目次
まえがき
序 憲法が変えられた日
1 憲法って何?
1 憲法は国家を縛るもの
2 基本的人権
個人の尊重/政教分離/憲法二五条/憲法二四条
3 平和主義
2 自民党「新憲法草案」徹底批判
1 自民党「新憲法草案」の“新”について
2 憲法前文案の問題点
国家と個人の関係が一八〇度変わる/国に対して愛情を持て/戦後の出発点の否定/平和主義、平和的生存権の否定/天皇制の規定が前文へ/自由主義とは何か
3 戦争ができる国へ
現実とギャップがあるから憲法を変える!?/戦争をする国へ/法律で何でも決められる、何でもできる/九条の二第三項について/自民党「新憲法草案」前文と九条の二第三項について/アメリカとともに、世界で戦争ができる国へ/在日米軍基地の再編の問題との関係/九条を変えると何が起きるか/徴兵制/軍事裁判所の設置/軍事産業に依存する社会へ/非核三原則の見なおし/暴力を肯定する社会/戦争反対が、言いにくくなる社会へ/格差拡大社会と戦争——命が粗末に扱われる
4 基本的人権の制限
5 政教分離
6 通信の秘密の保障
7 新しい権利
環境権を権利として規定していない/個人情報の保護等/新しい権利のための改憲ではない
8 二四条
9 二五条
10 予算
11 簡単に憲法が変えられる
3 国会の状況
1 憲法調査会の設置
2 憲法調査会での議論
3 憲法調査会の報告
4 憲法調査特別委員会
5 改憲のための国民投票法案
6 これから
あとがき
資料 自由民主党 新憲法草案(現行憲法対照)
付記
前書きなど
まえがき
「白バラの祈り」(マルク・ローテムント監督、ドイツ、二〇〇五年)という映画を見た。
ナチスドイツの支配下で、ミュンヘン大学の大学生たちが、「ヒトラー打倒」「自由」と壁に書き、「このような戦争は止めるべきだ」というチラシを配った。発見されて、六人は死刑となり、多くの人間が懲役刑となった。
彼らは一体何をしたのか。
思想・良心の自由、表現の自由を行使しただけである。
しかし、そのことが反逆罪にあたるとされ、あっという間に死刑となった。
この映画を見ながら、日本の現実のことを思った。自衛隊の官舎に「自衛隊のイラク派兵反対! いっしょに考え、反対の声をあげよう!」というチラシを配って逮捕された人は、一審は無罪、二審は有罪となった。現在上告中である。公衆トイレに「戦争反対」「反戦」と書いた人は建造物損壊罪で有罪となった。国家公務員が休日に「憲法九条を守ろう」という政党機関紙を配って、逮捕され、起訴された。
「戦争反対」とチラシを配り、壁に書き、刑事事件となっている。
戦争をしないと決めた憲法九条を変えようという動きがある。今ある自衛隊を「自衛軍」に変えるということだけではない。今、できないことをできるようにするのだ。現状の追認ではない。日本の若者を海外に派兵し、米軍とともに武器をとり、バンバン爆弾を落とすようにするのだ。
そして、「戦争のできる国」にすることと基本的人権の制限はセットで起きる。
二〇〇五年秋、自民党の改憲草案が発表された。
前文案は「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し」とある。国民は、国家に対して「愛情と責任感と気概」を持つように言われている。
そもそも憲法とは何なのだろうか。憲法は基本的人権を守るために国家権力を縛るものである。
しかし、自民党案は、国が国民を縛る「説教たれたれ憲法」となっている。これは憲法だろうか。
「憲法は誰のためにあるのか」という根本的なことが問われている。
このことがこの本を書こうと思った大きな動機である。
この本は、序が「憲法が変えられた日」となっている。改憲されれば「こんなふうになるだろう」ということを生き生きと伝えたかった。
次に1章が、「憲法って何?」であり、2章が、「自民党『新憲法草案』徹底批判」となっている。何が問題かということをできるだけわかりやすく伝えた。
3章は、国会の状況、今までの流れを簡単に説明した。
憲法は、一部の人たち、国会議員、権力を持っている人たちのためにあるのではない。みんなの人々のものである。
それが変えられてしまうかもしれないという状況の下、一人でも多くの人たちと明るくつながっていきたい。この本がそのための一冊になったらとても嬉しい。