紹介
本書では、マインドフルネスあるいはウェルビーイングの「現在・過去・未来」そして「洋の東西」を自在に往来して、いま“マインドフルネス隆盛”という状況をめぐって、世界で、日本で、何が起こっているか? 私たちはどこに向かっていて、この先なにが求められてくるのか? を、社会のなか、生活のなかでの実際例を通して多角的に見つめます。 本書の白眉のひとつは、仏教において「悟り」を目指す入口としての瞑想であったマインドフルネスが「いかにして西洋に受け容れられていったのか?」「どのような変遷があって、メンタル・コンディションの調整として、また心のケアの一端として、使われるようになったのか?」を、宗教・思想・社会といった面から掘り下げる試み。 もうひとつの本書の特徴は、アメリカ発信のマインドフルネス興隆にはどのような特色があったのか? Googleを初めとした企業での取り組みはどんな方向に進んだのか? といった“Mindfullness in America”を検証する斬り込みです。加えて、“日本で身近な活動として試みられている実例”――脳科学や医療・教育、“科学技術との交差点”ほか、多様な最前線を追う視点も盛り込みます。全篇をとおして、これまでの手放しの“マインドフルネス礼賛”だった時代を振り返るなかで、「瞑想難民」の問題、心理ケアにおける難しい側面などに躊躇うことなく踏み込み、「誇大広告」への警鐘を鳴らすことを、本書で語り合う「マインドフルネス賢人」たちは忘れません。 あらゆる領域から、その道の「賢人」が語りに語る《マインドフルネス》オールスター・ラウンドテーブル!
目次
序 章 マインドフルネスの進化と真価
――臨床パラダイムの知見から (大谷 彰)
気づきとコンパッション
Part 1 セルフケアと瞑想
chapter 1 心理カウンセリングのなかで (佐藤 豪)
chapter 2 ピュア・マインドフルネスの「目的地」 (魚川祐司)
chapter 3 ピュア・マインドフルネスと瞑想 (プラユキ・ナラテボー)
Part 2 悟りの道への入口
chapter 4 光明へ――マインドフルネスを超えて (永沢 哲)
chapter 5 無心のマインドフルネスへ
――意識の自閉的世界を超えて (藤田一照)
Part 3 人類思想のなかで
chapter 6 仏教と西洋の出会い小史
――仏教西漸とマインドフルネス(村本詔司)
chapter 7 「永遠の哲学」とマインドフルネス (中川吉晴)
ウェルビーイング
Part 1 社会のなかでの応用
chapter 1 教育のなかで生きるマインドフルネス
――スタンフォード大学におけるハートフルネス (S. マーフィ重松)
chapter 2 Whole Person Careとマインドフルネス (恒藤 暁)
chapter 3 医療者の気づきを深める試み
――ナラティブ・メディスンがもたらすもの (栗原幸江)
chapter 4 ファシリテーションとマインドフルネス (中野民夫)
Part 2 科学技術との出会い
chapter 5 マインドフルネス状態の推定
――コンピューティングによる試み (廣安知之/日和 悟)
chapter 6 瞑想の神経科学と体験的理解の重要性 (藤野正寛)
chapter 7 パフォーマンス可視化の試み
――働き方改革の具体例 (井上一鷹)
終 章 象とはなんだったのか
――そして象はどこへ行くのか (飯塚まり)