目次
まえがき——この本の出版意図(日本福祉文化学会会長:河東田博)
第1章 福祉文化とは何か(河東田博)
第1節 「創造的福祉文化」概念の構築を目指して
第2節 福祉文化から遠ざけられて生きてきた人たち——非人間的非福祉文化社会、排他的/差別的未成熟福祉文化社会の実態
1 「非人間的非福祉文化社会」で生きてきた人たち
2 「排他的未成熟福祉文化社会」で生きている人たち
3 「差別的未成熟福祉文化社会」で生きている人たち
第3節 「創造的福祉文化社会」を目指して生きる人たち
1 多元的共生福祉文化社会の中で生きる(1)
2 多元的共生福祉文化社会の中で生きる(2)
第4節 「創造的福祉文化社会」を築くための条件
第2章 福祉文化活動の魅力
第1節 福祉文化活動の役割と広がり
◆新しい社会福祉と福祉文化(永山誠)
はじめに
1 2つの系譜の福祉文化論にとっての1989年
2 行政側にとっての「福祉文化」論の検討
3 福祉文化論の21世紀における課題
◆福祉文化活動の役割:余暇と遊びを通して(薗田碩哉)
1 生きることを楽しむ:余暇と遊びの存在理由
2 高齢化の進展と余暇と遊びの拡大
3 余暇と遊びのノーマライゼーション
4 余暇と遊びから福祉を見直す
◆女性と政治と福祉文化——アメリカにおける「女性と政治」研究から(相内眞子)
1 はじめに
2 アメリカにおける「女性と政治」——フェミニン・ミスティークの衝撃
3 アメリカにおける「女性と政治」——女性の政治的過少代表
4 女性が作る違い——政策決定過程におけるジェンダー・ギャップ
5 女性と政治と福祉文化
◆東アジアと福祉文化(沈潔)
1 東アジア福祉文化の源流
2 東アジア福祉文化の共通と相違
3 東アジア福祉文化の相互に学べる共通基盤の創設
第2節 福祉文化活動の楽しさ
◆音楽を通じての福祉のまちづくり(長渕晃二)
1 はじめに
2 音楽と福祉のまちづくりの実践
3 福祉文化推進の視点から
4 今後の課題と可能性
◆ヴォイストレーナー活動を通じて(松原徹)
1 ヴォイストレーニングと私
2 ヴォイストレーニングと福祉的効果
3 ヴォイストレーニングの福祉的効果・実践例
4 これからのヴォイストレーニング
◆福祉レクリエーション活動を通して(小池和幸)
はじめに
1 わが国のレクリエーション運動と福祉レクリエーションの黎明
2 福祉レクリエーションという言葉
3 福祉レクリエーション活動とは
4 福祉レクリエーション活動の効果と楽しさ
5 福祉レクリエーション活動の実際例
6 福祉レクリエーション活動を支える人材養成と今後
第3節 現場の力を発見できる面白さ
◆地域福祉と福祉文化の融合(磯部幸子)
1 地域福祉と福祉文化
2 地域福祉推進の背景
3 地域住民の精神を支える地域文化に着目を
4 むかし、地域福祉と福祉文化の融合した活動があった
◆デイサービスセンターでの講座活動に見る福祉文化(マーレー寛子)
1 デイサービスセンターの役割とは
2 ユニットレク
3 京都式えらべるデイ
4 むべの里「講座活動」
◆地域共生活動を通して(志賀俊紀)
1 ほかにわ共和国
2 共創興育は現場の力のなす技
3 地域共生とほかにわ共和国と神道
第4節 経験を共有できる喜び
◆知的障害当事者の参加・参画の取り組みを通して(遠藤美貴)
1 「わかりやすい権利条約作り」
2 当事者と経験を共有する場
3 見学者の役割
◆住民参加型地域づくりを通して(増子正)
1 はじめに
2 住民参加の必要性
3 温故知新の地域づくり
◆新潟福祉文化を考える会の活動を通して(渡邊豊・関矢秀幸)
第5節 創造性をかきたてる高揚感
