目次
[執筆]
神田典城・廣岡義隆・兼岡理恵・大館真晴・青木周平・中村啓信・瀬間正之・橋本雅之・奥田俊博・谷口雅博・北川和秀・中川ゆかり・西條勉・飯泉健司・荻原千鶴・大鋸聡幸・増尾伸一郎・加藤清・稲石陽平
【目次】
総論...神田典城 1
■■Ⅰ文献
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文学研究の基礎である文献学の立場から風土記写本の意義と在り方とを問う。史的に見れば、平安期には三条西家本『播磨国風土記』が書写されていて、その字体は奈良時代の文字列を良好に伝えているし、中世には各書に風土記が引用され、逸文として遺る。また近世には地誌ブームを背景に、古風土記の書写が盛んになる。このような写本の置かれた状況を視野に入れつつ、古風土記の原本に迫る方法を模索する。
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○風土記本文の復元について...廣岡義隆
【はじめに 良質のテキスト 国史大系本『釈日本紀』に依拠することの問題点 『塵袋』の場合 逆の事例 おわりに】
○『常陸国風土記』再発見前夜ー藩撰地誌『古今類聚常陸国誌』ー...兼岡理恵
【はじめに 『古今類聚常陸国誌』成立の背景 『古今類聚常陸国誌』の内容】
○三條西家本播磨国風土記の字体をいかに理解するかー木簡や正倉院文書との比較からー...大館真晴
【はじめに 三條西家本の字体の再評価ー木簡・正倉院文書との比較からー まとめ】
○中世から近世にかけての風土記受容史の一斑...青木周平
【はじめに 『釈日本紀』引用「出雲国風土記」の検討 『釈日本紀』引用「九州風土記」の検討 江戸幕府の風土記収集事業】
コラム
常陸国風土記に白壁郡を立つべきことー葦穂山越えの道ー...中村啓信
■■Ⅱ文体・文字
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風土記が成立した八世紀とは、漢文世界を基にしつつも、独特の和文成立へと向かう過渡期であった。風土記の筆録者たちも、日本語の文体を模索し格闘したに相違なく、中国文献を出典とした表現、字音仮名による日本語の書き方、漢文を超えようとする新たな表現技法など、さまざまな方法が地方官人たちによって試みられている。文字と真剣に向き合い、地方から中央に向けて発信された和文体のありようを考察し、筆録者たちの知と技に迫る。
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○文体・文字総論...瀬間正之
【はじめに 播磨国風土記 出雲国風土記 各国逸文】
○『常陸国風土記』の文体ー「存」を中心にしてー...橋本雅之
○『播磨国風土記』の表記ー文体との関わりー...奥田俊博
【はじめに 仮名表記の様相 訓字表記の様相 文体との関わり おわりに】
○『出雲国風土記』地名起源記事の文体ー〈秋鹿郡〉を中心にー...谷口雅博
【はじめに 「神坐型」 「神詔型」 〈秋鹿郡〉郡名起源と郷名起源 おわりに】
○西海道乙類風土記の字音仮名について...北川和秀
【はじめに 西海道風土記の仮名書き語 西海道風土記の字音仮名と他の上代文献の字音仮名との比較 まとめ】
○肥前国風土記の文章ー進取の気性ー...中川ゆかり
【はじめに 「片時」 「見在」 「就中」 「夜裏」 「御」・「同天皇」 むすび】
■■Ⅲ説話
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風土記には、記紀に見られない地方ならではの興趣に満ちた話が多々収録されている。その面白さの所以として、地方でしか作り得ないものという側面が指摘できる。中央に住まう者には考えもつかないもの、或は王権では許されない類のものが生成していると言ってもよい。しかし、その説話のありようは一律ではない。風土に即して説話の生成過程も背景もそれぞれに異なるからである。各国風土記の特徴的な説話を取り上げて、地方・風土という観点から風土記説話の面白さを多角的に追究する。
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○巫女の死ー風土記説話の水準ー...西條勉
【はじめに 死ぬ女たち 死の理由 死の表現 おわりに】
○「新治の国小筑波の岳」に込められた意味ー『常陸国風土記』香澄里・新治洲条ー...兼岡理恵
【はじめに 「新治洲」地名起源説話成立の背景 「新治洲」地名起源説話記載の意味 おわりに】
○霊剣の主張ー播磨国風土記・旧聞異事の生成ー...飯泉健司
【序 問題意識 剣の霊威ー一族の滅亡と「屈申」 霊剣の背景ー●木村と仲川里楽浪河内の主張ー正倉の功績と屯倉記事 共通資料ー国司の主張 結 旧聞異事の生成】
○『出雲国風土記』の説話表現ー感情の描出をめぐってー...荻原千鶴
○「大足彦天皇」の姿ー『肥前国風土記』神埼郡琴木岡条の記事からー...大鋸聡幸
【序 二重構造を持つ地名説明記事 「纏向日代宮御宇天皇」と「大足彦天皇」 巡行しない「大足彦天皇」 まとめ及び今後の課題として】
○蘇民将来伝承考ー『備後国風土記』逸文の形成ー...増尾伸一郎
【はじめに 備後国風土記の逸文 蘇民将来伝承の系譜 茅の輪と夏越祓 朝鮮の民俗信仰との関係 おわりにー牛頭天王との習合】
■■Ⅳ資料
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風土記は記紀の補助的資料として扱われることが多かった。そのため風土記研究は、記紀に比べて遅れている状況にある。しかし近年、風土記ブームが起こり、研究も盛んになりつつある。そこで求められているのは、基礎的な資料やデータの整理である。風土記を研究する者、更に風土記の研究者層を厚くするために、重要と考えられる資料を提示する。そのことによって、風土記研究発展への寄与を目論む。
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「風土記」研究史年表...谷口雅博
「風土記」地名起源一覧...稲石陽平
「風土記」地理比定一覧...大鋸聡幸
「風土記」類話・類型一覧...加藤清
「風土記」字音仮名索引...北川和秀
執筆者一覧
本書事項索引