目次
A章 教育機関の成果と教育・学習の効果
A1:成人の学歴分布
A2:後期中等教育卒業率
A3:高等教育卒業率
A4:生徒が考える最終学歴
A5:生徒の数学に対する態度
A6:移民としての背景が生徒の得点に与える影響
A7:親の社会経済的背景が高等教育就学に与える影響
A8:最終学歴別の就業状況
A9:教育からの収益:教育と所得
B章 教育への支出と人的資源
B1:在学者一人当たり教育支出
B2:国内総生産(GDP)に対する教育支出の割合
B3:教育支出の公私負担割合
B4:公財政教育支出
B5:高等教育機関の授業料と私的部門に対する公的補助
B6:教育支出の使途別構成
B7:教育制度と資源投資の効率性
C章 教育機会・在学・進学の状況
C1:職業教育プログラムの就学状況
C2:初等教育から高等教育までの在学率
C3:高等教育機関における留学生と外国人学生
C4:若年者の就学及び就業状況
C5:成人教育への参加
D章 学習環境と学校組織
D1:初等・中等教育学校の生徒の標準授業時間数
D2:学級規模と教員一人当たり生徒数
D3:教員の給与
D4:教員の授業時間数及び勤務時間数
D5:学校の評価と監査
前書きなど
まえがき
各国政府は、個人の社会的・経済的可能性を広げ、学校教育の効率性の向上を促し、増大する教育への需要に応えるべく資源を動員できるような有効な政策を求めており、各国政府にとって国際比較はますます大きな関心の的となっている。こうした関心に応えるための取り組みの一環として、経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Co-operation and Development)教育局では、中核事業として、数量的で国際比較が可能なインディケータ(指標)の開発とデータ収集・分析に取り組み、毎年発行する「図表でみる教育」にまとめている。これらの指標は、政府が自国の教育制度を他国の実績に照らして検討することを可能にするものであり、また、OECDの別の事業である各国の政策レビューと合わせて、各国政府の政策改革への努力を支援し検証するものとして開発されている。
「図表でみる教育」は政策研究を必要とする政府、詳細な分析を行うためのデータが必要な学者や研究者、そして自国の教育が世界に通用する学生を育てる上でどこまで進化しているかを知りたい一般市民など、幅広い利用者のニーズに応えることを目指し、学習成果の質、その成果を生み出す政策手段や背景要因、教育投資による個人的・社会的収益率に関して考察を加えている。
「図表でみる教育」は、OECD加盟国政府をはじめ、OECD教育インディケータ(INES:Indicators of Education Systems)事業に参加している専門家・諸機関及びOECD事務局の長期にわたる努力と協力の成果である。本書は、Andreas Schleicher 率いるOECD教育局指標分析課が、Etienne Albiser、Eric Charbonnier、Michael Davidson、Bo Hansson、Corinne Heckmann、Ben Jensen、Karinne Logez、Sophie Vayssettes、Jean Yipの協力を得て草稿を作成した。また、管理業務についてはCecile Bilyから、編集業務についてはKate Lancasterから支援を受けた。発行までの過程では、OECD加盟各国のINESナショナル・コーディネーターが指揮を執り、INESネットワークのリード国であるオランダ、スウェーデン、アメリカ合衆国の3か国による資金及び資材の援助を得た。本書の発行並びにOECD教育インディケータ事業に対して、全般的な協力を得た諸機関のメンバーや専門家の氏名は巻末に掲載している。
OECDと加盟諸国は、政策的ニーズと国際的に比較可能な指標の結びつきの強化に努めており、その成果は近年大きく実りつつあるものの、なお努力を続ける必要がある。そしてその過程には、避けて通れない各種の課題や矛盾がある。第一に、これらの指標は各国の政策課題の中でも優先順位が高い教育問題に応え、国内での分析や評価から得られる成果に対して、国際比較という視点から重要な付加価値を加えるものでなければならない。第二に、これらの指標は国際比較が可能な形で提示される必要がある一方、各国の歴史や制度、文化などの違いが見て取れるような国ごとのデータも示さなければならない。第三に、これらの指標はできるだけわかりやすく単純明快に提示される必要があるが、一方で、教育の持つ多面性を表して相当程度の複雑さを残すことも求められる。最後に、指標全体の数量はなるべく少ないほうが望ましいが、各国でさまざまな教育課題に取り組む政策立案者の利用に耐えるだけの十分な数量も必要である。
OECDはこうした課題に今後も積極的に取り組み、またデータの収集が容易で成功が見込める分野だけでなく、概念の整理になお多大な投資が必要な分野においても努力を続けていく。そうした今後の取り組みの中でも、「生徒の学習到達度調査(Programme for International Student Assessment: PISA)」の内容の充実と、「成人技能調査(Programme for the International Assessment of Adult Competencies: PIAAC)」、さらには「教員・教授・学習に関する調査(Teaching and Learning International Survey: TALIS)」の実施は主要なものとなるだろう。
本報告書はOECD務総長の責任により発行されるものである。