目次
監訳者まえがき
日本に関する基本統計
要旨
評価と勧告
第1章 世界経済危機の克服:新しい成長モデルの必要性
第1節 戦後最長の景気拡大の後には、戦後最も深い景気後退が続く
1.1 輸出主導の拡大は2007年末に終わった
第2節 危機への政策対応
第3節 短期経済見通し
3.1 中期の財政金融政策
第4節 中期見通し:構造改革の必要性
4.1 労働市場の改革
4.2 非製造業部門の改革
第5節 持続的な成長を促進するための政策
付録1-A1 連立政権樹立に当たっての政策合意
第2章 金融の安定:危機の克服と銀行部門の効率性の改善
第1節 世界金融危機が日本の銀行部門に対して比較的小さな直接の影響しか与えなかったのはなぜか
1.1 銀行はサブプライム関連の金融商品への関与の度合いが限られていた
1.2 日本は住宅バブルを回避した
1.3 バーゼル I からバーゼル II への規制の変更の影響
1.4 証券化商品の未成熟な市場
1.5 短期の利益を上げることに対する経営陣のより少ないインセンティブ
第2節 強烈な二次的ショックが金融部門を襲った
第3節 金融部門への危機の影響を緩和するための日本の政策
3.1 日本銀行の施策
3.2 金融庁の施策
3.3 その他の行動
3.4 緊急時対応に起因する潜在的なコスト
第4節 危機対応を超えて:規制の基本構造を改善するための改革
4.1 証券化商品
4.2 信用格付け機関
4.3 自己資本規制とプロシクリカリティー
4.4 銀行の株式保有
第5節 銀行システムにおける低収益性の改善
第6節 金融部門の効率を高めるための政策
6.1 資本市場の質の向上
6.2 金融商品の範囲と質の向上
第7節 結論
第3章 経済金融危機への財政政策対応と財政の持続可能性の達成
第1節 経済危機への財政の対応
1.1 財政刺激策
1.2 財政状況の見通し
第2節 財政の持続性を達成するための政策
2.1 経済財政改革の基本方針2009
2.2 持続可能な社会保障構築に向けた中期プログラム
2.3 年金制度の改革
第3節 財政の持続可能性達成のための政策
3.1 政府の2009年6月の「機械的試算」
3.2 支出削減の見通し
3.3 追加的収入の必要性:規模、タイミング、手段
第4節 結論
第4章 日本の医療改革:コスト抑制と質の改善と公平の確保
第1節 日本の医療制度の直面する主要な問題
第2節 日本の医療制度の概観
2.1 医療保険の保険者とその財政
2.2 医療の供給
2.3 長期の介護
第3節 医療費の増加を抑制し、その資金調達を効率化する
3.1 医療費の伸びを抑える政策
3.2 より多くの収入を上げる
第4節 医療サービスの質を高める
4.1 最良の実施例を推進するための「証拠に基づいた治療」
4.2 認定基準
4.3 医薬品の導入遅れ(ドラッグ・ラグ)と医療機器の導入遅れを減少させる
4.4 混合診療の制約の緩和
第5節 医療サービスの提供の不均衡への対処
第6節 相対的貧困上昇の背景のもとでの普遍的カバレッジの維持
第7節 結論
第5章 気候変動問題に対する日本の政策枠組みの改善
第1節 気候変動問題に向けた日本の政策枠組み
第2節 個別の政策手段の分析
2.1 国内排出量の削減
2.2 森林炭素吸収源
2.3 クリーン開発メカニズムとその他の京都メカニズム
第3節 京都議定書のもとでの日本の成果
第4節 ポスト京都の枠組みの先を読む
4.1 市場に基礎を置く手段の一層の活用
4.2 CDMの拡張とETSでの他国とのリンクで削減費用を低減する
4.3 市場の不完全性には非価格的政策手段を用いる
第5節 結論
表
表1.1 短期経済予測
表1.2 日本の人口関連指標と人口推計
表1.3 構造改革調査:労働市場
表1.4 部門別労働生産性上昇率
表1.5 構造改革調査:サービス部門の生産性を向上させること
表2.1 日本の預金取扱金融機関の証券化商品の保有額
表2.2 日本の証券化商品市場
表2.3 日本銀行による施策
表2.4 金融部門に対する政府の支援
表2.5 金融庁及び民間の規制団体によって取られた施策
表2.6 他の公的金融機関によって取られた措置
表2.7 全銀行の調整済み自己資本
表2.8 日本の銀行と欧米の銀行の比較
表2.9 主要行と地方銀行の比較
表3.1 2002年からの財政状況の推移
表3.2 主要国の財政刺激策の構成
表3.3 1992年からの日本の財政刺激策
表3.4 公的年金制度の長期展望
表3.5 「機械的試算」の各ケース
