目次
第1章 カムイ・ユカラにチャレンジ
ねらい/日本の殿様に憧れて/サマユンクルの登場/サマユンクルの歓迎/サマユンクルの行為は?/サマユンクル の行為を拒否/サマユンクルの怒り/オキクルミの村へ行く/オキクルミの怒り/オキクルミ とワオカムイの言い合い/日本の殿様に射られて/カムイ(神)とアイヌ(人間)の関係は?/まとめ
第2章 アイヌ語地名にチャレンジ
ねらい/はじめに/北海道のアイヌ語地名/千島列島のアイヌ語地名/サハリンのアイヌ語地名/東北地方のアイヌ語地名/アイヌ語地名の広がりから/まとめ
第3章 アイヌ史にチャレンジ
ねらい
はじめに
一 古代国家とエミシ(エミシの時代)
東北地方にも、アイヌの祖先がいた/東北40年戦争
二 原アイヌとオホーツク文化(擦文人の時代)
江別文化圏の拡大に注目を/オホーツク文化の興亡/元帝国とサハリンアイヌ
三 アイヌ民族と交易の時代(「中世」「近世」アイヌの時代)
自由交易の時代/コシャマインの戦い/シャクシャインの戦い/チャシの時代
四 アイヌモシリをねらう国々(「近世」後期アイヌの時代)
国家のはざまのなかで/国家によるくるしみ/アイヌモシリを、日本とロシアが奪う
五 日本国民として、先住民族として(近現代アイヌの時代)
サハリン・千島交換条約/「旧土人保護法」への道/「私はアイヌだ。どこまでもアイヌだ」/教育の現場では/同化を求める社会のなかで/先住民族として
まとめ
第4章 「北方領土」にチャレンジ
ねらい
はじめに——北方地図を広げてみよう——
一 国境の攻防戦
アジア・太平洋戦争で戦った国は?/太平洋戦争の末期に、何が?/ソ連軍、国境を越える/半田沢の戦い/師走川の戦い/古屯駅の戦い/北極山の戦い/八方山の戦い・停戦協定
二 ソ連軍の西海岸侵攻
安別の戦い/恵須取空襲/塔路では……/大平炭坑病院では……/上恵須取/内恵道路の悲劇
三 真岡虐殺
8月20日 真岡の朝/ソ連軍の上陸/真岡中学校教師/真岡郵便局の「九人の乙女」/「九人の乙女」の自決を考える/降伏した人々は……/そのとき軍隊は……
四 豊原空襲と3船襲撃
豊原の街では……/豊原の8月22日/ソ連軍・南樺太占領/引きあげ船3船/引きあげ2船はどこに?
五 朝鮮人と先住民族
南樺太に朝鮮人を連行/戦争中の朝鮮人労働/朝鮮人を虐殺/朝鮮人虐殺から見えるもの/敗戦直後の、サハリン在住・朝鮮人/戦後のサハリン在住・朝鮮人/故郷に帰れるか/先住民族の苦難
六 ソ連軍の北千島侵攻
北千島の日本軍/北千島の要塞と、朝鮮人労働/占守島の戦い/「誤爆」と命/「正義」の言葉
七 ソ連の千島列島占領
千島列島の8月15日/敗戦と、軍・大企業/「北方四島」占領開始/日本人の脱出/日本人の引きあげ/「北方領土」問題
八 さまざまな文化の交流の中で
北方史をさかのぼると……/オホーツク文化と擦文文化/アイヌ・ニブフ・ウイルタ/北海道・サハリンを「発見」した国は……/千島列島を「発見」した国は……/中国・日本・ロシアの争奪戦/日本とロシアで領土画定/サハリン・千島交換条約とアイヌ/日ロ戦争/シベリア出兵/尼港事件/北方史と「国の正義」
まとめ
前書きなど
はじめに——もの言わぬ現代に、熱い一石を—— あなたは気がつきましたか。考えてみたことがありますか。 なぜ、国境線が四つあるのか、ということを! ここに、北方地域の白地図があります。 まず、国名を入れます。日本とロシアが入りますね。 その国境線がどこか、線を引いてください。 エッ、国境線など、あまり考えたことがない? ヒント! 明らかに「ロシアだな」と思う島は、どこですか。 そして、明らかに「日本だな」と思う島は、どこですか。 つまり、次の島々は、日本でしょうか、ロシアでしょうか。 北海道は……。日本ですね。 サハリン(樺太)は。千島列島は。 「日本政府の立場」から、国境線の「正解」を言いましょう。 まず、北海道とサハリンの間の宗谷海峡。 北緯50度線がある、南サハリンと北サハリンの間。 千島列島に目を向ければ、択捉(えとろふ)島と、ウルップ島の間。 千島列島のもっとも北のシュムシュ島。その島の北にも国境線があります。 北方に国境が四つもあるなんて、考えたこともない。 いったい、なぜなんだ? その答えは、第4章を見ていただくとし、もう一つ、問題です。 今まで、いくつか地名が出てきましたね。それらの地名は何語なんでしょうか。 千島列島(クリル諸島)、北海道、宗谷(海峡)、択捉島は当然、日本語! ウルップ島はロシア語? いいえ、宗谷、択捉、ウルップはアイヌ語です。 それでは、北海道は日本語。日本語ではありますが、北海道の「海」は、アイヌを指す言葉として、考えられました。 同様に、クリルもアイヌを指す言葉です。 北方のことを考えるとき、アイヌの存在は重要です。 そこで、アイヌの文化や歴史を考えるきっかけとして、第1章〜第3章を見てほしいのです。 さて、何とも冷めきった、皆がもの言わぬ現代だからこそ、「国とは何なのか」を北方の世界から、たっぷりと、熱く考えてみませんか。 * 本書は『アイヌの学習にチャレンジ』(2000年)の姉妹編となります。あわせて、お読みいただければうれしいです。