目次
【19世紀中頃から1945年までの世界、ヨーロッパ、フランス】
第1部 19世紀中頃から1939年までの工業の時代とその文明
第1章 工業の時代(1850~1939年)
はじめに 写真――この新しい産業は、どのようにして誕生したか
1 工業化――長く連続したプロセス
2 大企業の黄金時代
3 成長と恐慌
まとめ
第2章 工業の時代の社会
はじめに 19世紀から20世紀への転換期における社会階級と不平等
1 変化しつつある工業化社会
2 都市の社会
3 社会の再検討
まとめ
第3章 ヨーロッパ帝国主義の最盛期
はじめに なぜ、植民地化するのか
1 植民地化の時代
2 貿易の時代
3 異議申し立ての時代
まとめ
第4章 新しい信仰と文化革命
はじめに 大衆の時代の価値観とは
1 伝統と近代性の境をさまよう教会
2 世界を別の角度から考える
3 新しいモダン・アートの言語
4 大衆の文化とレジャー
まとめ
第2部 19世紀中頃から1914年までのフランス
第5章 守旧性と近代性の境をさまようフランス
はじめに どのような変化が、農村部に影響をおよぼしたか
1 マルサス主義のフランス
2 近代化したフランス
3 対照的な顔をもつフランス
まとめ
第6章 共和政の勝利に向けて
はじめに フランスにふさわしい制度は何か
1 第二帝政――民主主義の外観
2 不確かな共和政(1870~1880年)
3 共和政の勝利
まとめ
第7章 共和国になったフランス
はじめに どのようにしてフランス人は、共和主義者になったか
1 フランスの「共和主義化」
2 共和政の社会的基盤
3 異議をとなえられた共和政
まとめ
第3部 戦争、民主主義、全体主義(1914~1945年)
第8章 第一次世界大戦
はじめに 誰もが受けいれた戦争
1 世界規模になった紛争
2 社会全体の参加
3 かろうじて三国協商が得た勝利
まとめ
第9章 戦争は新しい世界のるつぼか
はじめに ヨーロッパの確信は終わったのか
1 死の悲しみに沈むヨーロッパ社会
2 戦勝国による和平から「ジュネーヴ精神」へ
3 1917年のロシア革命
4 政治的暴力と文化的異議申し立て
まとめ
第10章 1930年代のフランス――危機に瀕した民主主義
はじめに 第三共和政――頓挫した議会制度?
1 経済恐慌に陥ったフランス
2 崩壊寸前のフランス?
3 人民戦線――希望と失望
まとめ
第11章 ファシズム、ナショナリズム的全体主義
はじめに 国民共同体のなかに埋没した個人
1 ファシズムとナチズムの定着
2 全体主義的ファシズム体制の組織化
3 恐怖による支配
4 ヨーロッパをおびやかすファシズム
まとめ
第12章 スターリン主義、社会主義的全体主義
はじめに スターリン独裁は、農村部でどのように押しつけられたか
1 ソヴィエト国家の建設
2 経済の国有化
3 全体主義社会に向けて
まとめ
第13章 第二次世界大戦の諸段階
第14章 ナチスの秩序――搾取と絶滅
はじめに 新秩序とは何か
1 ドイツ帝国に服従させられたヨーロッパ
2 ナチスの残虐行為
3 協力か、抵抗か
まとめ
第15章 暗黒時代のフランス(1940~1944年)
はじめに 敗戦を受けいれるのか
1 ヴィシー体制
2 個別の活動家たちから一つにまとまったレジスタンスへ
3 再建されたフランス
まとめ
人物略伝
用語解説
【1945年から現在までの世界、ヨーロッパ、フランス】
第1部 1945年から現在までの世界
第1章 工業社会から情報社会へ
はじめに 1945年以降の経済成長
1 経済成長の仕組み
2 新自由主義の勝利に向かうのか
3 加速する社会変化
4 大型スーパーマーケットからインターネットへ
第2章 1970年代までの東西対決
はじめに 冷戦はいかに生じたか
1 二極化する世界
2 敵対し競い合う二つのモデル
3 1962年までの東西対立
4 デタント(1962~1975年)
第3章 非植民地化と第三世界の登場
はじめに 第二次世界大戦が植民地に与えた影響
1 植民地の絆の切断
2 アフリカに広がる非植民地化
3 新生国家の政治的挑戦
4 第三世界――いかなる開発が可能か
第4章 二極化の見直し(1973~1991年)
はじめに 第4次中東戦争で明らかになった国際関係の新要素とは何か
1 1970年代の新勢力地図
2 新冷戦
3 冷戦の終結
まとめ
第5章 1991年以降の世界秩序
はじめに 世界の新秩序においていかに行動するか
1 世界の混乱
2 世界は一極化したのか、それとも多極化したのか
3 国際関係の再定義
まとめ
第2部 1945年から現在までのヨーロッパ
