目次
改訂版 発刊のことば(川崎達也)
はじめに(小倉京子)
第1章 総論
I ジェンダーとは何か(江原由美子)
II 専門知批判の視点としてのジェンダーとジェンダー・バイアス(江原由美子)
III 身体と暴力(江原由美子)
IV 暴力とジェンダー(宮園久栄)
V 労働とジェンダー、ワーク・ライフ・バランス(三橋弘次)
コラム
・セクシュアル・マイノリティと法(大村芳昭)
第2章 女性政策のあゆみ——国連の取り組み・日本の取り組み(大西祥世)
1 国連の取り組み/条約の形成と世界女性会議の開催
2 日本の取り組み/男女共同参画社会基本法
3 諸外国の取り組み
4 おわりに
第3章 法とジェンダー
I 法とジェンダー・総論(大村芳昭)
II 法とジェンダー・各論(大村芳昭)
III 沖縄・金武入会権訴訟(原田史緒)
第4章 家事事件とジェンダー(棚村政行・色川雅子)
《本編の目的》
《設例登場人物》
《設例シナリオ》
《設問》
《解説》
コラム
・不倫をどう捉えるか、そして性の二重基準?(瀬地山角)
・家父長制(小宮友根)
・母子家庭と貧困(赤石千衣子)
第5章 刑事事件とジェンダー(宮園久栄・長谷川卓也)
《本教材の目的》
《事案の概要》
《シナリオ》
《設問》
《解説》
コラム
・なぜ強姦被害者は告訴しないのか(宮園久栄)
・貞操観念(佐々木陽子)
・レイプ・シールド法(強姦被害者保護法)(宮園久栄・小倉京子)
・「強姦罪」における「暴行又は脅迫」について(小宮友根)
・裁判員制度とジェンダー(小宮友根)
・女性加害者と正当防衛理論(吉川真美子)
第6章 職場におけるジェンダー(菅沼友子)
《事例検討のねらい》
《事例の概要》
《雇用均等室にて》
《労働組合への相談》
《職場の同僚との会話》
《提訴の決意》
《設問》
《解説》
コラム
・日本における男女賃金格差の現状(原田史緒)
・ADR——裁判外の紛争解決(大西祥世)
・労働組合の現状(佐々木陽子)
・企業活動とジェンダー(市毛由美子)
第7章 犯罪被害者とジェンダー
I 被害者心理とジェンダー(野坂祐子)
II 犯罪被害者保護二法(番敦子)
III 犯罪被害者支援における弁護士の役割(番敦子)
第8章 ドメスティック・バイオレンス(打越さく良・板倉由実)
《相談事例》
《設問》
I ドメスティック・バイオレンスとは何か(板倉由実)
II DV防止法概説(板倉由実)
III DV事件の実務(打越さく良)
IV ストーカー(板倉由実)
コラム
・いまだ残るDVへの無理解(打越さく良)
・住所の秘匿(打越さく良)
・健康保険(打越さく良)
・児童虐待防止法改正と残る課題(打越さく良)
第9章 セクシュアル・ハラスメント(小倉京子)
《事例》
《解説》
《実務における注意点》
コラム
・法律扶助(打越さく良)
・セクシュアル・ハラスメント相談と苦情処理の分離(大村芳昭)
・アメリカにおけるセクハラ事件の賠償(佐熊真紀子)
・キャンパス・セクシュアル・ハラスメント(大村芳昭)
・ASDとPTSD(小倉京子)
第10章 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
I 総論(山本千晶)
II 堕胎(山本千晶)
III 生殖補助医療と法(藤川圭子)
コラム
・デートレイプ(池橋みどり)
・生殖補助医療をめぐる諸問題とジェンダー(江原由美子)
第11章 外国人とジェンダー(大村芳昭)
1 はじめに
2 外国人とジェンダー・問題提起
3 国境を越えた女性の人身取引(人身売買)
4 その他の問題
コラム
・再生産労働の国際分業(長谷部美佳)
第12章 実務家のジェンダー・バイアス(三橋弘次)
1 はじめに
2 弁護士職におけるジェンダー関係の今昔
3 再生産される弁護士職におけるジェンダー関係
4 弁護士のセカンド・シフト問題
5 おわりに
コラム
・弁護士会の男女共同参画(小倉京子)
・障がい者とジェンダー(樫尾わかな)
索引
前書きなど
改訂版 発刊のことば
司法制度を公正かつ公平なものとするため、私たち法律実務家が取り組むべき課題は山積しています。その中の重要な課題の1つとして、司法におけるジェンダー・バイアスを挙げることができます。司法制度や司法に関わる者に性に対する固定観念や差別意識が存在すれば、それにより事実認定や法的判断が歪むおそれが生まれ、司法制度を利用する人たちの人権を侵害することになりかねません。
当会は、1999年12月に刊行した小冊子「司法におけるジェンダー・バイアス」でこの問題を指摘し、以後、積極的にこの問題に取り組んできました。また、2002年4月、社会学等の研究者の参加を得て「司法におけるジェンダー問題諮問会議」を設置し、その中での検討結果を踏まえ、2003年11月、本書の初版を刊行しました。幸い、多くの法科大学院で教科書として採用され、法律実務家からも司法におけるジェンダー・バイアスを学ぶための入門書として好評を博しました。
この数年の間に、司法におけるジェンダー・バイアスに対する関心度は飛躍的に高まり、多くの研究者や法律実務家がこの問題に積極的に取り組むようになりました。このことは、我が国の司法制度の発展にとってまことに喜ばしいことといえます。
本書は、社会学等の研究者の方々からもご協力をいただき、また、新しい裁判例を盛り込むなどして、初版をアップデートしたものです。多くの法科大学院生や法律実務家にお使いいただき、本書がよりよい司法制度の実現に役立つことを期待します。
2009年8月 第二東京弁護士会会長:川崎達也