目次
はじめに
I 理論篇 ジェンダー研究の地平を見る
第1章 ジェンダー・アイデンティティという虚構(井川ちとせ)
第2章 なぜ小倉千加子は、フェミニズムは失敗した、と言うのか——あるいは、フェミニズムのジェンダー論的転回について(藤野寛)
第3章 マイノリティの政治と性的差異——ジュディス・バトラーと現代のセクシュアリティの配置(三浦玲一)
II 実践篇1 ジェンダーから現代社会を見る
第4章 パックスに見る現代フランスのパートナーシップのあり方(小関武史)
第5章 女であること、アジア人であること——現代英国の文化闘争(中井亜佐子)
第6章 現代ドイツ社会における女性像(清水朗)
第7章 中国農村女性のジェンダー問題——地域における女性の政治参加をめぐって(南裕子)
III 実践篇2 ジェンダーから歴史・文化の表象を見る
第8章 江戸時代の女性観(柏崎順子)
第9章 ジェンダーとネイションの再構築——マライア・エッジワース『ベリンダ』(一八〇一)(吉野由利)
第10章 マッチョ・ヒーローの誕生——男性性の再編成と文学表象(越智博美)
第11章 妄想と創造のあいだ——C・P・ギルマンの「黄色い壁紙」再考(川本玲子)
第12章 ベル・エポックが恋した「ムスメ」たち(中野知律)
第13章 アンドレ・ジッド『贋金つくり』とホモソーシャル共同体(森本淳生)
第14章 タイタニックを読む(金井嘉彦)
ジェンダーから世界を読むためのブックガイド
前書きなど
はじめに
本書は、最新のジェンダー学、女性学、フェミニズム、クィア・スタディーズの視座に立って、言葉も時代も地域も異なるさまざまな社会の文化表象を多角的に読み解いた、個別研究成果の集成である。多様で錯綜した現実を読み解くうえで、「ジェンダー」という視角あるいはファクターを考慮に入れるとはどういうことなのか、種々の専門研究領域が培ってきた問題意識を投影しながら検討をすすめるとともに、ジェンダー視点そのものを再検証し、それをふまえた研究のあらたな展開の可能性を探る試みの軌跡がここにある。
目次にも明らかなように本書は、ジェンダーから世界を読み解くための理論的なアプローチを紹介する理論篇と、個別具体的なケース・スタディとも言える実践篇の大きな柱からなる。理論篇では分析カテゴリーとしてのジェンダーという視点および、ジェンダー、セクシュアリティ、アイデンティティの理論、さらにはそうした理論の現況分析が示されている。実践篇は、ジェンダー、セクシュアリティの今日的な問題について、各国の現代社会の様々な事例(フランスにおける事実婚、移民の問題、中国、ドイツにおける女性観の変遷や表象)を分析する論考と、歴史的な文化事象をとりわけ表象の文化政治学に焦点をあてつつ分析する論考から構成され、ジェンダーという視点を具体的に導入して文化を見据える視座を立体的に示すことが目指されている。
(…後略…)