目次
はじめに
プロローグ 成年後見制度の理念
第1章 成年後見制度とは何か
1-1 判断能力が不十分な人を支援する制度
1-2 成年後見制度はなぜ必要なのか
1-3 成年後見制度の種類
1-4 成年後見制度活用のメリット・デメリット
1-5 成年後見人は何をする人?
1-6 成年後見人にはどんな人がなる?
1-7 成年後見監督人とは?
○コラム「後見人いろいろ」
第2章 法定後見制度とは
2-1 法定後見制度とは
2-2 成年後見人等の権限
2-3 成年後見人等の事務
2-4 成年後見人等の選任及び終了事由、成年後見人の報酬等
2-5 成年後見人等の監督システム
2-6 成年後見等の申立手続
2-7 申立後の流れ
○コラム「後見・保佐・補助類型の仕事と報酬バランス」
第3章 任意後見制度とは
3-1 任意後見制度は契約
3-2 民法上の他の契約もうまく利用
3-3 任意後見人の職務と報酬
3-4 任意後見契約の結び方と費用
3-5 任意後見監督人の選任と費用
3-6 任意後見監督人の職務と報酬
3-7 任意後見契約の変更と解除
3-8 任意後見契約の実際例
○コラム「後見人の変わった仕事」
第4章 成年後見制度と関わる制度
4-1 見守り契約
4-2 財産管理契約
4-3 日常生活自立支援事業
4-4 死後の事務委任契約
4-5 遺言・相続
4-6 信託
4-7 リバースモーゲージ制度
4-8 介護保険制度
4-9 障害者自立支援法
4-10 成年後見制度利用支援事業
○コラム「相続争いはすさまじい」
第5章 成年後見実践レポート
5-1 社会福祉士としての取り組み
5-2 司法書士としての取り組み
5-3 弁護士としての取り組み
5-4 行政書士としての取り組み
5-5 NPO法人としての取り組み
5-6 福祉施設としての取り組み
○コラム「後見業務は一人でできない・抱え込まない」
第6章 成年後見制度と密接に関わる職種
6-1 地域包括支援センターでの取り組み
6-2 知的障害者親の会としての取り組み
6-3 医療ソーシャルワーカーとしての取り組み
6-4 精神障害者にとっての成年後見制度
○コラム「福祉の人材不足とサービスの質について」
第7章 後見業務の問題点と後見人等の役割
7-1 成年後見人の職務範囲の問題
7-2 後見人報酬の問題
7-3 本人死亡後の事務の問題
7-4 成年後見申立及び実務に関わる問題
7-5 成年後見人不足と質の問題
7-6 任意後見制度に関する問題
7-7 本人の代弁者・保護者としての役割
7-8 情報提供・調整者としての役割
○コラム「知的障害者の親亡き後問題について」
第8章 これから成年後見制度と関わる方へ
8-1 これから成年後見制度を利用する方へ
8-2 成年後見制度を仕事にしたい方へ
8-3 市民後見人として活動したい方へ
○コラム「成年後見はビジネスになるか?」
第9章 成年後見に必要な書式
9-1 法定後見申立書式
9-2 任意後見契約書式
9-3 困ったときの相談機関
おわりに
前書きなど
はじめに
■本書の目的
成年後見制度が誕生して、平成22年度で10年が経ちます。この10年間で、制度の利用者は急増しており、制度開始初年度である平成12年度の申立件数が9000件程度であったのが、平成18年4月~平成19年3月には30000件を超え、平成19年4月~平成20年3月は約25000件と、初年度に比べると約3倍近い増加となっています。
そろそろ、この成年後見制度も一般に周知されてきたように思います。
しかし、「なんとなく『成年後見制度』という言葉を聞いたことはあるけれどよくわからない」「身内に高齢者や障害者がいて調べたけど難しくてわからない」などの声が、まだまだ多いように思います。
たしかに、一般の方にとって「後見人」「保佐人」などの法律用語はなじみがないでしょうし、公証役場や家庭裁判所といった、制度を利用する際に活用する機関も、ふだん関わりがないだけに敷居が高く、近寄りがたい印象を持つかもしれません。
しかし、これから本格的な超高齢社会を迎えるわが国の高齢者や障害者等の人権を擁護するために、この制度は不可欠であると私は考えています。
成年後見制度の理念である、ノーマライゼーション、自己決定の尊重、残存能力の活用、そして、それらと本人保護との調和を実現していくためにこの制度を利用し、いい成年後見人等を選任することで自分や自分の大切な人の、その人らしい生き方を尊重することができると思うのです。
本書は、できるだけ難解な法律用語は使用せず、一般の方や福祉に携わる多くの方々に、成年後見制度を少しでも周知させ、高齢者や障害者が、地域で当たり前に生活することのできる社会に近づけるように、と願う人たちの想いが結集して誕生しました。
概説的な成年後見制度の説明だけでなく、高齢者福祉、障害者福祉等の現場の声、制度開始10年を経た成年後見制度の抱える問題点など、いろいろな立場の方の視点を広く集めることで、より幅広い読者の方の参考にしていただけると自負しています。
また現在、成年後見人として活動している方がどのように業務を行っているのか、どのような専門家がどのような役割の後見人活動を行っているか、また、実際の相談における各現場がどのような問題点や葛藤を抱えているかなど、類書にはない生の声を多く盛り込んでいます。
本書を通じて高齢者や障害を持つ方々が個性を尊重され、充実した生活を送ることのできるお手伝いができればこれに勝る喜びはありません。
2010年7月 馬場敏彰