表3.6 中期財政シナリオの比較
表3.7 構造改革の再検討:税制改革
表4.1 組合管掌保険における保険料負担率の状況、2007年
表4.2 医療サービスの国際比較、2006年
表4.3 国民医療費の増加に寄与した要因
表4.4 病院の介護用病床数
表4.5 新薬の導入の遅れ
表4.6 日本における医療機器の承認の遅れ
表4.7 医療へのアクセス
表5.1 GHG排出趨勢の要因分解
表5.2 政府開発援助とクリーン開発メカニズム
表5.3 炭素集約度と1人当たりCO2排出量
表5.4 1990年から2006年の間の大気汚染物質とGHGの排出量の変化
表5.5 気候変動問題関連技術の発明国上位10国、1998〜2003年
図
図1.1 2000年以降の日本経済の動向
図1.2 賃金の動向とパートタイム雇用者の比率の上昇
図1.3 日本の輸出の地域別増加率
図1.4 危機のOECD諸国への影響
図1.5 日本の金融情勢
図1.6 日本の地価
図1.7 貸出先別銀行貸出金
図1.8 部門別貯蓄投資収支と経常収支
図1.9 日本の財政収支の悪化
図1.10 日本の公的社会支出は他のOECD諸国と比べて低い
図1.11 非正規雇用者の割合は高まっている
図1.12 農業保護の国際比較
図2.1 貸出の伸びと不動産部門の寄与
図2.2 2000年から2008年にかけての住宅価格対所得比の変化
図2.3 主要銀行貸出動向アンケート調査
図2.4 株価と銀行の全資産に占める保有株式の割合
図2.5 銀行の証券保有に伴う未実現評価損益
図2.6 預金取扱機関の破綻数
図2.7 中小企業向けの信用保証
図2.8 地方銀行における営業費用と資産規模
図3.1 公共投資の配分
図3.2 OECD加盟国の総債務と純債務
図3.3 純公的債務比率の変化の説明要因
図3.4 政府の利払い費
図3.5 日本における国債の保有状況
図3.6 2009年「機械的試算」
図3.7 「機械的試算」ケース1における債務ダイナミックス
図3.8 OECD加盟国の公共投資
図3.9 OECD加盟国の政府と公的企業の雇用
図3.10 民間部門と公的部門の賃金と労働者数の推移
図4.1 OECD諸国における医療費支出の対GDP比
図4.2 平均寿命の国際比較
図4.3 日本の医療制度のカバレッジ
図4.4 日本の医療制度は複雑で細分化されている
図4.5 日本の医療保険制度、2007年
図4.6 医師の診察の回数の国際比較
図4.7 急性病患者治療病院の国際比較
図4.8 医療の手数料と価格の切り下げは医療費の成長を抑えてきた
図4.9 たばこの税と消費
図4.10 日本におけるドラッグ・ラグ
図5.1 トップランナー基準の目標と成果
図5.2 2006年のOECD域内のエネルギー源
図5.3 環境税の税収
図5.4 日本の京都議定書と中期の排出量目標の概観
図5.5 CO2排出量の国際比較
図5.6 日本のエネルギー使用に伴う部門別CO2排出量
図5.7 2020年までに50%の排出量削減を行った場合の炭素価格
Box
Box2.1 1990年代の金融危機の解決に当たっての日本の経験からの教訓
Box2.2 危機を乗り超え金融部門の効率性を改善するための勧告
Box3.1 2008〜09年の財政刺激策の過去の対策との比較
Box3.2 財政の持続性確保のための勧告
Box4.1 政府の最近の医療政策
Box4.2 保険内と保険外の診療の混合請求の問題
Box4.3 医療制度改革のための勧告の要約
Box5.1 最近の日本の気候変動問題対策戦略
Box5.2 気候変動問題政策改善のための勧告の要約
前書きなど
OECD経済情勢審査委員会は、毎年、OECD加盟国といくつかの非加盟国の経済政策とその問題点などを徹底的に審査し、その報告書を発表している。審査においては、各国の消費需要、生産、雇用、賃金と物価、金融と資本市場、国際収支などを詳細に分析するとともに、経済動向の短期予測を行っている。このOECD年次審査は、ある国において他のOECD加盟国や開発途上国の利益と相反する政策が実施されないようにすることと、国際経済の弾力的な運営を図るべく各国の経済政策を調整することを目的としており、必要な政策勧告が盛り込まれている。
日本の経済政策についての2009年版の審査報告書は、世界経済危機の克服、銀行部門の効率性の改善、経済金融危機への財政対応と持続可能性、医療制度改革、気候変動問題に対する政策枠組みの5つの章から構成されている。