目次
プロローグ 3
発刊に寄せて 生を紡ぐ高齢者とランニング 6
龍谷大学名誉教授 渡部憲一
第1章 思想編
なぜ老いても走るのですか 16/走るとは自然なり 19/老人も子どものように感じて走る 21/自由に走れ 24/走りは考える時間です 26/走って健康になりました 28/走りは野生のスキル!30/弱者が挑戦する走り 33/走って芭蕉になる 36/三途の川を走って渡れ 39
第2章 身体編
高齢者ランニングは足から脳への体のつながり
1)走る足 42
歩と走のつながり/足と脚のつながり/裸足で走れ
2)酸素はランニングの鍵 48
3)ランニング・フィットネス 51
4)老いても走る体力とは 54
5)加齢と筋肉と神経感覚 57
有酸素機能/筋力と動き
6)気分良く走れ……メンタルフィットネス 60
7)走る脳 63
動物脳から動物走/情動脳から感性走/理知脳から理性走
8)マラソン寿命に挑戦 66
第3章 実践編
いかに走るか?高齢者のランニング実践プログラム
1)走る前にふさわしい心身かを知る 70
ボディチェック/健康診断/ご自分の体に聞いてごらんなさい
2)高齢者のランニング方法と進め方 75
A.基礎トレーニング
【感覚トレーニング法……1日の日内リズムを正す】76
朝の目覚めづくり/外に出て光を浴び、風に触れ、ゆっくり歩く/
歩きながら深呼吸/昼、夕方は気晴らし感覚つくり/日内リズム
【体を動かす……気晴らし・歩力・脳力アップ運動】80
深呼吸/走る前は腹式呼吸・口呼吸/走った後は肩・胸呼吸・鼻呼吸
【ストレッチと筋力運動】 82
「壁を使った体操」呼吸・柔軟性・筋力/芝・床での体操
【生活歩トレーニング】 86
あしつくりは生活スタイルから/生活歩トレーニング
B.各種ランニング方法と進め方
【速歩】88
速歩習得法
【ジョギング……歩き走り】92
【素足走】 94
【ゆっくり素足走】95
【ゆっくり快適走】97
ゆっくり走のチェックとコツ
【ゆっくり持続走……目標:30分】99
30分走対策
【LSDゆっくり長距離走……目標:60分~120分】101
LSDをマスターするポイント/快適走
【起伏走】104
上り坂走/下り坂走/起伏走
【トレイルランニング】106
トレイルランニングの進め方
【マラニック】108
マラニックの進め方
【ランニングの代わり:自転車、水泳、登山、クロスカントリースキー】111
自転車/水泳/登山/冬は縄跳びとクロスカントリースキー
【休養トレーニング】114
大会、あるいは激しいランニングをした翌日のトレーニング法
第4章 応用編
中高年者ランニング・プログラムをつくる
1)ランニング・プログラムの作成法 119
プログラムの原則
2)中高年・生涯走るためのプログラム 120
あなたの現在のランニングレベルは?/中高年者の走歴・スタミナレベル段階トレーニング/各レベル別の週間基本トレーニング
3)四季のランニング?プログラムと走り方 123
四季のランニング・プログラム
4)春は感覚の季節 125
春こそゆっくり走から快適走/春にふさわしいランニング・プログラム
5)夏の涼しさを求めて 127
暑さ対策/モーニングラン/自然走
6)走り込みの秋 130
秋は中高年の季節/いつでも走る/やり過ぎ症候群
7)冬、暖かさを求めて走る 133
外に出る前に部屋で体を暖める/風を避けてゆっくり走で体を暖める/暖かい時間に走る/雪でも走る/走り終わったら……
8)1日をいかに走るか 136
ランニングの進め方の基本/朝のランニング……目覚め走り/朝ランニングの進め方/午前中のランニング/昼のランニング/午後のランニング/夕方のランニング/夜のランニング/休日のランニング
9)中高年者のランニングスキル・フォーム 141
自然走のスキル/呼吸は体のリズムで吐く/視線でフォームが変わる/ゆっくり走はピッチで走る
10)正しく美しいフォームはウォーキングから 152
立つ/歩きはランニングのフォームを正しく美しくする/美しいフォームで歩くポイント
第5章 ランニング大会編
ランニング大会に出てみたい…… 156
アダプテッドランニング大会/大会参加を申し込む前に
1)レベル別大会への道 159
2)中高年者の種目別大会目標プログラム 160
5㎞/10㎞/長く走るコツ/ハーフマラソン(21㎞)/マラニック大会/フルマラソン
3)種目別ランニングプログラム……3ヶ月プログラム 169
【走り込み期……大会前3ヶ月~1ヶ月半前】171
