目次
1 結婚
1 未婚率
2 生涯未婚率
3 パラサイト・シングル
4 ひとり暮らしの未婚者
5 持ち家に住む単身者
6 多様化する家族構成
7 農山村の「嫁不足」
8 離婚
コラム1 増える「出産難民」
コラム2 人口妊娠中絶
2 仕事
9 女性労働力率
10 専業主婦率
11 非正規雇用
12 失業と高卒無業
13 女性比率が高い職業
14 フリータ−とニート
15 地方議会に占める女性議員
16 女性にとっての公務員職
3 子育て・教育
17 合計特殊出生率
18 保育サービス
19 家事時間と通勤時間
20 年齢階級別女性労働力率
21 大学進学
22 高卒の就職移動
23 学歴
コラム3 在日外国人の男女比
コラム4 子育て費用
4 生活と福祉
24 母子世帯
25 ドメスティック・バイオレンス(DV)
26 女性の高齢者
27 介護
28 寿命と死因
コラム5 女性と犯罪
コラム6 自殺
付録
1 日本地図の読み方
2 表現によって変わる分布図の情報
前書きなど
まえがき
地図と地理学は切っても切れない関係にある。地域ごとに集計された地理情報を地図にして眺めてみると、新たな発見に遭遇することも珍しくない。そうした驚きをきっかけにして、その原因や背景について思いを巡らす楽しみは、もはや地理学者だけのものではなくなっている。これは、GIS(地理情報システム)の発達と普及によって、素人でも簡単に地図を作ったり、利用できる機会が増えたためでもある。GISを用いれば、大量の地理情報を瞬時に地図化することができ、それを通してあらゆる空間スケールでの地域的差異やその原因を探るきっかけと好奇心を読み手に与えるだろう。
当研究グループでは、働く女性をおもな研究対象にした『シングル女性の都市空間』(大明堂、2002年)と『働く女性の都市空間』(古今書院、2004年)を刊行してきたが、それぞれ「ジェンダー・マップ」の章を設け、日本全国や東京大都市圏を対象とした各種地図を描くことにより、女性の生活と就業をめぐる地域的差異が明らかになった。マスコミでこれらの本が紹介された際にも、こうした地図が関心をひいたようである。
そこで、上記の既刊書に掲載できなかった主題図を新たに加えて、地図帳(アトラス)としてまとめ直したのが本書である。とくに本書では、経年変化の分析や、都道府県から町丁目にいたる種々の空間単位で地図を作成することにより、時間的・空間的文脈から現代日本の女性を取り巻く状況を捉え直すことを試みている。
これに類した出版物としては、女性に関する各種の指標を世界の国別に地図で示したジョニー・シーガー著『地図でみる世界の女性』(明石書店、2005年)がある。筆者らも同書を大いに参考にしたが、本書ではとくにストーリー性をもたせるために、進学・就職・結婚・出産・子育てといった、女性のライフイベントに即して章を構成し、それぞれのテーマごとに地域的差異とその傾向を述べている。また、犯罪や福祉など社会的な問題についてもコラムを設けて解説を加えた。したがって、本書に掲載された地図は、単に分布状態の差を表すだけでなく、各々のライフステージにおける女性の生き方の地域差を示すものといえるだろう。地図に現れた地域差は、女性が人生の中で経験することが、個人の自由な意志だけでなく、地域の状況に順応した結果でもあることを物語っている。
各々の地図には、短い解説が添えられているが、地図から得られる情報をどのように解釈するかは、読者の手にゆだねられている。収録した地図が読者の想像力をかきたて、新たな問題の発見や解決に役立つことになれば幸いである。
筆者一同