目次
はじめに———二谷貞夫
1 アジア認識と世界史学習———二谷貞夫
1 社会科が面白いとき——今の世界を読み解くとき
2 国際理解を深める世界史学習について
3 日本における国際理解をめざす社会科教育実践——韓国国際理解教育学会第4回研究大会報告
4 日本における台湾認識をめぐって——『認識台湾』歴史篇をどう読むか
5 上海中学における世界史の授業
6 中国・韓国などアジアから見た「一五年戦争」
2 歴史教育の学び合い——日韓の相互理解をめざして
1 東アジアの歴史教育と歴史認識———加藤章 二谷貞夫
——これまでとこれから
2 韓国と日本をつなぐ歴史学と歴史教育———李元淳
3 アジアにおける日本認識と歴史教育
1 韓日につきまとう歴史の影とその克服のための努力———鄭在貞
2 中日の歴史教育と歴史の記憶に関する考察———楊彪
3 中国の歴史科カリキュラムについて———王宏志
4 私の歴史学習と歴史教育の五〇年———孔繁剛
5 中国から見た中国と日本の歴史教育についての比較———于友西
6 情報化・グローバル化時代における韓国の国家アイデンティティと社会科教育の課題———李明煕
7 紀三津の新羅派遣について———金恩淑
8 日韓両国の歴史教育における神話の取り扱い方———朴宰用
——小・中学校を中心にして
4 国際理解と歴史認識・社会認識
1 花岡事件と歴史教育———井門正美
2 自国史教育と世界史教育———土屋武志
3 日本社会の人権課題群を学ぶ———梅野正信
——人権教育としての法教育
4 沖縄「平和の礎」は海を越える———宮薗衛
——平和創造に向けて国家・民族の壁を越える歴史の対話と共生の作法
5 「生と死の教育」のポリティクス———大谷いづみ
——グローバリゼーション・ポストコロニアル・ジェンダー
6 歴史の多元性と歴史への責任———新木武志
7 アジア諸国の歴史教育におけるモンゴル史認識———茨木智志
——その枠組みに焦点を当てて
5 日本における歴史教育実践とアジア認識
1 日韓両国における朝鮮通信使の授業実践について———釜田聡
2 日韓の今日的課題に着目した中学校社会科の授業実践———桑原陽一
3 授業の中のアジア認識———井ノ口貴史
4 アジアにおける「国史」と教科書———岡田敏樹
——近代日韓関係史の授業から
5 海中遺物から見たアジア史教育———田尻信壹
——新安沖沈船の教材化を事例として
6 中国山東省徳州の蘇禄(スールー)国東王墓を訪ねて———三王昌代
7 歴史教育実践を通じた国際理解のあり方———狩野聖子
6 「内なる国際化」とアジア交流
1 日韓の「歴史教育」と「教育交流」———釜田聡
——東アジアの共生をめざす新たな学びを求めて
2 八田與一の墓前祭が取り結ぶ日台交流———鈴木悦子
——総合的な学習における取り組みを考えて
3 新潟県上越地域の「内なる国際化」———鈴木克典
4 韓国との交流———諏訪部寛栄
5 韓国の友人を通して学ぶこと———濁川明男
6 アジアの中の日本史教育をめざして———西澤睦郎
——公開講座実践記録
7 留学生から学んだこと、留学生に語ったこと———佐藤伸雄
——国際理解を深めるために
謝 辞
執筆者一覧
編者紹介
前書きなど
はじめに 二谷 貞夫 韓・中・日三国の相互理解と国際交流をいかに平和共存の観点から増進していくのかという、この、二一世紀における東アジア諸国民共通の課題に対して、私たちは、いかなる歴史認識を築き、国際理解を深めていけばよいのか、これが、本書の全体を貫く視点である。 本書は、東アジアにおける韓国・中国・日本の歴史教育・社会科教育に関する対話であり、直接的にこれまで交流を深めてきた研究者・実践者による歴史教育実践、社会科教育実践に向けての提言・課題提起の一書である。一九八〇年代半ば、日本海(韓国では、東海という)に面した上越という地域にある教員養成大学である上越教育大学を拠点に始めた、韓国や中国との国際交流・連携が機縁となった成果といえる。 執筆くださった中国・韓国の方々は、編者にとって、同学の士であり、中国流にいえば、「老朋友(ラオポンヨウ)」であるが、こうした国際環境のもと、中国や韓国等からの留学生を交え、ゼミや授業等、大学院で学び合い、巣立っていった新進気鋭の研究者・教育実践者に執筆をお願いした。 1「アジア認識と世界史学習」では、アジア認識や世界史学習の課題について、編者が報告し、実践した論考を集めている。世界認識学習を核として、歴史教育・社会科教育・国際理解教育等のあり方を考え、二一世紀の国民のアジア認識と国際理解を深める意義や問題点を探ろうとするものである。編者年来の思いを込めた提案として受けとっていただきたい。 2「歴史教育の学び合い」では、日韓の歴史教育に関する相互理解をめざしての国際学術交流からいかなる教訓を引き出すか、日韓の学術、教育面での交流をリードされてきたソウル大学校名誉教授李元淳氏と上越教育大学名誉教授加藤章氏という、二人の先達からお話しいただいている。二一世紀における、東アジア諸国の歴史教育のあり方に対する提言とともに、お二人の、国境を越えた個人史にも及ぶ、滋味深い言葉あふれるものとなっている。 3「アジアにおける日本認識と歴史教育」では、韓国ならびに中国の歴史教育の現状と課題について、韓国及び中国の研究者に論じていただいた。いずれも、第一線で活躍されている研究者であり、日本の歴史教育に深く関わっての論究もなされている。アジアの中で求められる日本の歴史教育、歴史認識のあり様を考える際に、不可欠な提言集となっている。 4「国際理解と歴史認識・社会認識」と、5「日本における歴史教育実践とアジア認識」では、上越教育大学修士課程修了生を中心に、他にも、編者にかかわりの深い若手研究者、教育実践者による諸論考が並んでいる。ここでは、広くアジアの視点に立って、また、アジアに向けて発信することのできる、課題意識の高い、実証的で実践的な日本の研究成果が数多く収められている。 6「『内なる国際化』とアジア」では、「内なる国際化」をキータームとして、国際交流の方法と実際について考察し、アジアにおける交流の問題点や可能性を見出そうとする論考を集めている。執筆者の多くは、上越教育大学で編者が取り組んできた、国際交流、国際理解教育にかかわって、共に学び、助け合ってきた方々である。ここで示された研究自体が、国際理解の実践そのものであるといえるだろう。 本書が韓・中・日の相互理解を深め、歴史教育・社会科教育・国際理解教育を改善するための材料を提供するものとなるならば、編者としてはこの上もなく幸いであり、執筆してくださった韓国・中国の友人も喜んでくれると思う。読者の皆様の歴史認識・社会認識がさらに豊かなものになることを願ってやまない。(後略)