目次
特集1 子どもからみた里親制度
子どもの権利からみた里親制度(津崎哲雄)
国連発行の「子どもの代替ケアのためのガイドライン」(渡邊守)
被措置児童の虐待防止と権利擁護―――『里親家庭で生活する子どもの権利ノート』(藤井美江)
里親家庭・子ども担当ソーシャルワーカーの仕事
1.児童福祉司としての里親委託の実践を振り返る(設楽健士)
2.これからの里親担当ソーシャルワーカー―――里親家庭の実子、子ども家庭支援ワーカーという立場から(中島理子)
座談会 里親家庭で育った子どもの声を聞く(司会:木ノ内博道)
IFCO世界大会での子どもの声(渡邊守)
特集2 養子縁組制度
子どもの福祉の養子縁組とは―――養子縁組制度の現状と課題(中川良延)
児童福祉法改正と養子縁組制度の動向(庄司順一)
実務家の視点による養子縁組制度の実際
1.愛知県の児童相談所における里親委託(養子縁組)の取り組み(萬屋育子)
2.児童相談所における養子縁組里親への支援(愛沢隆一)
3.養子縁組希望の里親に求められること(山上有紀)
養子縁組里親のマッチングにおける家庭調査(米沢普子)
養子の発達段階別課題(森和子)
養親子の支援における乳児院の役割(長田淳子)
新生児・乳児・遺棄された子どもの養子縁組(宮島清)
[追補]各地域の里親会の紹介
【エッセイ】
里親として生きる(高橋美恵子)
死刑判決を受けた青年(山中ゆりか)
【里親制度への期待と里親制度の課題】
児童相談所との良好な協働に向けた話し合いの場を(増沢高)
里親制度に望む(才村純)
【ブックレビュー】
こうのとりのゆりかご検証会議編著『「こうのとりのゆりかご」が問いかけるもの』(鈴木力)
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所編『日本子ども資料年鑑2010』(永野咲)
海外文献紹介
トピックス
編集後記
前書きなど
Vol.5 特集の企画にあたって(編集委員長:庄司順一)
本巻は2つの特集から構成されています。
特集1は、「子どもからみた里親制度」で、内容的には「子どもの権利」と「子どもの声」に分けられます。里親制度は、わが国では「里親」としておとなの側から考えられやすいように思われます。たとえば、全国里親会はフォスター・ペアレントの協会ですが、外国ではフォスターケア(里親養育)の協会となっているところが多いのです。最近関心が高まっている里親支援機関も「里親」支援機関ではなく、「里親養育」を支援する機関でしょう。もちろん、養育がうまくいくように里親を支援することは大事ですが。
何年前でしょうか、IFCO(国際フォスターケア機構)のアジア地域会議がフィリピンで開催されたとき、主催者のあいさつの中で、「子どもたちの声をきくことが、里親制度をよりよいものにしていく」ということばがありました。日本でも委託された子どもたちの声をきく機会は増えてきました。子どもの声をしっかり受け止めることが、子どもの権利擁護にもつながるといえるでしょう。本巻には里親家庭で過ごした経験のある若者の座談会が掲載されていますが、本誌の新しい試みです。
特集2は「養子縁組制度」です。2008(平成20)年の改正児童福祉法にもとづく里親制度改正の中での論点の一つです。とくに養育里親と養子縁組を希望する里親の区分についてはいろいろな意見があります。第4巻で、特集2として「児童福祉法改正」をとりあげ、その中でも「養子縁組里親についての改正点と今後の課題」(米沢普子)として論じたものではありますが、今回は、養子縁組制度そのものについて解説するとともに、実務的な面からも課題の整理や提言をしていただきました。養子縁組制度は里親制度と同じではありません。しかし、養子縁組制度もたいへん重要なものであり、しかも両者には密接な関係があります。掲載された論文は充実した内容ですので、ぜひお読みください。