走り込みのコツ/トレーニングプログラム
【ペース養成期……いかに自己のペースをつくるか】172
5㎞、10㎞、ハーフマラソンのペースづくり/マラニックのペースづくり/フルマラソンのペースづくり/ペースのつくり方
【調整期……体調つくり】176
心身をベストコンデイショにするために/大会の前日・当日の過ごし方
4)大会後のアフターケア 179
ゴール後の疲労回復法
第6章 ランニングサポート編
走る生活
1)食事……野生の足には自然食 183
2)食と排泄 185
走るための食事
3)足とシューズ 187
足感覚がシューズを決める/いつもあし(足+脚)に触れ、語り合う/痛むときは他の全身運動でカバーする
4)ランナーの体と天候 190
5)ランニングの三つの対話 192
6)走る心は書くこと 194
第7章 対談
それぞれの旅 山西哲郎×山本光伸
視野を広げる 200/練習方法も温故知新 202/LSDの効果 206/どうやって練習するか 209/裸足のすすめ 211/ランニングと仲間 214/三途の川を走って渡る 217/明日死ぬと思っても、今日走る 220/なぜ、毎日走るのか? 222/いつ、走るか? 226/ランニングで健康チェック 230/ランニングと自己責任 234/感性を研ぎ澄ます 236/ランニングは人生そのもの 238
終章 走者は永遠に
エピローグ 242
自由走から創造/高齢の走者の求めること/考える走る道/表現する走る道/悟る走る道
あとがき 248
前書きなど
プロローグ
―ランニングのおかげで、私は年齢との闘いをしないですんだ。走っていると私は、老けこむ必要がないからだ。 ジョージ・シーハン
動物も人間も大地を走る。動物は四足で走り、われらは二足で走る。互いに生命を育み、さらに生きようと走る。走って成長し、ときには健康を害しても、自らの力で再生しようと努める。時代がどこまで進もうと、生活のなかで走れば、元気や幸せや生きがいを感じ、やがて人生の道をつくることができよう。
僕は「なぜ生きるのか、いかに生きるのか」を問いながら、古希を過ぎるまで人生という道を歩んできたように思います。しかし、その道を振り返ってみたとき、もう一つの道があったことに気づいたのです。それは路上の人となって走ってきた道であり、これらの二つの道は両輪となって今日までハーモニーのようになって僕の生きる力をつくってきたのだと思えるようになったのです。
僕のランニングヒストリーは「神戸の空襲のとき、お前は防空壕に入ればお菓子がもらえると思って走って入ったのよ」の母の話で始まります。そして、終戦後、農家で育った僕は、友達と野山で遊び戯れ、走りまわっていました。
意識的に走り始めたのは中学生のとき。田畑の仕事の手伝いが終わってから一人で走っているうちに、沈む夕陽の美しさに感動して毎日走るようになりました。3年で中学駅伝の選手になり、高校でも駅伝競走に出場。大学では、箱根駅伝とマラソン、そして、学生を指導しながら自分も走る陸上競技生活が続きました。
1970年のある日、僕の前に70歳をとっくに過ぎた老人が現われ、「一緒に走らせてくれんかね」と頼んできました。それがきっかけで、学生の部活指導とは別に、中高年者対象のランニング教室を立ち上げました
それ以来40年、日常から抜け出した時間を自由な心で、それも4、5年のスパンではなく、命果てるまで走り続けるだろうと思える人たちと過ごしながら、ランニング生活を続けています。
そうするうちに、高齢者ランナーとは、人生をしょぼくれて生きる年寄りではなく、夕映えの如く老いてますます愉しげに生きる人たちに見えてきたのです。
還暦を過ぎたとき僕は、「これが人生の折り返し地点だ。これから若返るぞ」と、思っていました。しかし、70歳の古希を迎えると、「命はもう10年くらいしか残っていないのではないか」と、追い込まれたような気分になってしまったのです。それは、元気に田圃で働いていた僕の祖父も、いつまでも若き選手と走っていた尊敬する走る哲学者パーシー・セラティも、80歳を過ぎて急に亡くなってしまったからです。これからの10年は、わが魂を揺さぶるような走りを求めていかなくてはなりません。
そこで、1970年代から、若き人たちよりいち早くからランニング人生を送っている高齢走者のヒストリーを紐解きながら、個人も仲間も共有できる中高年者の走る本をつくってみたくてペンを走らせ始めたしだいです。
―今日は死ぬと思って生きなさい。明日は永遠に
生きると思って学びなさい。
マハトマ・ガンジー