目次
序 章 越中八尾とおわら風の盆──〈うたの町〉とはどこか
1 〈うたの町〉という空間
2 ナショナル・エリートの構想としての民謡と近代
3 民間における近代的民謡の出現
4 研究の目的と方法
5 本書の構成
第1章 文化政策の転換──『俚謡集』成立過程をたどる
1 明治政府の文化統制
2 童話伝説俗謡等の全国調査
3 通俗教育と文芸委員会
4 うたの〈方言〉化
5 言語空間の再編成
第2章 〈豊年踊〉の誕生──共進会のおわらと八尾町のおわら
1 おわらの古層──不定形の練り廻り習俗と二百十日
2 〈豊年踊〉
3 富山県主催一府八県連合共進会
4 転換装置としての共進会──裏日本からの脱却を目指して
5 臨海地域の開発と「富山踊」における海のイメージ
6 〈特産品〉としての地域芸能
7 博覧会的空間への親和と反発
8 手がかりとしての「かっぽれ」
9 「群れる」と「見せる」のあいだ──来たるべき時代の居場所を求めて
第3章 演唱空間の開拓──全国民謡大会開催をめぐって
1 八尾町のおわら、東京へ
2 ホールへの視座
3 安来節の興行路線──寄席から劇場へ
4 追分節の東京進出
5 後藤桃水による「準備工作」──追分節から民謡の普及ヘ
6 錦輝館
7 和強楽堂
8 神田の青年会館と全国民謡大会
9 民謡の演唱空間を拓く
第4章 歌詞創作と近代詩運動──新たな郷土の姿
1 富山における近代詩運動の興隆
2 近代詩運動接触以前のおわらの文芸的側面
3 『おわらぶし』──詩の擬態としての「民謡短章」
4 小谷惠太郎──近代詩運動とおわらの接点
5 「民謡おわらの街」へ
6 美しき〈辺境〉の入口
第5章 〈新踊〉の創造──郷土芸術とジェンダー
1 昭和に生まれた〈新踊〉
2 〈女踊〉──「すい」な情緒の実現と「見せる」身体性の前景化
3 〈男踊〉──郷土と青年
4 興行路線とは一線を画す
5 越中八尾民謡おわら保存会女児部
6 童謡舞踊を郷土芸術の糧に
7 空間のジェンダー的再編成
第6章 おわらの総合プロデュース──越中八尾民謡おわら保存会の活動
1 保存会ことはじめ
2 創設にたずさわった人びと
3 町外の有力者や文化人の参加
4 組織構成にみる特質と構想
5 歌詞募集
6 「民謡おわらの街」のイメージ創出と空間演出
7 夢の事業計画と戦争の影
8 おわら情緒の浸透を目指して
第7章 戦時下のおわら──慰問から地方文化運動へ
1 「明暗の境地」
2 歌詞創作・募集事業の変化
3 翁久允──〈うたの町〉と文士をとりもつ仲介者
4 おわら歌詞の選者として──「情緒」と「世界的田舎者」
5 さらなる高尚化と認知の追求
6 地方文化運動
7 〈うたの町〉の強靱さ
終 章 おわら風の盆の半世紀に耳を澄ます
文献および資料
あとがき
人名・事項索引