紹介
中国が相次いで公表した「一帯一路」「中国製造2025」を自国の経済覇権への挑戦と見なし、その目をつぶすべく動いたアメリカ。この構図は、かつて1980年代に起きた日米経済摩擦、構造協議を彷彿させるものです。米中の摩擦は貿易赤字削減で解決する一過性のものではなく、アメリカが中国を押さえ込んだと納得するまで継続する経済戦争のステージに入っているのです。その本丸となっているのが、技術です。ファーウエイ問題はその典型例です。
本書は、ハイテク摩擦を中心に、米中関係の現状と展望、日本への影響などに関して分析を行います。経済の相互依存関係が非常に進んでいるのに米中では対立が激化しているのか、米国の制裁は中国の半導体ビジネスにどのような影響を与えているのか、経済安全保障のルール作りという観点が日本には不可欠、サイバー空間の覇権争いのカギを握るのは、誰が仕掛けているのかを突き止める「アトリビーション能力」ですが、日本には欠けている――といった様々な論点を提供します。
目次
第1章「新しい冷戦」のコアの論点――技術覇権と技術管理(宮本雄二)
第2章 米国の対中国政策――関与・支援から競争・分離へ(佐橋亮)
第3章 米国の変質と対中政策の転換――強硬論を後押しする民意(小竹洋之)
第4章 半導体にみる中国の光と影――供給網が示すハイテク強国への難路(山田周平)
第5章 経済相互依存は米中対立を抑止できないか(関山健)
第6章 米中のサイバー空間の覇権争い――サプライチェーン・リスクと海底ケーブル(土屋大洋)
第7章 揺れる欧州の対中関係――実利優先から新たな距離感模索へ(刀祢館久雄)
第8章 米中「冷戦」下の日本のルール形成戦略――米政策への対応と対中アプローチ(國分俊史)
終 章 日本に求められる「賢い投資」と関与――技術革新とルール形成外交の推進(伊集院敦)