人の教育の説明率、ヨーロッパ、2002-06年
図3.3 教育と市民的・社会的関与、ヨーロッパ、2002-06年
図3.4 教育と市民的・社会的関与の関係:限界効果の図解例
図3.5a 市民的関与に対する教育の限界効果、ヨーロッパとカナダ、2002-06年
図3.5b 政治的関与に対する教育の限界効果、ヨーロッパとカナダ、2002-06年
図3.5c 対人的信頼と寛容性に対する教育の限界効果、ヨーロッパ、2002-06年
図3.6a 女性であることの、教育と市民的・社会的関与の関係に対する影響、ヨーロッパ、2002-06年
図3.6b 高学歴の父親を持つことの、教育と市民的・社会的関与の関係に対する影響、ヨーロッパ、2002-06年
図3.6c マイノリティであることの、教育と市民的・社会的関与の関係に対する影響、ヨーロッパ、2002-06年
図3.7 市民的・社会的関与に対する教育の効果、2002-06年
図3.8 労働市場効果調整済みの教育の限界効果、2006年
図4.1 健康状態の自己評価、OECD加盟国、2007年
図4.2 肥満率、OECD加盟国、2007年
図4.3 メンタルヘルス疾患、OECD加盟国、2003年
図4.4 アルコール摂取量、OECD加盟国、2003年
図4.5 寿命と高等教育修了、1998-2000年
図4.6 教育と健康測度との関連、アメリカとイギリス、1999-2000年
図4.7 教育と健康との関係:限界効果の図解例
図4.8 因果的経路:個人的特性を形成する文脈と学習
図4.9 認知スキルによって説明される、教育と健康との関係
図4.10 非認知的スキルによって説明される、教育と健康の関係
図5.1 教育的介入別にみた増分費用効果率(ICER)、ヨーロッパ、2005年
図5.2 教育的介入別にみた障害調整生存年(DALY)と健康支出への効果・介入費用、2005年
図5.3 教育的介入別にみた年齢集団別の費用、2005年
図5.4 教育的介入別にみた10-100年の増分費用効果率(ICER)、2005年
図5.5 増分費用効果率(ICER):教育的介入と非教育的介入の比較
Box
Box4.1 非認知的スキルと健康
Box5.1 教育的介入の類型
Box5.2 方法論:研究のデザイン
Box5.3 費用効果を評価するための時間的枠組み
前書きなど
今日のグローバルな政策的風潮では、健康や社会的関与、政治的関心、犯罪といった非経済的側面をよりよく理解することが重要であると強調されている。
教育は進歩の指標を形成するうえで重要な役割を果たす。しかし、私たちは異なる教育的介入が社会的成果に対して持つ因果的効果、因果的経路、文脈の役割、相対的な影響についてはほとんど知らない。
この報告書は、既存のエビデンスや、オリジナルなデータ分析や、政策議論を総合することによって学習の社会的成果を評価するという困難な課題に取り組んでいる。この報告書が明らかにするのは、教育が、認知スキル、社会的・情動的スキルをはぐくむとともに、健康な生活スタイル、参加の実践や規範を促進することによって、市民的・社会的関与のみならず健康をも増進することができることである。そうした促進のための取り組みは、家庭とコミュニティの環境が教育機関で行われる取り組みと整合性を持つ場合に最もうまくいくであろう。そのためには、教育を行う諸部門や教育段階の違いを超えて政策的一貫性を保証することが求められる。この報告書は、教育がコンピテンシーを高めることによって健康と社会的結束を向上させることに大きな役割を果たすことを裏付けるものであり、そして人々のウェルビイングと教育の関係について有益な視点と情報を提供するものである。