芦塚さんの書評 2024/02/01 5いいね!
1956年に出版された本ということもあり,正直,文体的には少し読みにくく,さすがに"古さ"を感じてしまいました──が,ところがです。内容的にはまったく"古さ"を感じませんでした。というより,現代のネット社会が抱える『愛』の問題の本質をズバリ言い当てているような気がして,非常に驚きました。
" 集中力の習得においていちばん重要なステップは,本も読まず,ラジオも聴かず,……酒も飲まずに,ひとりでじっとしていられるようになることだ。……自分の足で立てないという理由で他人にしがみつくとしたら,……ふたりの関係は愛の関係ではない。……ひとりでいられる能力こそ,愛する能力の前提条件なのだ。"
この本にはさらに," 現代人は,なんでもすばやくやらないと,何かを──時間を──無駄にしているような気になる。ところが,そうやって稼いだ時間で何をしたらよいかわからず,ただ暇をつぶすことしかできない。" というくだりもあり,ドキッとさせられました。
こうしてスマホ依存になった現在の"現代人"たちは,「スマホにしがみついていないと生きていけず,自分の足で立つことができない。自立できていない人間が,人を愛することなどできない」──そういうことなのかもしれません。思い当たる節があります。
暇をつぶしている暇があったら,たまには『愛』について考えてみようと思います。深く心に突き刺さる一冊でした──。
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