紹介
近代日本文学の形成にフランス文学はどんな役割を果たしたか。
ヴィヨン、ランボー、ネルヴァル。
フランスの三詩人を坩堝として、太宰治、小林秀雄、中原中也、
石川淳、富永太郎、芥川龍之介、井伏鱒二らが行った「言葉の錬金術」に立ち会う書。
【 フランソワ・ヴィヨン。中世の詩人でありながら、ボードレールやヴェルレーヌと匹敵する扱いを受け、富永太郎や、芥川龍之介、井伏鱒二が、ヴィヨンを核とする言葉を紡いだ。
アルチュール・ランボー。この魅力的な詩人は、小林秀雄を批評家にしただけではなく、中原中也を詩人にしたともいえる。小林と中原の言葉は、外国文学が近代日本文学を豊かにする上で果たした大きな役割を、鮮やかに描き出す。
ジェラール・ド・ネルヴァル。狂詩人というレッテルを貼られることの多いネルヴァルは、日本ではあまり読まれなかった。しかし、中原中也による解説と翻訳は、中也自身の詩的世界の解明に役立つ。また、石川淳の「山櫻」の導き手となっただけではなく、「様々なる意匠」において表明された小林秀雄的世界観の確立にも貢献した。……はじめにより】
目次
はじめに
●フランソワ・ヴィヨンと富永太郎、芥川龍之介、井伏鱒二
辰野隆曰く/富永太郎 追憶の崩壊/芥川龍之介 悪党詩人と死の映像/井伏鱒二 反抗的青春の回想/中原中也、小林秀雄から太宰治へ
●詩人と批評家 ― 中原中也と小林秀雄のことば
富永太郎の肖像/見ることと歌うこと/考える蜈と自然な皺/詩と批評と
●小林秀雄 ランボー ヴァレリー ― 斫斷から宿命へ
斫斷と錬金術/黄金の未知なる陰影―ランボーからヴァレリーへ/別れ
●「間抜ヶ野郎ヂェラルド」 ― ジェラール・ド・ネルヴァルを通して見る中原中也
アーサー・シモンズと岩野泡鳴の轍の中で/翻訳の滋養
●ネルヴァルのマントに誘われて ― 石川淳「山櫻」における風狂の詩情
石川淳の「ヂェラアル・ド・ネルヴァル」/ネルヴァル的意匠のアラベスク/石川淳的「低空飛行」/風狂の詩情
●小林秀雄における「事件」 ― 「ランボオの問題」の場合
「事件」としてのランボー/マラルメとジャック・リヴィエール/夜明けと飢渇/再出発
●「椿屋のさつちやん」の誕生 ― 太宰治「ヴィヨンの妻」における詩的創造
太宰とヴィヨン/ポール・ヴァレリーのヴィヨン論―作家と作品/花田清輝のヴィヨン論―猥雑と敬虔と/田辺元と無の実存主義―自由のヴァイタルフォース
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