紹介
生活を書く、それがエスノグラフィの特徴です。そして、もっとも良質なエスノグラフィの成果は、 苦しみとともに生きる人びとが直面している世界を表し出すところに宿るものです。もともと人類学で発展したこの手法は、シカゴ学派を拠点に、 社会学の分野でも広がっていきました。本書では、5つのキーワードに沿って、そのおもしろさを解説していきます。予備知識はいりません。ぜひ、その魅力を体感してください。
【担当編集のおすすめポイント】
・実例に裏打ちされた思考のプロセスが「話し書き」されたものを読むことで、エスノグラフィとは何かを体感することができます。
・INAさんによる20点の挿画が、イメージを広げるためのジャンプ台となってくれます。
・調査の仕方から本の読み方、コラムにある卒論紹介まで、具体的で、かゆいところに手が届いています。
・豊富な読書案内が、次に読むべき本を教えてくれます。
・小説、日記、エッセイなど、ものを書くこと一般に関心があるひとにも応用できる内容です。
目次
はじめに
エスノグラフィとは/本書の著者について/エスノグラフィの核心/本書のスタイル/あるひとつの入門書
第1章 エスノグラフィを体感する
通夜と賭けトランプ/センス・オブ・ワンダー/海の少年/場面と主題/二重写しに見る/フィールド調査の十戒/フィールドの人びととの関係のあり方/調査の進め方/社会学的に観察する/フィールド調査のねらい/本章のまとめ
コラム1 サイクリストの独自世界
第2章 フィールドに学ぶ
経験科学/フィールド科学/雪かきの現場から/モノグラフ/可量と不可量/不可量を書く/ボクサーの減量の事例/人びとの経験に迫る/身体でわかる/フィールドへのエントリー/漁民から見る/人びとの対峙する世界/本章のまとめ
コラム2 ペットによる社会的影響とその効果
第3章 生活を書く
シカゴ学派/生活を見る眼/アフリカの毒/同時代の人びとへ/地続きの人類学/生活実践へ/日常生活批判/差別の日常/「いま―ここ」の注視/「人びとの方法」への着目/遠近法的アプローチ/まひるのほし/本章のまとめ
コラム3 遊びとしての公的空間での眠り
第4章 時間に参与する
生活論/生活を読み取る/生活環境主義/「森林保護」による生活破壊/時間へ/ボクサーの「典型的な一日」/時間的単位を知る/周期性とリズム/時間をめぐる困難/生が「生活」になるとき/共に活動すること/私の失敗談/本章のまとめ
コラム4 手話サークルから見るろうコミュニティとコロナウイルス
第5章 対比的に読む
図書館の歩き方/探索することの魅力/「赤青」の色鉛筆/読みの体感/エスノグラフィを読む/裏舞台だけを読まない/着眼点の移植/対比的に発見する/データをつくる/本章のまとめ
コラム5 リスクから見るサブカルチャー
第6章 事例を通して説明する
フィリピンとの出会い/繰り返し通うこと/対比という方法/事例を通した説明/論理の解明へ/羅生門的手法/客観性から客観化へ/ミクロ・マクロ問題/バンコクのバイクタクシー/エスノグラフィとルポルタージュ/本章のまとめ
コラム6 部活動におけるケガの社会学
おわりに――次の一歩へ
学ぶこと/受苦を生きる/楽しみと苦しみ
あとがき――読書案内をかねて
参考文献
索引