紹介
「俗悪趣味と死の融合」に訣別せよ
アメリカを代表する評論誌『ニューヨーク・レビュー』の編集長、イアン・ブルマ。ナチスによって父親を失いかけた過去をもつ著者が、ホロコースト・太平洋戦争を主題にした芸術から、福島原発事故後の報道、トランプの芸風までを射程に、歴史的真実に向き合う術を提示する。[日本版オリジナル編集]
この世には、作られたのではない確かな「真実」が存在し、集団受難には確かな「加害者」と「被害者」が存在する。真実とフィクションの間に違いがないとか、またはすべての文章がフィクションであるというふりをするのは、事実と虚偽を区別する能力を麻痺させることに繫がる。それはプリーモ・レーヴィや、過去に苦しんだすべての人々への、最大の裏切りではなかろうか。――本文より
目次
序 文
Ⅰ 戦争、その歴史と記憶
被害者意識、その喜びと危険性
真珠湾に歓喜して
帝国のための自決
占領下のパリ―無情で甘い生活
ドイツの破壊
Ⅱ 芸術と映画
イーストウッドの戦争
魅惑のナルシシズム―レニ・リーフェンシュタール
愚か者、臆病者、それとも犯罪者?
日本―美しく、野蛮で、無言の国
インドネシアの凶暴な謎
東京の執着
Ⅲ 政治と旅
ル・カレのもう一つの冷戦
イスラエルとパレスチナ―夢を奪われて
日本の悲劇
ヨーロッパの首都で
アジア・ワールド
英米秩序の終焉
訳者解説 堀田江理