紹介
荻生徂徠に学び〈古文辞学〉の方法と思想を継承した太宰春台。
如何に読み、如何に書くことで、彼らは先王の道を理解し、表現しようとしたのか。
本書ではこれを「詩文論」と称し、彼ら学問にどのように機能したのかを論証。
江戸漢学において未分化であったはずの文学と思想を切断することなく、
その視座に立ち戻り、詩文論という文学の観点から、新たな春臺思想を照射する。
【詩文論の観点から言えば、春臺は、徂徠門にあって徂徠詩文論を学び実践した人物である。しかし晩年、師の詩文論から離れ、独自の詩文論を形成した。その地点において春臺は〈古文辞学〉批判を展開するのだが、それは〈古文辞学〉という方法と思想を徹底的に「継承」した結果の「転回」であったと私は理解している。このようなかたちで、徂徠と春臺の思想的連関を見出すことができるのは、詩文論という観点を重視しているからである。詩文論という「文学」の観点を以て春臺思想の新たな側面が指摘できれば、本著の目的は達成されたことになる。】…「はじめに 何故、春臺研究において「詩文論」なのか?」より
目次
凡例 一 底本一覧
二 初出一覧
三 文献の引用方法について
はじめに--何故、春臺研究において「詩文論」なのか?
第一部 徂徠、徂徠学派の詩文論
第一章 徂徠詩文論のかたち
一 問題の所在
二 「天の寵霊」
三 『四家雋』の成立と、徂徠学におけるその位置
四 『四家雋』編纂の意図
五 徂徠文論の標語
1 六経十三家 2 四家--達意と修辞 (1)唐の韓・柳 (2)明の李・王
六 〈体〉〈法〉〈辞〉
七 文は「意語」、詩は「情語」
八 『唐後詩』編纂の意図
九 小括
第二章 徂徠文論の形成過程
一 安藤東野と山縣周南
二 李攀龍・王世貞と、汪道昆
三 〈古文辞学〉構築への逡巡
四 修辞(擬議—日新)
五 小括
第三章 徂徠学における韓愈・柳宗元
一「書く」ということ
二 服部南郭『灯下書』
三 山縣周南『作文初問』
四 小括
第二部 春臺の詩文論--徂徠詩文論の継承と転回
第四章 春臺詩文論の出発点
一 問題の所在
二 「倭読」という思考
三 初学者の学び方
四 徂徠文論との整合性
五 詩史
六 古詩の再現
七 小括
第五章 春臺〈古文辞学〉の修養--徂徠詩文論の実践として
一 読『詩』の方法
二 徂徠学における「詩序」「書序」
三『詩書古伝』編纂の経緯
四 春臺の『論語』解釈書
五『詩』と孔子
六 孔門の教えと文
1 先王の道と文 2 四科と四教 3 文を学ぶ 4 文と質
七 徂徠の「文」と春臺の「文」
八 小括
第六章 『論語』理解における徂徠と春臺の「古言」「古語」
一『論語徴』の「古言」「古語」
二 春臺の「古言」「古語」
三『論語古訓』から『論語古訓外伝』へ
四 春臺「古語」説
1 他の古典籍を根拠とする「古語」説
2〈文法〉によって認定される「古語」説
五 小括
第七章 春臺詩文論のかたち
一『文論』『詩論』の成立
二『文論』
1『文論』読解の着眼点 2 〈体〉〈法〉〈辞〉 3 韓愈推奨 4 古文辞批判
三『詩論』
1 詩史 2 唐詩と明詩
四 小括
第八章 詩文論からみる春臺学
一 古人が「書く」ということ
二 先王の道を「書く」ということ
三 先王の道と老子理解
四 小括
第九章 春臺詩文論の意義
一 総括に向けて
二 明代文壇の動向と春臺詩文論
三 ?園学派の詩文論の動向
四 詩文論の意義
あとがき