目次
第14章 戦争は国家の安寧
第一次世界大戦への参戦/経済上の必要性/不人気な戦争/防諜法と反戦運動/広がる徴兵反対/IWWの壊滅/改革と弾圧ふたたび
第15章 苦難のときの自助
大戦後の労働運動/繁栄の時代の裏に/大恐慌/芽をふく「反乱の種子」/ニューディール/自衛する人びと/農村に広がる組織化の波/産業別労働運動の高まり/直接行動から統制へ/ニューディールと民衆
第16章 民衆の戦争だったのか
第二次世界大戦への参戦/世界の覇権をめざして/大戦下の民衆/なんのために戦うのか/原爆投下/ファシズムは敗れたが……/朝鮮戦争/マッカーシズムとトルーマン/ローゼンバーグ事件/軍事超大国への道/軍事援助から軍事干渉へ/キューバ侵攻とリベラル
第17章 それとも爆発するのか
黒人詩人たちの歌/浮かびあがる人種問題/抗議の武器のみをもって/自由のための乗客たち/公民権法の成立/爆発するブラックパワー/荒れ狂う差別主義/黒人運動の変化
第18章 不可能な勝利——ベトナム
ドミノ理論/トンキン湾事件/史上空前の爆撃/ペンタゴンの嘘/この愚行をやめさせなければならない/政府内部からの批判/広がる抗議行動/反戦運動の組織化/国民意識の重大なゆがみ
第19章 驚愕
これがすべてなのか/女性のがらくた/女性たちがいつもやってきたこと/囚人の反乱/牢獄の革命家たち/発言する先住アメリカ人/手を取り合うインディアン/雄々しくかつ誇り高く/変革の奔流
第20章 七〇年代——統制の時代だったのか
ウォーターゲート事件/腐ったリンゴを捨て、リンゴ箱を救え/報道されなかった悪行/「マヤグエス号」事件/明るみに出されたFBIとCIA/深まる国家不信/民主主義の動揺
第21章 カーター=レーガン=ブッシュ——超党派の合意
政治と民衆の距離/カーター政権の誕生/手のこんだカーター外交/継続される軍事援助政策/法律は金持の味方だ/カーターの対外干渉/レーガンの登場/環境保護問題/軍事支出と社会福祉/税制「改革」の受益者/貧困化の進行/防衛費は「盗み」/イラン=コントラ事件/軍事干渉の拡大/国際情勢の転換/パナマに対する「小さな」戦争/ペルシャ湾岸戦争の開始/情報の管理/アラブの生命
第22章 報道されていない抵抗運動
反核運動の進展/反軍国主義的感情/対外干渉反対/社会部門の予算削減反対/世論と政治/ベトナム戦争の遺産/ペルシャ湾岸戦争反対運動/コロンブス五〇〇周年記念祭反対運動/「常に敵対的な文化」
第23章 来るべき体制支持者の反乱
みせかけの統一/離反する中産階級
第24章 クリントン大統領時代
ビジネス寄りの政治/「法と秩序」/移民問題/「福祉改革」の内実/軍事優先改革/対外干渉の実態/対外経済政策/あわや弾劾か/バルカン危機/貧富の格差の拡大/従来の路線を踏襲/市民の抗議行動/労働運動の新展開/経済的人権/世界貿易機関への抗議
第25章 二〇〇〇年の大統領選挙と「テロリズムに対する戦い」
ブッシュ・ジュニア政権と九・一一/人道主義的超大国への道
あとがき
訳者あとがき(富田虎男)
日本語旧版(一九八二年)監修者の言葉(猿谷 要)
参考文献
地名・事項索引
人名索引
前書きなど
日本語版への序文 私は自分の本を日本の皆さんに紹介することができて幸せに思います。私は日本における平和と正義を求める運動と長期にわたって交流してきました。その交流が始まったのは、一九六六年六月のことで、そのとき私はアメリカ南部における人種差別反対運動にともに携わってきた友人ラルフ・フェザーストーンと一緒に招かれて日本に来ました。招いてくださったのは、ベ平連でした。ベ平連は私たちと同様に、ベトナム戦争に反対していた日本の市民のすばらしいグループでした。私たちは札幌から沖縄まで日本国中をまわり、一三の都市で講演してベトナム戦争とアメリカ合衆国における反戦運動について語りました。 その年の夏に、私は妻や幾人かのアメリカ人と一緒に、広島の原水禁世界大会に招かれました。それはとても感動的な経験でした。世界中の核兵器の廃絶に向けて闘うことを約束して、多くの国ぐにの人びとが参集し、その経験をともにしました。 そのとき以来ずっと私は日本の友人たち、とくに倦むことを知らない人権の唱道者小田実や、生涯一貫して平和と正義にかかわってきた有能な編集者森和子とも交流してきました。 私は本書がこのような大義のために役立つよう願っています。私は歴史の研究を、それ自体を目的としてではなく、また過去を再構成する試みとしてでもなく、現在を照らす一つの方法として見てきました。労働者階級の家族のなかで私自身が育ったこと、アメリカ空軍の爆撃手として第二次世界大戦に参加したこと、南部で教職に就き、人種的正義を求める運動に参加したこと……、これらのことすべてから私は、新しい世界を導き出す一つの方法として、歴史から学び歴史を教えたいと思うようになりました。 私はアメリカ合衆国の歴史には、アメリカ人に対してのみでなく、日本や他の国ぐにの人びとに対しても伝えるべきことがたくさんあると信じます。合衆国の歴史は、私たちが政府に頼っていては、自分たちの問題を解決することはできないことを示唆しています。というのは、政府は一般に金持と有力者の利益に奉仕しているからです。また合衆国の歴史は、国ぐにが戦争を始めるのは、民主主義と自由を促進するためではなく、帝国を拡大し、経済的利益を増進するためであることをわれわれに告げています。 本書で私が強調しているのは、指導者の重要性ではなく、ふつうの人びとの行動です。重要な社会正義の問題が解決されなければならない場合に、問題が解決されるのはどの場合でも、政府の先導によってではなく、市民——それも組織をつくり異議を申し立て、なにか重要な変化がおこるまであくまでもやり抜く市民——の犠牲によってであることを、私は明らかにしています。このことは、アメリカ史のなかから出てくる教訓ではなく、日本をふくむあらゆる国の歴史から出てくる教訓です。 私はこの歴史書が、人びと、とりわけ来るべき世代の若い人びとが、戦争に反対し、軍国主義に反対し、人種的不正義に反対し、男性優位に反対する闘いに、また先住民の権利のための闘いや、きれいな地球のための闘いに立ちあがるきっかけとなるようにと念じています。 私は本書を私の孫たちだけでなく、日本の子どもたちにも献呈したいと思います。二〇〇四年冬ハワード・ジン