紹介
エネルギー・資源・環境といった問題が深刻化し,人間のあり方が問われている。こうした人間の営みを客観的にみるためにも,137億年に及ぶ宇宙の歴史や地球と生命の進化の歴史をたどり,現在の地球の姿を見つめ直すことが,きわめて大事である。本書は,元素の起源から地球,生命の誕生を経て現在の環境問題にいたる時間スケールを縦軸に,コア,マントル,地殻,大気・水圏,惑星間空間,銀河系,宇宙といった空間スケールを横軸においた二次元的な構想のもとに,地球化学の扱う幅広いテーマの中で,起源と進化の物語を解りやすく説明する。また関連する同位体地球化学,放射年代測定法,分光法などの化学種解析法など最先端の機器分析に基づく新しい宇宙地球化学の進展を十分に整理して解説する。また著者らが専門とする軽元素の安定同位体比や元素の化学的性質からの考察などでは,これまでの教科書にない斬新な記述を加えた。これらの内容から,地球化学の面白さや地球を化学的にみることの重要さを汲み取り,読者が新たな地球観や文明観をもって頂ければ,著者らにとって望外の喜びである。
目次
第1部 宇宙と地球の進化と現在の地球の姿<br>1章 膨張する宇宙と軽元素の起源<br>2章 太陽系の化学と重元素合成<br>3章 太陽系の形成と隕石の年代学<br>4章 地球の誕生とその化学組成<br>5章 固体地球の脱ガスと大気と海洋の起源<br>6章 大気と海洋の進化と生命の起源<br>7章 二酸化炭素濃度と気候変化<br>8章 分子地球化学:元素の性質に基づく地球進化や環境問題の考察<br><br>第2部 宇宙地球化学の基礎<br>9章 宇宙地球化学の基礎知識<br>10章 化学熱力学の基礎と地球表層での化学反応