目次
特集のことば
[民主党政権 問われる推進力]
・新春巻頭インタビュー 仙谷由人大臣大いに語る(仙谷由人:行政刷新会議担当大臣)
・ただすべきは日米関係のゆがみ(金子敦郎:国際問題ジャーナリスト)
・早野透がみた民主党政権の一〇〇日(早野透:朝日新聞コラムニスト)
・民主党政権の財政政策を斬る(神野直彦:関西学院大学教授)
・東アジア環境共同体再論(叶芳和:帝京平成大学教授)
・デフレ化の成長戦略とは何か(水野和夫:三菱UFJ証券チーフエコノミスト)
・新政権下 重要性増す連合の役割(古賀伸明:連合会長)
・新たな国づくりに向けた雇用政策(西村理:同志社大学教授)
・緊急雇用対策への政策提言(小林良暢:グローバル総研所長)
・貧困調査から総合政策の構想へ(橋本健二:武蔵大学教員)
・「普天間」県外移設は県民意志(知念清張:沖縄タイムス記者)
・新政権で地域主権は成るか(辻山幸宣:財団法人地方自治総合研究所所長)
・野田市が公契約条例で最低賃金定める(小畑精武:自治労本部アドバイザー)
[頂門一針]
・民主政治と忍耐力(頑童山人)
[メディア時評]
・「暴かれた国家のうそ」—日米沖縄密約(喜多村俊樹:ジャーナリスト)
[文化時評]
・時代の証言を集めるとは、偏った意見を集めることにしかならない(陣野俊史:批評家)
[ある視覚]
・裁量行政の悪弊—雇用保険にも(八代俊:本誌編集委員)
[この一冊]
・『竹中恵美子の女性労働研究50年』竹中恵美子著(池田祥子:本誌編集委員)
・『ろうそくデモを越えて』川瀬俊治・文京洙編(小田切督剛:川崎市役所職員)
[小特集・教育再生への道を探る]
・「教育改革」批判と対抗的教育運動の課題(玉田勝郎:関西大学教授)
・小泉流「食育」批判(森本芳生:関西大学非常勤講師)
・人権闘争としての定時制高校存続運動(吉田豊:兵庫高教組副委員長)
[ドイツから世界に発信]
・解説 「第三次産業革命」は可能か?(長尾伸一:名古屋大学教授)
・「第三次産業革命」は可能か?(マルティン・イェーニッケ:ベルリン自由大学/クラウス・ヤコプ:ベルリン自由大学環境政策研究センター/訳=西村健佑:ベルリン自由大学大学院)
・コメント 「第三次産業革命」と、経済人としての市民が持つ複数の自己(クラウス・オッフェ:ヘルティー行政大学院大学政治社会学教授/訳=松本奈央子:上智大学大学院)
・コメント 現代のために歴史はどれほど有用か(ユルゲン・コッカ:ベルリン社会科学研究センター教授/訳=松本奈央子)
2010春号(VOL.23)予告
編集後記
前書きなど
特集のことば 民主党と小沢—日米安保論
二〇〇九年九月一六日に発足した鳩山民主党政権も、いわゆる「最初の一〇〇日」が過ぎ、メディアも世論も厳しい「業務査定」を行なっている。本号で早野透さんは、「新政権—晴れのち曇り、さて?」と述べている。デフレと戦後最大の税収減で、嵐の中の船出となっている新政権はどうなるのか。本号特集は“建設的批判者の立場”から多彩な論考を頂いた。政権担当者は今一度、あの“一票革命”を演じた国民がかたずをのんで見守っていることを肝に銘ずべきだ。
この新春号では、政・労・公の代表的なお三方にインタビューできた。一人目は、今や流行語にもなった「事業仕分け人」の親玉でもある仙谷由人行政刷新担当大臣。今回は大臣となって初めての本誌での発言となる。二人目は、財政学者の神野直彦関西学院大学教授。学会ではなく「公」としたのは、現在、総務省に置かれた「地方財政審議会」の会長でもあり、いわば官と学を総合した公の視点から、民主党政権の財政政策や税制を論じていただいた。三人目は古賀伸明連合新会長。連合は政権政党になった民主党の最大の支持団体であり、派遣切りや雇用不安、デフレ経済のなかで、労働組合のナショナルセンターに何ができるか、関心が集まっている。特に温暖化ガス二五%削減の課題や、雇用対策をめぐり、政・労・使を繋ぐ古賀会長の手腕に期待したい。
民主党は、「人の話はよく聞くが決断力のない鳩山首相」と、「説明はしないが決断力のある小沢幹事長」の間で揺れている。私は、昨年の秋号で、民主党政権の成立を「律儀な人々の革命」と書いた。今、「律儀な人々」の実行力と政権統括力が問われているのは間違いない。思うに、これは二つのことが重要である。マニフェストの「国民への約束」に、財政的な裏付けと優先順位をつけて戦略的に統合していく作業は、菅直人副総理の担当する「国家戦略局」の本来の仕事である。正式に発足した後、その存在感を示すことが不可欠である。もう一つは、小沢一郎幹事長の存在である。
小沢と民主党の関係は、アメリカと日本の関係に似ている。小沢は独自のパワーと独自の理論で行動し、民主党そのものではない。私は民主党と小沢—日米安保論を提唱したい。民主党は、現在の勢力への発展の多くを小沢に負っているが、その政治パワーの行使や製作形成スタイルにおいて、小沢豪腕主義とは異なる。民主党の成立過程を見ても二つは別の流れであった。それは巷間語られるように単なる二重権力なのか、いや事は単純ではない。やはり小沢も民主党なしには彼の考える政治を実現できず、両者は相互依存の同盟関係にある。だとすれば民主王政権が国民の願いに応えるには、民主党の側でもっと対等でバランスのとれた同盟関係を形成しなければならない。やはり国家戦略局がその鍵を握るのではないか。