目次
序文
第1章 重要な調査結果の概要
1.1 報告書の構成
1.2 現状
1.3 障害者政策の挑戦
1.4 政策についての結論
第2章 報告書の目的と分析のための枠組み
2.1 序論
2.2 プロジェクトの目的
2.3 概念的枠組み
第3章 障害をもつ人の所得と労働力参加に関する事実
3.1 就労年齢にある障害をもつ人口の確認
3.2 所得保障:主なねらいは達成されるか
3.3 労働統合──労働市場への参加は十分か
3.4 労働力参加と所得保障は公共政策によって説明できるか
3.5 現状の概要
第4章 補償政策の挑戦
4.1 障害給付の永続性
4.2 障害給付の水準と給付の罠
4.3 適用範囲の食い違い
4.4 給付へのアクセス
4.5 障害給付の年齢プロファイリング
4.6 評価手続き
4.7 疾病、障害、労働関連災害の給付
4.8 障害給付と失業給付
4.9 障害給付と早期退職給付
4.10 補償政策の分析の調査結果の概要
第5章 統合政策の挑戦
5.1 雇用促進のための法的枠組み
5.2 雇用主の義務
5.3 職業リハビリテーションと職業訓練
5.4 特別雇用プログラム
5.5 統合プログラムでの年齢プロファイリング
5.6 統合政策と積極的労働市場政策(ALMP)の分析
5.7 統合政策の分析の調査結果の概要
第6章 障害者政策の類型化
6.1 政策アプローチの評価──比較分析の手段としての類型化
6.2 障害者政策の類型化を用いての政策と成果との比較
第7章 最近および今後の政策改革
7.1 最近の改革の範囲と方向
7.2 各国特有の改革イニシアティブ
7.3 ルクセンブルクでの新たな改革戦略
第8章 政策についての結論
8.1 政策の原則
8.2 障害者政策を実施する上での様々な制約
8.3 相互義務に基づいた障害者政策の練り直し
付属資料1 専門付属資料
付属資料2 政策の類型化の分類
付属資料3 障害関連給付計画の特徴
付属資料4 雇用促進アプローチの特徴
訳者あとがき
参考文献
前書きなど
訳者あとがき 国際社会において障害者政策が意識されはじめたのは、ほんの30年ほど前のことにすぎない。しかしこの間、国連の活動を見てもその動きは急速に進んでいる。重要な決議だけでも、障害をもつ人の権利を明確に宣言した1975年「障害者の権利宣言」、完全参加と平等を宣言した1981年「国際障害者年」、1982年「障害者に関する世界行動計画」、1983年から1992年までの「国連障害者の10年」で、加盟国に対して障害関連諸問題に積極的に取り組むことが要請された。また具体的な政策措置の指針として1993年「障害者の機会均等化に関する基準原則」、インクルーシブな社会を実現するためのより具体的な提案を示した1999年「障害者に関する世界行動計画の実施──21世紀におけるみんなの社会を目指して」が採択され、現在、障害をもつ人の権利と尊厳に関する条約の具体化が進んでいる。 また各国でも、それぞれの国内事情に合わせた障害者政策は早くから行われていたが、国連の動きに呼応して、1990年代中期ごろからその検討や再方向づけが本格的に進められてきている。たとえば、1990年ADA(障害をもつアメリカ人法)や1995年DDA(イギリス障害者差別禁止法)がいち早く制定され世界の注目を浴びてきたし、他にも障害者差別禁止法を制定した国も多くある。あるいは国内の経済事情や雇用状況に照らして、既存の制度の修正という形で対処しようとしている国もある。いずれにしても各国で、障害をもつ人は「荷物」ではなく、共生社会の一員であることが、少なくとも理念上では共通認識となりつつある。 しかし、少し踏み込んで各国の状況を考察してみると、国際的な要請に応じた障害者政策の理念や方向性は確かに示されてきているが、具体的にどのような政策アプローチがどのように有効であるのか、その有効なアプローチを実施するための前提条件とは何か、その前提条件を整えるために講じなければならない措置とは何かなどの対応について、各国特有の事情ともあいまって、政策の成果が十分にはあらわれていないのが実情のようである。また、障害者政策の取り組みに関して各国に温度差がありすぎ、比較的優れた法整備のある国であっても、障害をもつ人の生活が必ずしも安定しているとはいえない国も多く見られる。こうした事実は、国際社会では障害をもつ人の人権や権利の保護を基盤とした理念や価値観が急速に固まりつつある一方で、その具体的な政策の指針や定義が不完全な状態であり、しかもそれが各国の特に経済的・社会的状況を正しく認識した上での提言となっていないことにも一因があるようである。 こうした視点から今回のOECDレポート『図表でみる世界の障害者政策』を捉えるならば、このレポートには注目すべきいくつかのポイントがある。ひとつは、障害者政策の理念を実現する上で絶対に避けて通れない「雇用」と「所得保障」を包括的に捉え、補償指向型の政策と雇用に中心を置いた統合政策を分析し、それぞれの政策の成果を横断的に比較検討している点である。ある意味で相反する2つのパラメターを総合的に取り扱うことで、理念先行型ではなく、現実に根ざした釣り合いの取れた政策の基礎が提供されている。2つ目に、1990年代の各国の状況を反映したデータを中心に組み立てられている点である。1990年代は、上記のように、国連の「基準原則」をベースに各国で障害者政策が大きく展開あるいは転換した重要な時期である。この時期の状況を正しく分析することは、各国が今後の政策のあり方を具体的に検討する上での貴重な作業といえるであろう。3つ目に、そうした客観的なデータ分析の結果から、各国が共通して講じるべき措置についての具体的な提案をしている点である。客観的なデータが指標となるがゆえに、各国とも、それぞれの国内事情に合わせて現在の政策のあり方を検討する具体的な材料となり得るであろう。もうひとつは、社会での共生のため、国・雇用主・障害をもつ人それぞれが義務を果たさなければならないとする「相互義務の文化の導入」を提案している点である。この提案は、障害をもつ人にとって、単に負担を強いるものではなく、共生社会の一員としての礎を提供することになるものである。総じて今回のレポートの提案は、各国の障害者政策を大きく前進させるヒントを多く含んでいるといえる。(後略)