目次
日本語版によせて
謝辞
第1章 天国は待てない
第二次世界大戦後の一九八〇年までの時期と、そこから今日にいたる時期をそれぞれ取り仕切った二つのアメリカ帝国は、途上国世界に劇的といってよいほど異なった成長率をもたらした。前者は黄金時代、後者は暗黒時代であった。
第2章 太陽は沈まず、賃金が上がらない場所
戦前の植民地帝国は文明の普及を声高に叫んだが、主に日本がたどった軌道に乗って、たった一二の後発途上国だけが製造業の経験を獲得したにすぎない。
第3章 地上と天国の交換
第一のアメリカ帝国においては、共産主義と無縁であるかぎり、開発途上国は独自の発展経路を進むことを許されていた。
第4章 援助という麻薬
対外援助が成長の梃子として失敗したのは、それが紐付きだったからだ(アメリカ議会は、対外援助の八〇パーセントをアメリカ製品の購入に当てなければならないと法令で定めていた)。そして援助が汚職にまみれ(貧しい国にはそれ以外にカネを稼ぐ手段がなかった)、援助にたいする理解も間違っていたからである。つまり、職を創出する組織的な投資が存在しないとすれば、いかなる財も教育への援助になどならない。
第5章 神の贈り物
第三世界の独立の父たちは、いくつかの大きなこと、つまり「自由貿易帝国主義」とディーセント・ワーク〔適正な職〕にたいする国民大衆の支持について理解していた。彼らは、輸入品の国内生産への代替を促進するよう独自の諸政策を考え出したのである。
第6章 月光
大部分の発展途上世界を近代へと導く役割を担った実験的な諸政策の基礎は、「パフォーマンス基準」つまり国家介入の効率性を高める一連の規範や制度にあった。
第7章 ディエン・ビエン・フー――知は永遠なり
第一のアメリカ帝国がヴェトナムにおいて滅亡したのは、経験豊富な途上国が精通していた情報、ノウハウ、そして実験をもたなかったからだ。
第8章 麦わらかごの地獄に向かって
戦争、石油、対日競争、そして影響力を拡大するウォール街によって、自由市場にたいする揺るぎなき信念とともに第二のアメリカ帝国は権力の座についた。
第9章 アメリカによる宣告(ファトワー)
開発にかんする考え方は、革新的なものからイデオロギー的なものに変化した。「ワシントン・コンセンサス」は途上国にできることとできないことを決定した。アジアだけが独自の道を行き、世界を驚かせた。
第10章 遅れたものは放っておけ
国家間と諸国内の所得格差は拡大した。所得の公平な分配は、開発を支えるもっとも重要な要因のひとつであると認識されるようになった。しかし、自由放任は救済には無力であった。
第11章 巨大な火の玉
巨大な火の玉が現われた。それは中国、インド、そして他の覚醒しつつある巨人たちである。それらの巨人たちが繁栄すれば、第二のアメリカ帝国はもはや絶対的権力を享受することはないだろう。第二のアメリカは適応できるのだろうか?
原註および訳註
訳者あとがき
引用文献一覧
索引