紹介
日本後紀…続日本紀に続き、桓武天皇延暦十一年(七九二)より淳和天皇天長十年(八。三三)までの編年史承和七年(八四〇)完成。藤原緒嗣等撰。巻数はもともと四十巻であったが、淳和天皇一代が欠け、また他にもところどころ欠があり、今では十巻しか残っていない。その逸文を集めたものに後述の日本逸話があるが、このように欠巻が多いということは、残念なことであり、平安時代初期の研究に大きな障害となっている。しかし続日本紀に比して記事は一段と詳細であり、信頼すべき史料にもとづいて編纂されたものであるだけに、その価値は高い。また政治に忌憚ない評論を加え、人の伝記に長所と短所をあげて批評するなど見のがせない点である。続日本後紀…日本後紀に続き、天長十年(八三三)より嘉祥三年(八五〇)までの仁明天皇一代の編年史。二十巻。藤原良房等撰。貞観十一年(八六九)完成。天皇一代を対象としたのは、形式上の大きな変化であり、中国の皇帝一代の実録から影響をうけたとみて誤りないであろう。この態度は後に日本文徳天皇実録・日本三代実録等と書名に実録を加える先駆となったと思われる。巻首に天皇の漢風諡号をあげているのも新例であり、礼文主義にもとづく儀式関係記事が特色とされる。現在伝わる続日本後紀は錯簡・脱漏・省略が甚しく、完本ということはできないが、日本後紀の欠巻の多いのに比べれば、まだしも幸といわなければならない。日本文徳天皇実録…続日本後紀に続き、嘉祥三年(八五〇)より天安二年(八五八)までの文徳天皇一代の編年史。略して文徳実録という。十巻。藤原基経等撰。元慶三年(八七九)完成。日本の文字を冠するのは日本書紀以下の例にならったのであろうが、天皇の漢風諡号をつけて書名を実録としたのは新しい例である。文徳実録はその特色として、政治法制の記事が簡略であるのに対し、五位以上の人の薨卒の条にはくわしい伝記を記し、その人物評は興味深いものがある。また民間の伝承を多くとり入れている点なども注目すべきことであり、これらは編者の文人的趣好にもとづくものであろう。
目次
日本後紀(皇統彌照天皇(桓武天皇)
天推國高彦天皇(平城天皇)
太上天皇(嵯峨天皇)
後太上天皇(淳和天皇))
續日本後紀
日本文徳天皇實録