◆「誰でも自由にどこへでも」ユニバーサル・ツーリズムという考え方(西野佳名子)
1 旅とは
2 新しい旅の概念
3 ユニバーサル・ツーリズムという考え方
◆障害者・認知症高齢者のキャンプ活動を通して(石田易司)
1 キャンプとは
2 最初の認知症高齢者キャンプ
3 キャンピズの活動
4 NICE藤井寺
5 介護を超えて——キャンプという文化と福祉
◆病院ボランティア活動を通して(小坂享子)
1 はじめに——専門職化と福祉文化
2 病院ボランティア活動とは
3 病院ボランティアの今日的意義
4 患者参加型医療
5 患者参加型医療と病院ボランティア
6 ボランティアと福祉文化
◆地域福祉文化活動のプログラム・プランニングを通して(加登田恵子)
はじめに
1 ひとりの思いから福祉文化活動を創る——自己実現と連帯
2 ソーシャル・インクルージョンを促すツールの開発と普及
第3章 福祉文化の魅力を伝えていくために(河東田博)
第1節 「福祉的アミューズメント」と「創造的福祉文化」
1 「福祉的アミューズメント」とは
2 福祉的アミューズメントに関する調査の結果
3 出会いの場創り
4 アミューズメントへのアクセス手段に関する理論的根拠と機能の検討
5 福祉的アミューズメント社会づくりの枠組み
第2節 当事者参画と創造的福祉文化
1 組織運営・政策立案への当事者参画のあり方を検証するために
2 スウェーデン・グルンデン協会における組織運営への当事者参画
3 東京都国立市第三次地域保健福祉計画策定委員会における当事者参画
4 おわりに
第3節 「創造的福祉文化」の構築と発展のために
1 「創造的福祉文化」の基本概念
2 「創造的福祉文化」概念の基本的視点
3 「創造的福祉文化」概念の目標
4 「創造的福祉文化」概念の要素・要件・内容
5 「創造的福祉文化社会」を築くための条件
おわりに
前書きなど
まえがき——この本の出版意図
今なお「福祉文化」概念がよくわからないため、何を拠り所に学会活動を行ったらよいのかがわからないという声が多くの会員から聞こえてくる。これは、日本福祉文化学会が、「福祉文化活動の魅力」を会員各位に伝え、会員として一緒に歩んでいってもらおうとするための「術」(研究・実践の融合とその方法)を持ち合わせていないからだと考えられる。そこで、今般、「新・福祉文化シリーズ」(全5巻)の編纂を通して『福祉文化とは何か』を見出していくための作業に取り組み、「福祉文化」概念を確立することは困難でも「福祉文化活動」に対する会員各位の思いを通して「福祉文化とは何か」を整理していこうと考えた。
日本福祉文化学会は、他の学会とは「何かが違う」と感じることのできるユニークな学会である。私たちはこの「何かが違う」という魅力に取りつかれて今日まで来た。しかし、残念ながら、私たちは、自信をもってこの「違う何か」を語れる(言語化できる)までには至っていない。そこで、シリーズ第1巻では、理事各位にじっくり「福祉文化活動の魅力」を語っていただき、他の学会とは「違う何か」を見い出す努力をしていこうと考えた。時代の流れや会員のニーズに適った新しい動きや体制作りを模索していく努力やそのプロセスの中で、「福祉文化活動」に関する「魅力ある何か」を引き出し語っていただこうという趣向である。日本福祉文化学会の中心メンバーが、どんな考え方に基づき、どんな魅力ある実践を行っているのかを、限られた字数を通してではあるが伝えていきたいと思う。会員を初めとする読者各位が本書を手に取って読み、考え、こんな魅力のある意義ある活動ならぜひ一緒に考えやってみたいと思っていただけたら幸いである。
(…後略…)