第6章 ヨーロッパの建設(1945~1991年)
はじめに 欧州連合の創設者たち
1 ヨーロッパ組織化の始まり(1945~1954年)
2 ヨーロッパ統合計画の再開(1955~1974年)
3 ヨーロッパのためらい(1974~1991年)
まとめ
第7章 人民民主主義諸国(1945~1991年)
はじめに 共産党はいかにして東ヨーロッパで権力を握ったか
1 東側ブロックの形成
2 人民民主主義国家の仕組み
3 異議申し立てから崩壊へ
まとめ
第8章 1989年以降のヨーロッパの課題
はじめに 東への拡大――ヨーロッパはどうなり、何を得ようとしているのか
1 拡大による挑戦
2 ヨーロッパの防衛と安全保障
3 欧州連合の対外政策
まとめ
第3部 1945年から現在までのフランス
第9章 第二次世界大戦――「過ぎ去らない過去」
はじめに 何を記念すべきか
1 喪の悲しみの向こうで、もろい一体感
2 戦争を覆い隠す(1950年代から60年代)
3 対立する記憶(1970年代以降)
まとめ
第10章 1945年以降のフランス人
はじめに フランス人とは誰か――戦後……そして今日
1 1945年以降のフランス経済
2 フランス社会の変化
3 現代性に移行するフランス人
4 フランス人の文化活動
まとめ
第11章 第四共和政――愛されなかった体制
はじめに 第四共和政の無力をいかに説明するか
1 立ち直るフランス――三党連立(1944~1947年)
2 つかの間の安定(1947~1954年)
3 共和政はいかにして死んだか
まとめ
第12章 第五共和政下の政治
はじめに なぜド・ゴールの共和国といわれるのか
1 ド・ゴールの共和国(1958~1969年)
2 相続と移行(1969~1981年)
3 政権交代と保革共存(1981~1995年)
4 危機にある体制
まとめ
第13章 世界のなかのフランス
はじめに フランスの力の基礎はどのように変化したか
1 植民地大国の後退(1945~1958年)
2 「フランスについてのある種の考え方」(1958~1969年)
3 1969年以降のフランスの対外政策
まとめ
バカロレア対策の方法
人物略伝
用語解説
前書きなど
監訳者はしがき
本書は、フランスの高等学校(リセ)で用いられている歴史教科書の2学年分を合冊にしたものである。その内容の範囲は、最終学年の「現代編」(第二次世界大戦後)とその前の学年の「近代編」(19世紀中頃から第二次世界大戦まで)である。日本の高等学校にあわせると、高校3年生と2年生ということになる。日本式にいって近現代史がその範囲なのであるが、高2の近代編という表現は日本の場合にあわせたもので、フランスでは伝統的にこの時代が現代で、高3の現代編は日本でいう戦後史にあたり、フランス風にいえば同時代編とでもいった表現となる。
(…中略…)
フランスの歴史教科書の60年代、80年代、そして現代を比較してみると、社会や文化に関する叙述の比重が大きくなってきたこと、またより一般的にいって対象を扱う視点が多様化してきた印象は強い。それに応じて、収録されている資料の類も多様性が拡大してきている。本書をご覧になると、引用されている資料の多様性についてなど、よく了解されるのではないか。そして、生徒に歴史過程について知識を与えるという点は、教科書であるから当然含まれているのであるが、同時に、歴史についての解釈がいかになされていたか、解釈が複数であったこともあるのであり、それが何に由来していたのかを考えさせるといった、歴史的思考をうながすような内容も含まれている点が注目される。一般的に表現すると、資料文献にせよ数値データにせよ、ある材料を提示して生徒自身になるべく考えさせる姿勢が、現在に近づくほどよりいっそうはっきりしてきているように見える。
これらの諸点からすると、おそらく日本の教科書よりフランスの教科書のほうが、教育姿勢というか方法的立場という点で、格段に優れていることを認めないわけにはいかない。しかし記述内容については、すでにふれたようにフランスでは、どうしても自国の歴史が中心で、そこに関わってくる諸外国の、あるいは諸地域世界の歴史が登場する、という扱いとなる。およそ、万遍なく世界各地の歴史的特性について認識させる、という観点はない。尋ねればおそらく、自国であるフランスの歴史について認識をうながすとともに、歴史的な思考方法を身につけさせることが狙いだ、という答えが返ってくるのではないか。そもそも、万遍なく各地の歴史を教えることなど不可能ではないのか。歴史的な認識と思考の方法を理解し身につけることができれば、必要に応じてその技法を活用することも可能になるはずだ、と。
(…後略…)