目次
形成的な評価の理念の再認識を
日本語版刊行によせて
序文
謝辞
概要
第1部 形成的アセスメントの概念
第1章 形成的アセスメントの範囲と方法論
はじめに
生涯学習のゴールを満たす
さらなる実践への障壁に取り組む
研究のゴールと方法論
第2章 形成的アセスメントの政策枠組み
はじめに
形成的アセスメントの実践を促進する法律制定
学校と教室レベルでの形成的な目的に総括的データの使用を奨励する
中央のカリキュラムと教授資料に組み込まれた、効果的な授業と形成的アセスメントの実践に関するガイドライン
形成的アセスメントを支えるツールと教授リソースの供給
特別なイニシアチブと革新的なプログラム
教師の専門職性向上に対する投資
さらに強い政策戦略を開発する
第3章 ケーススタディからみた形成的アセスメントの要素
はじめに
形成的アセスメントの要素
要素1:相互作用を促進する教室文化の確立とアセスメントツールの使用
要素2:学習ゴールの確立とそれらのゴールに向けた個々の生徒の学力進歩の追跡
要素3:多様な生徒のニーズを満たす様々な指導方法の活用
要素4:生徒の理解を把握・予想(アセス)することへの多様なアプローチの使用
要素5:生徒の学力達成状況へのフィードバックと確認されたニーズに応じて授業を合わせること
要素6:学習プロセスへの生徒の積極的な関与
強力な枠組みを生み出す
第4章 実践例からみた形成的アセスメントの要素
はじめに
要素1:相互作用を促進する教室文化の確立とアセスメントツールの使用
要素2:学習ゴールの確立とそれらのゴールに向けた個々の生徒の学力進歩の追跡
要素3:多様な生徒のニーズを満たす様々な指導方法の活用
要素4:生徒の理解を把握・予想(アセス)することへの様々なアプローチの使用
要素5:生徒の学力達成状況へのフィードバックと確認されたニーズに応じて授業を合わせること
要素6:学習プロセスへの生徒の積極的な関与
経験から学ぶこと
第5章 形成的アセスメントの利点と障壁
はじめに
障壁に取り組み、教室レベルで利点を実現する
教室での直接的な利点
学校と教師の実践に変化を引き入れ、維持し、深めるためのスクールリーダーの戦略
学校全体の利点
挑戦に取り組み、イノベーションを維持すること
第6章 形成的アセスメントの普及と促進のための政策指針
はじめに
政策指針1:教授学習に焦点を合わせよ
政策指針2:総括的・形成的アセスメントアプローチを、照準を合わせた緊密な提携のもと配列上に位置合わせ(アライン)せよ
政策指針3:教室・学校およびシステムレベルで集められたデータがリンクされ、システムのあらゆるレベルで改善を形作るために形成的に使われることを保証せよ
政策指針4:形成的アセスメントのための研修と支援に投資せよ
政策指針5:イノベーションを奨励せよ
政策指針6:研究と政策および実践の間に、より強い連携を打ち立てよ
第2部 形成的アセスメントの事例研究
第7章 カナダ——形成的アセスメントのために総括的データの活用を推進
概観
事例研究のハイライト
事例1:レ・コンパニョン・ドゥ・カルチェ校、サントフォア
事例2:セイクレッド・ハート・コミュニティスクール、レジャイナ
事例3:ザヴィエル校、ディア・レイク
第8章 デンマーク——学校にデモクラシーと対話の伝統を築く
概観
事例研究のハイライト
事例1:国立教育実験センター(SPF)
事例2:スナイベア校
第9章 イングランド——ハイステイクスな場面で形成的アセスメントを実践する
概観
事例研究のハイライト
事例1:ロードウィリアムズ校
事例2:セブンキングス高校
事例3:ブライトンヒル・コミュニティカレッジ
事例4:クレア・スクール
第10章 フィンランド——競争や比較でなく個人内の伸びに重きを置く
概観
事例研究のハイライト
事例1:ティッカコクシ上級総合中等学校
事例2:メイラハティ上級総合中等学校
第11章 イタリア——変遷していくシステム
概観
事例研究のハイライト
事例1:ミケランジェロ校
事例2:テストーニ・フィオラバンティ統合学校
第12章 ニュージーランド——多様な政策イニシアチブの中に形成的アセスメントを組み入れる
概観
事例研究のハイライト
事例1:ワイタケレ・カレッジ
事例2:ローズヒル・カレッジ
第13章 クイーンズランド、オーストラリア——成果ベースのカリキュラム
概観
事例研究のハイライト
事例1:アワレディース・カレッジ
事例2:ウッドリッジ州立高校
第14章 スコットランド——一貫性のあるアセスメントを作る
概観
事例研究のハイライト
事例1:フォレス・アカデミー
事例2:ジョン・オギルビー高校
監訳者あとがき
前書きなど
序文
形成的アセスメントとは、生徒の学習ニーズを確認し、それに合わせて適切な授業を進めるための、生徒の理解と学力進歩に関する頻繁かつ対話型(インタラクティブ)のアセスメントであり、教育改革においては広く知られる論点となっている。このアプローチは、より馴染みがあり報道価値のある、生徒の能力を要約して報告しようとするテストや試験を指す「総括的」アセスメントと、対比されることが多い。
2002年以来、OECD教育研究革新センター(CERI)は形成的なアプローチを分析してきた。そして、8カ国(オーストラリアのクイーンズランド州、カナダの3つの州、デンマーク、イギリス、フィンランド、イタリア、ニュージーランド、およびスコットランド)で中等学校の模範的な実践を研究し、これら全てをより広い現在の政策環境と関連付けながら、異なる言語の調査様式から文献論評を収集した。その研究の結果、形成的アセスメントの概念とアプローチ、そしてその授業方略との関係を明確化するこれらの要素を結びつけた。学校と教室における、この方向の改革を支援することは、政策に指針を提示する。
この研究に参加している各教育システムは、生徒の学業成績、生徒の学力など成果への公平性、および「学習の学習(learning to learn)」を進展させるために、改革の重要な領域であるという確信を持って、形成的アセスメントの実践を推進してきた。これらの非常に頼もしい知見にもかかわらず、より広い実践にはまだ大きな障壁がある。リソースと組織的な実施には現実性がないと感じる人々もいる。生徒の学力達成状況が一目瞭然となる分かりやすい確実な「総括的」テストの、説明責任への要求との対立がある。そして教室、学校、およびシステムレベルとアセスメント間の頻繁な連携の不足もある。前進する方法
を提案するために、研究は障壁に取り組む。前期中等教育に焦点を当てたのは、この教育段階では障壁が最も敏感に感じられるので、慎重に意図されてきたからである。ゆえに、それに先行する初等教育や後続する後期中等教育に比べて、「機能する(that work)」イノベーションで、何が達成されうるのかを特に明白にしてきた。
この、「What Works」研究は、15歳生徒の「生涯学習の知識と技能」を測定し、説明的な要因を関連させた、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)を含む、OECDでの他の教育分野の作業を補完し、最近出版した「Teachers Matter:Attracting, Developing and Retaining Effective Teachers(教員の重要性—優れた教員の確保、育成、定着)」を補足するものである。これに続く「What Works」研究も、範囲を生涯学習者に広げながら、形成的アセスメントに焦点を維持するであろう。