目次
はしがき(小川靖彦)
講師紹介(小川靖彦)
*
Ⅰ はじめに
『万葉集』の書記の多様性
「表音文字」と「表語文字」という視点
Ⅱ 世界の文字史の伝統的な史観における〈表語〉と〈表音〉の関係
〈表語〉から〈表音〉への〈進化〉という捉え方
アルファベット=〈文明〉という神話
〝表語から表音へ〟という図式では説明できない
Ⅲ 表音への〈進化〉とその〈干渉〉という概念が日本に当てはめられる
ディリンジャーの文字史観の限界
「東洋史における悲劇」
当たり前のものでない「言文一致」
「偉大な勝利」として複数のリテラシーの併存
英語のスペリングの表語性
文字制度をどのように捉えるべきか
Ⅳ 『万葉集』と世界の文字史
表音文字主体の書記の少ない『万葉集』
表語文字主体から表音文字主体へという一九七〇〜八〇年代の定説
歌木簡の発見によって覆った定説
さまざまな要因によって選択された表語文字書記・表音文字書記
表音文字主体書記の多様性
Ⅴ おわりに
表語文字の排除という問題
『万葉集』から世界の文字史へ
講演を聴いて―コメントとレスポンス
●コメント(小川靖彦)
講演から想起されたこと―日本語の文字の諸相
研究史における講演の位置
三つの質問
●レスポンス(ディヴィッド・ルーリー)
西洋と東洋では反対方向となる文字の神話化
書く行為と読む行為のさまざまなバランス
文字を使ったパフォーマンス
●会場からの質問への回答
⑴
①韓国・朝鮮語のハングルのように制定者が明らかな場合には文字は神話化しないのか
②現代韓国語が漢字でなく、表音文字のハングルを使っていることをどう考えるか
⑵ 資料①ⓐⓑのように同じ歌が別の巻に重複して掲載されているのは、編集ミスによるものか
⑶ 『万葉集』の表音文字主体の歌と表語文字主体の歌とでは、英訳する際に違いがあるのか
○青山学院大学文学部日本文学科主催招聘講演「世界の文字史と『万葉集』」について(山下喜代)