目次
まえがき
序 論 アフガニスタンの地理的な位置について(鈴木 均)
第1章 アフガニスタン現代史の概説
第1節 ソ連軍侵攻からムジャーヒディーン政権樹立まで(山根 聡)
第2節 ターリバーンの登場から新憲法制定まで(柴田和重)
第3節 中央アジア世界とアフガニスタン──交流と断絶(清水 学)
第2章 地方・農村部の諸問題
第1節 その後のアフガニスタン農村──フィールドワークの試み(鈴木 均)
第2節 農村部におけるシューラー創設活動──インタビュー資料(鈴木 均)
第3節 アフガニスタンの麻薬経済と密輸(牧野百恵)
第3章 基本文献解題
第1節 近代史──国家形成過程(小牧昌平)
第2節 現代政治関係(鈴木 均・窪田朋子)
第3節 経済情報──インターネット情報を中心に(大西 圓)
第4章 資料
第1節 アフガニスタンの憲法史とロヤ・ジルガ(鈴木 均)
第2節 アフガニスタン新憲法翻訳
第3節 現代アフガニスタン政治の主要組織および人物(窪田朋子)
第4節 アフガニスタン年表(小牧昌平・窪田朋子)
第5章 アジア経済研究所図書館所蔵 アフガニスタン関係文献目録(泉沢久美子)
1. 概説書 2. 歴史 3. イスラーム、イスラーム運動 4-1. 政治一般 4-2. 国内政治 4-3. 国内紛争、革命、テロ 4-4. ターリバーン政権 4-5. 国際関係、国際紛争 4-6. 対英国関係 4-7. 対ソヴィエト連邦関係 4-8. 対米国関係 4-9. 対インド、パキスタン関係 4-10. 9・11米国多発テロ以降 5. 移民、難民 6-1. 経済一般 6-2. 経済政策、経済開発、地域開発 6-3. 国際援助 7. 産業:農工業、エネルギー 8. 法律、法令 9-1. 社会一般 9-2. 統計、人口 9-3. 社会保障、医療 9-4. 教育 10-1. 地理、地誌、旅行記 10-2. 地図 11. 伝記、人名辞典 12. 文献目録、文献解題
後記
人名索引/地名索引/事項索引
巻末地図
著者紹介
前書きなど
まえがき
2001年9月11日の米国同時多発テロ以来、アフガニスタンの20年以上に及ぶ混迷状態からの復興は国際社会が共同で解決するべき重要問題として意識され、同国の動静は常に国際社会の注目するところとなっている。だが1979年末のソ連軍の侵攻以来、アフガニスタンに対する国際的な関心はややもすれば政治的・軍事的な分野に偏し、アフガニスタン国家の復興の礎となるべき当該地域についての知的インフラの蓄積は、この20余年間ほとんど進展してこなかったといわなければならない。
この莫大な知的断絶にいくらかでも楔を打ち込み、将来的なアフガニスタン地域研究のための小さな出発点となることを願って本書を世に送る。本書はアフガニスタンに研究上の関心を向けようとする人にとって最初の手掛かりとなるような情報をできるだけ広い網をかけて集め、編集したものである。それゆえ本書が対象として想定している読者はアフガニスタン研究者に限るものではなく、学生、実務家、ジャーナリストなど、およそアフガニスタンについて具体的な知識を得ようとする人は、本書から何らかのヒントを得られるのではないかと期待している。
本書の骨格になったのはアジア経済研究所で平成15年度に実施された「現代アフガニスタンの政治と社会」研究会の報告書である。本研究会はその目的の一つに研究者間での「基本的な情報・データの所在の確認と整理・共有」ということを掲げており、本格的なアフガニスタン地域研究を日本において改めてスタートさせることを意図してきた。したがって本書のもととなった報告書も、そのような研究会の趣旨に沿ってアフガニスタン研究のための「ハンドブック」のような内容とすることを目標にして作成した。本書はこの報告書を改めて編集し直し、より広範な読者に情報を提供することを目的にしている。
本書の内容・構成については目次に掲げた通りであるが、ここで各章のねらいを簡単に説明しておこう。まずアフガニスタンの地理的・地勢的な特徴を扱った序論に続き、第1章では同国の近代史を歴史的に回顧する。第1節はアフガニスタンの領域が画定される19世紀後半以降の時期を特に中央アジア世界との関わりで論じる。第2節、第3節はそれぞれソ連軍侵攻以降、ターリバーン登場以降の政治過程を時代を追って詳細に叙述している。
続く第2章では農業国であるアフガニスタンの地方・農村部の現状に焦点を当て、2003年秋の時点の現地報告とそれに付随するインタビュー資料、また現在インターネットで入手可能な社会経済データをもとに麻薬経済および密輸問題の基本的構造を論じた論考を収める。第1節の論考は『現代の中東』第34号(2004年1月)からの転載である。
第3章は文献解題であり、学生やビジネスマンなどの読者がアフガニスタンに研究的な関心を持ってアプローチする際の最初の手掛かりを提供することを目的として、近代史・現代政治および経済情報の各分野で参照するべき基本的な文献についてそれぞれ紹介・解説している。
第4章は2004年の1月4日に採択されたアフガニスタンの新憲法をめぐる論考と翻訳、および政治組織・主要人物の解説と年表で構成される資料編からなる。特に新憲法の翻訳はダリー語・パシュトー語原文からの邦訳であり(同時に公表された英語の仮訳も参照)、2003年11月3日に発表された最終草案からの異同についても逐一注記している。翻訳にあたられた登利谷正人氏(慶應義塾大学院生)の努力を多としたい。
最後の第5章はアジア経済研究所図書館に現在所蔵されているアフガニスタン関係図書のリストであり、同図書館の泉沢久美子氏のご尽力で本書に加えられた。少なくともここに掲げた図書資料については、現在アフガニスタンに関して日本で誰でも利用可能であるということになる。
以上、アフガニスタン地域研究のためのハンドブックとしてはいささか不十分な内容ではあるが、読者諸賢の温かいご批判・ご助言を得て今後とも内容の改善を図っていきたいと執筆者一同考えている。(後略)