紹介
『日本書紀』の研究史を見直し、国学者や国文学者が果たしてきた業績を再検討する。
中華文明に対し、自国を意識したことによっておこった学問「国学」。本書はその国学が、上代文献、なかでも『日本書紀』を、どのように研究し何を明らかにしてきたかを論じる。大陸の学問は『日本書紀』研究にどのような影響をもたらしてきたのか。『日本書紀』研究史の再構築をめざし、文献のなかの古代がどう研究されてきたのかを探る。
【……『日本書紀』本文に含まれる和語と漢語の交渉から、『日本書紀』研究は展開したのである。その和語交渉の歴史を国学として考えれば、時代は限定されるべきものではなく、またイデオロギーでもない。『日本書紀』という例によって述べるならば、『日本書紀』に描かれる世界を知ることが「国学」としての営みである。そして、それを知る方法として文献をどのように理解するかを考えるのもまた「国学」ということになろう。……「結論」より】
目次
序論 本書の視点と構成
一 研究史と訓読
二 国学と文献学
三 国学と儒学
四 国学と国文学
五 本書の構成
第一章 近世国学までの『日本書紀』研究史
第一節 上代文献の訓読と『日本書紀』研究
一 はじめに
二 『日本書紀』の訓読とその方法
三 『日本書紀』講筵と「日本書紀私記」の成立
四 紀伝道・明経道と『日本書紀』研究
五 「日本書紀私記」と近世国学
六 おわりに
第二節 注釈史からみた「日本書紀抄」の成立
一 はじめに
二 「日本書紀抄」の成立と形態
三 「抄物」と中国の「抄」
四 「抄撮の学」と『日本書紀』注釈
五 「日本書紀抄」と『日本書紀纂疏』
六 おわりに
第三節 「日本書紀抄」にみる注釈の継承と展開
一 はじめに
二 「兼倶抄」と「宣賢抄」
三 後抄本「宣賢抄」
四 「宣賢抄」の『日本書紀』本文
五 「宣賢抄」の展開と伝播
六 おわりに
第二章 荷田春満の『日本書紀』研究
第一節 荷田春満の『日本書紀』研究と卜部家
一 はじめに
二 『卜部家神代巻抄』上巻
三 『先代旧事本紀』論
四 「一書」論
五 「凡三神」論
六 訓読法の相違
七 おわりに
第二節 青年期における荷田春満の『日本書紀』研究
—東丸神社蔵『神代聞書』翻刻を通じて—
一 はじめに
二 『神代聞書』の翻刻
三 『神代聞書』の考察
四 『神代聞書』と『日本書紀神代巻講習次第抄』の比較
五 おわりに
第三節 荷田春満の「仮名日本紀」
一 はじめに
二 春満の著述と『日本書記』
三 書写された「仮名日本紀」
四 春満の注釈に顕れる「仮名日本紀」
五 春満の「仮名日本紀」の特徴
六 春満著述親盛本の特徴
七 おわりに
第四節 荷田春満自筆「漢字仮名交じり本」の位置づけ
一 はじめに
二 「仮名日本紀」諸本
三 春満自筆本と三手文庫本
四 荷田春満と今井似閑
五 春満自筆本と諸本
六 おわりに
第五節 荷田春満と賀茂真淵の『日本書紀』研究—訓読研究を中心に—
一 はじめに
二 春満の「仮名日本紀」
三 賀茂真淵の『日本紀訓考』
四 春満と真淵の訓読の方法
五 おわりに
第三章 近代における『日本書記』研究
第一節 武田祐吉の『日本書紀』研究—新出資料と著作を通して—
一 はじめに
二 國學院大學在学中の武田
三 武田による『日本書記』に関連する著作
四 武田の『日本書紀』訓読法
五 本居宣長と武田の訓読法
六 おわりに
第二節 折口信夫の「日本紀の会」と『日本書紀』研究
一 はじめに
二 「日本紀の会」
三 折口による『日本書紀』の解釈
四 折口の訓読と「仮名日本紀」
五 折口の「まれびと」訓
六 おわりに
結論
参考文献・初出一覧・あとがき・索引(左開)