紹介
日本中に散らばる多彩な西行伝承は
私たちに何を伝えるのか
時代やジャンルを超えて愛される
中世の歌人・西行──
その姿は時代を経て多様に変化してきた。
昔話や伝説、歌、民謡など、
大衆の声により伝わってきた
西行伝承を検証し、伝承地を訪ね、
伝承から西行像を形作ってきた
大衆文化の性質を探る。
渾身の一冊!
【本書の中の西行は、「遊行聖西行」や「旅僧の西行」「俗聖西行」「職人サイギョウ」などと、さまざまな呼称や風貌を持って登場するが、もちろんそれらを最大公約数的に合成しても、けっして歴史的西行に近づくことはない。確かに民間伝承の西行の淵源は、実在の歌人西行に始まるものであるが、そこから大きく逸脱し、それぞれ独自のキャラクターと存在様式を示している。いったい何が西行を変えてしまったのか、変化の原動力に何が関わったのか、本書のテーマはここにある。
...「はじめに」より】
目次
はしがき
序論 「聖西行」の系譜
はじめに
一 『西行物語』『撰集抄』の旅
二 聖の発生と展開
三 近世の聖の展開
四 民間の「聖西行」の諸相
おわりに
Ⅰ 地域・伝説の西行
■猪苗代の西行戻り橋
はじめに
一 「西行戻り橋」の伝承
二 小平潟の兼載伝説
三 『小平潟天神縁起』と天神信仰
四 兼載と道真の誕生譚
五 「西行戻り橋」の形成と背景
おわりに
■阿蘇小国の西行伝承
一 片田観音堂の西行伝説
二 瑞龍寺と北里氏
三 観音堂と遊行聖四熊本の西行伝説
■吉崎御坊の西行伝承
はじめに
一 「汐越の松」と芭蕉・梨一
二 「汐越の松」の歌枕化
三 伝承歌から西行歌、蓮如詠へ
四 蓮如と「塩越の松」
おわりに
Ⅱ 昔話・歌謡の西行
■「西行昔話」と西行咄
はじめに
一 「西行昔話」の話型と分類
二 「西行昔話」の文献一覧
三 狂歌咄から「西行昔話」へ
四 咄本における西行咄と昔話
おわりに
■西行問答歌と「西行昔話」
はじめに
一 西行の「織抒問答」
二 昔話の「西行と女」
三 西行の「お茶問答」
四 西行と「熱田問答」
おわりに
■西行問答歌と民間歌謡
はじめに
一 「遊び妙」との問答歌
二 西行問答歌―星の数型―
三 西行問答歌―椿問答歌―
四 問答歌と民間歌謡
五 民間歌謡の掛け合い歌
おわりに
Ⅲ 旅と漂泊の西行
■西行の旅と西行伝説の旅
はじめに
一 修験の旅
二 巡礼の旅
三 歌枕の旅
四 生活の旅
おわりに
■芭蕉における旅と西行伝承
一 西行と芭蕉と伝統
二 芭蕉の西行歌受容
三 『奥の細道』の西行伝承歌
四 芭蕉の旅と西行伝承歌
■西行とサイギョウの伝承
一 西行伝承概観
二 西行と富士の伝承歌
三 波立寺の西行
四 昔話「十五夜の月」
五 西行とサイギョウ
Ⅳ 信仰・民俗の西行
■「西行泡子塚」と赤子塚
はじめに
一 説話、文学に見える泡子の話
二 世間話、伝説の泡子歌
三 「西行泡子塚」の成立
四 「泡子塚」「泡子地蔵」の背景
五 地蔵信仰から泡子塚へ
六 赤子塚と「茶碗塚地蔵」
おわりに
■西行と親鸞の伝説
一 宿を借りる西行
二 「西行と女」から親鸞伝説へ
三 越後の親鸞伝説
四 親鸞から西行伝説へ
■「田畑村西行庵」の顚末
はじめに
一 「田畑村西行庵」の西行木像
二 「七福神巡り」と「江戸西国三十三所」
三 西行庵「庭上」の見世物細工
四 文化/自然としての「西行庵」
おわりに―江戸のフォークロリズム
終論 西行伝承の研究史
はじめに
一 西行の伝説、昔話への研究
二 西行歌と西行崇敬化
三 「西行伝承研究会」から「西行学会」へ
おわりに
西行伝承の研究史年表
初出一覧
あとがき
索引【和歌・俳句】【語句・書名・人名】