紹介
「女房(にょうぼう)」「召人(めしうと)」
「後見(うしろみ)」「乳母(めのと)」………。
侍女(じじょ)の様々な表現から、背後にある時代の文化と社会を理解する。
平安朝の物語において、侍女はどのように表現されているのか。
その表現に着目することで、どのような物語の解釈を提示できるのかを探る書。
【物語における侍女への着目は、登場場面の少ない「脇役」や「端役」へ着目することと決して同義ではない。作中の表現、文脈によりそって侍女をとりあげることは、物語のより穏当な解釈や、その背後にある平安時代の文化や社会の理解へとつながると考える。本書の物語の侍女に関する試みが、一点でもそうした解釈や理解の提示となっていることを願っている。】……本書「序」より
目次
凡例
序 平安物語における侍女
第I部 侍女の諸相と表現の差異
第一章 『源氏物語』における光源氏と侍女の関係
―「女房」「御達」「女ばら」の表現の差異―
第二章 「大人」と「童」との境界
―『落窪物語』「あこき」を中心に―
第三章 〈召人〉と『和泉式部日記(物語)』の女の差異
第II部 侍女による「後見」
第一章 平安文学における侍女の「後見」の立場と展開
第二章 紫の上幼少期における少納言の乳母の「後見」
―『落窪物語』からの影響と『源氏物語』の独自性―
第三章 『狭衣物語』における侍女の変容
―「後見」の比較を通じて―
第III部 乳母と家族との関係性
第一章 物語における宮中の乳母
―『うつほ物語』今上帝の乳母を中心に―
第二章 『源氏物語』における乳母一族の系譜
―大弐の乳母、惟光、藤典侍から六の君へ―
第三章 母親と乳母の関係
―浮舟の母・中将の君と浮舟の乳母―
第IV部 乳母子の役割と活躍
第一章 平安時代における乳母子の語義
―『延喜式』・古辞書・『源氏物語』の分析から―
第二章 『源氏物語』における夕顔の乳母子たち
―系図の乱れと乳母子の役割について―
第三章 宇治十帖の二人の右近
―同名の侍女の近侍による錯覚―
終章 宇治十帖における弁の君の立場
―柏木の「乳母子」/大君・中の君の「後見」として―
初出一覧
あとがき
索引