目次
巻頭言 ご冥福をお祈りしつつ(大津和子)
研究論文
[実践研究]小学校英語活動の「文化理解」に関する指導――『英語ノート』に見る問題点を克服するための提言(加賀田哲也)
[実践研究]「複文化の統合」を視点にした外国人児童への実践の試み――中国人児童に対する歴史学習の場合(南浦涼介)
葛藤のケアからみる国際理解教育の課題(横田和子)
特集論文 グローバル時代のシティズンシップと国際理解教育
[特定課題研究プロジェクト]
特定課題研究プロジェクトについて(嶺井明子)
多元的シティズンシップによる国際理解教育概念の再構築――ユネスコと日本を事例として(嶺井明子)
多元性・多層性から読み解くグローバル・シティズンシップ――「グローバルなものの見方」を基軸として(小関一也)
国を越えるリージョナル・シティズンシップを育成する教育――ヨーロッパの事例から(中山あおい)
多文化教育から問いなおすナショナル・シティズンシップ――アメリカの歴史カリキュラム改革を通して(桐谷正信)
「グローバル時代のシティズンシップと国際理解教育」プロジェクト文献リスト(杉田かおり)
[自由投稿]
市民性教育における人権と国際理解教育の課題――「普遍的人権を学ぶこと」再考(野崎志帆)
シティズンシップ教育における包摂的ナショナル・アイデンティティの検討(北山夕華)
特別寄稿
21世紀の学校における国際理解教育――日本国際理解教育学会20周年記念講演(佐藤学)
報告
○博学連携教員研修
国際理解教育における博物館活用の可能性(6)――第6回国立民族学博物館を活用したワークショップ型教員研修の試み(五月女賢司)
○日本国際理解教育学会第20回大会公開シンポジウム
日本国際理解教育学会の到達点と展望(藤原孝章)
新刊紹介
(特活)開発教育協会内ESD開発教育カリキュラム研究会編著『開発教育で実践するESDカリキュラム―地域を掘り下げ、世界とつながる学びのデザイン―』(石川一喜)
渡部淳+獲得型教育研究会編『学びを変えるドラマの手法』(渡部淳)
研究代表・二谷貞夫 梅野正信編集責任『日韓で考える歴史教育―教科書比較とともに―』(二谷貞夫)
小島弘道監修 唐木清志・西村公孝・藤原孝章著『社会参画と社会科教育の創造―講座現代学校教育の高度化28―』(西村公孝)
Joshua A. Fishman and Ofelia Garcia (eds.) Handbook of Language and Ethnic Identity (Disciplinary and Regional Perspectives) Vol.1/Second edition(吉村雅仁)
細川英雄・西山教行編『複言語・複文化主義とは何か―ヨーロッパの理念・状況から日本における受容・文脈化へ―』(吉村雅仁)
Noriko Ikeno (eds.) Citizenship Education in Japan(吉村功太郎)
小林由利子・中島裕昭・高山昇・吉田真理子・山本直樹・高尾隆・仙石桂子著『ドラマ教育入門―創造的なグループ活動を通して「生きる力」を育む教育方法―』(高尾隆)
学会規約
編集規定/投稿規定
審査の手順/執筆要項
論文募集
編集後記
前書きなど
巻頭言 ご冥福をお祈りしつつ(学会長・大津和子)
東日本大震災で亡くなれた方々のご冥福を謹んでお祈りするとともに、被災されたみなさまに心からお見舞い申し上げます。
3月11日以降、日本社会は大きく変わり、同時に、福島原発の事故により、日本は世界に対して深刻な影響を与えつつあります。「こんなことが起こっていいのだろうか」というショックとともに、全壊した実家の下敷きになった両親が、3時間後に救出されて命を拾った16年前の阪神・淡路大震災の記憶が蘇りました。
大学の新学期の授業は、黙祷で始まりました。「親戚が亡くなった」「友人を亡くした」「ふるさとが流されてしまった」といった学生の話を受講生全員で共有したのち、(高校1年生で被災した)息子が神戸市消防士として宮城県で遺体捜索活動に従事して送ってきたメールを紹介し、春休みにボランティアとして現地で活動してきた学生の報告もまじえて、「国際理解教育論」の授業にとって、「3.11」がどのような意味をもつのかを議論しました。
校長を務めている北海道教育大学附属札幌中学校では、卒業式、終業式、入学式など、おりあるたびに、各地で見られた心温まる光景を伝えるツイッターも紹介しながら、日本という社会の一員として、私たちに何ができるのかを、生徒と同僚教員に語りかけてきました。生徒会が「3.11」直後にいち早く募金活動をしたものの、目の前の日常に追われて、いつのまにか他人事になってしまっていることに生徒たちも気付き、今後どんなふうに継続的な支援ができるのかを、考え始めています。
全国各地でも「3.11」をめぐってさまざまな議論がなされ、新たな教育の取り組みが行われつつあります。この「新たな」取り組みは、本来ないほうが望ましいことは言うまでもありません。が、「3.11」が起こってしまった以上、大震災から何を学ぶのか、HIROSHIMA、NAGASAKIに次ぐFUKUSHIMAをどうとらえるのか、世界のエネルギー問題をこれからどう考えていくのか、特に私たち国際理解教育に携わるものにとって、この課題から目を背けることはできません。
大震災以来、全国から多数の消防士・自衛隊員・警察官など多くの方々が被災地に派遣され、懸命の復興作業が続けられています。ボランティア活動も次第に多様な形で展開されるようになり、在住外国人の支援活動も報道されています。また、アメリカ合衆国、韓国、中国などから救援隊が派遣され、アフガニスタン、クロアチア、ブラジル、ナミビアなど世界中の国々から支援の申し出がありました。こうした国内外からの支援活動に敬意を表し、深く感謝申し上げます。
最後に、学会員のみなさまへ。被災された地域では大変困難な生活を余儀なくされ、大きな悲しみの中で、教育活動に励んでおられることと思います。今回たまたま被災を免れた私たちにできることがありましたら、ぜひご連絡いただきますよう。みなさまへの応援ができることを、全国の学会員とともに強く願っています。
(2011年4月17日記)