目次
この本を手に取られたみなさんへ
この本を安全に読むために
序文
はじめに
第1章 トラウマについて知る
単純性と複雑性
第2章 癒しの作業に取り組む前に
安全、安心、そして決意
第3章 起こったことを確認して、書いてみる
第4章 トラウマを再体験するような症状が出てきたときに役立つこと
第5章 回避や否認を使わずにトラウマに取り組む
第6章 PTSDの身体的な側面
第7章 PTSDに付随する症状に対処する
罪の意識、サバイバー・ギルト(生き残った者の罪悪感)、羞恥心、そして喪失感
第8章 感情の制御の難しさ
(複雑性PTSDの症状、カテゴリー1)
第9章 注意力や意識の変化
解離とトラウマによる記憶の喪失に対処する方法(複雑性PTSDの症状、カテゴリー2)
第10章 身体化
トラウマはあなたの身体にどのように影響するのか(複雑性PTSDの症状、カテゴリー3)
第11章 トラウマが自己の認識に与える影響
(複雑性PTSDの症状、カテゴリー4)
第12章 加害をした人について
(複雑性PTSDの症状、カテゴリー5)
第13章 人間関係における変化1
(複雑性PTSDの症状、カテゴリー6)
第14章 意味を見いだす
(複雑性PTSDの症状、カテゴリー7)
第15章 最後に伝えたいことと最後のエクササイズ
Complex PTSD Questionnaire for Trauma Survivors(原文)
トラウマ・サバイバーのための複雑性PTSD質問票(参考日本語訳)
訳者あとがき
参考文献
前書きなど
訳者あとがき
この本は、2002年にアメリカで出版された“The PTSD Workbook”の翻訳です。著者がこの本を執筆中の2001年に、あの同時多発テロが起こりました。このワークブックが、テロ後のアメリカで多くの人々の役に立ってきたことは想像に難くありません。
著者の2人は実際にトラウマを受けた人々と取り組んできたトラウマのスペシャリストです。その2人がそれぞれトラウマ・サバイバーから教えてもらったことや、一緒に考案してきたものや、世界各地で実践されてきた取り組みを、この1冊に集大成させました。これは、そんな宝物のたくさん詰まった珠玉の1冊です。
私たちが最初にこの本に出会ったのは、私たちが書いた、性虐待のサバイバーやその周りにいる人々のためのガイドブックであるシリーズ『性虐待を生きる力に変えて』全6巻が出版された際に、そのガイドブックを書くことを導いてくれたカナダのマギー・ジーグラーさんと再会したときです。彼女から出版のお祝いにと手渡された1冊の本がこの“The PTSD Workbook”でした。当時、必要な情報を一部の人だけではなく、本当に必要としている当事者やその周りにいる人々に届けたいという思いで性虐待のガイドブックを出版しましたが、私たちにはもっともっと当事者や周りにいる人々に伝えたい思いがたくさんありました。ガイドブックは当事者に勇気やしなやかな強さがあるということを伝えるきっかけにはなれたかもしれませんが、そういった力をもっと引き出せる方法や、また再び自分が自分の人生をコントロールできるようになるための方法などを伝える書物はまだ日本にはありませんでした。そのときに私たちがまさに求めていた本に出会ったのです。
その内容の幅広さもさることながら、この本にはさまざまな状況や症状や課題に対する、たくさんのアイデアが道具箱のように詰まっています。1つのやり方を押しつけるようなものではなく、どの道具を使うか、いつ使うかをサバイバーが選べるものになっています。これは、サバイバーだけでなく、サバイバーの恢復の手助けをしている援助者や治療者たちにも役立つものです。『性虐待を生きる力に変えて』を6巻出して間もなかったのですが、私たちはこの本を日本の人たちにも届けるべく、休む間もなくこの翻訳プロジェクトに取りかかりました。私たちにとって初めての翻訳でもあり、たくさんの人たちからの支えや応援のおかげで2年の月日を経てやっと出版することができました。
翻訳にあたって常に心がけていたのは、私たちがずっと大事にしている当事者の方々への思いです。PTSDやトラウマについて専門的な用語も数多く出てくる本なのですが、可能な限り、当事者にとってわかりやすいように、グループで丁寧に言葉を選ぶ作業に時間をかけてきました。著者とも話し合いながら、当事者が安全に読むことができるように原著にはないイラストやフラッシュバックの注意を喚起するマークを入れたりもしました。それでも十分とは言い切れませんが、より読み手にとってわかりやすく、安全に読めることを大事にして翻訳作業をしてきました。
(…後略…)