紹介
腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態である慢性腎臓病(CKD)。我が国には約1330万人のCKD患者がいるとされ(2011年時点)、中でも80歳台では2人に1人と、超高齢社会を迎え患者数は右肩上がりに増えています。CKD患者は末期腎不全や心血管疾患のリスクが高く、放置すれば人工透析の導入や心筋梗塞・脳卒中を来し得ることから、発症・進展を防ぐことが欠かせません。早期発見には定期的な健診が重要だが、加えて進展予防には、糖尿病や高血圧など生活習慣病の管理が重要になります。 本書は、こうしたCKD患者に外来で日々対応している薬局薬剤師向けに、患者フォローアップに必要な知識をまとめた解説本です。 現状、薬局薬剤師は「腎機能が低下している患者」と聞くと、腎機能に応じて投与量の変更を要する薬剤が多いことから、薬(処方内容)のチェックに注力しがちです。しかし、患者の重症化予防を考えた時、それだけでは不十分であり、腎機能が低下した患者の薬物療法を、食事・運動などの生活習慣も含めて適切に管理していく視点が求められます。 折しも、2019年の医薬品医療機器等法(薬機法)改正により、薬剤師による服薬後フォローアップおよび医師への情報提供が義務化されました。薬を手渡すまででなく、薬を交付した後も、さらにもう一歩踏み込んで患者をサポートする役割が求められ、そのための知識習得が欠かせなくなっています。 本書は、CKD患者に対応する上で必要な知識を、「基礎編」「管理・指導編」「カンファレンス編」に分けて解説。腎臓専門医が最新の知見を基に、難しい話をやさしく解説します。2023年6月に改訂された日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」にも対応しており、読みやすく、明日からの業務にすぐ役立つ内容となっています。「腎機能をこれ以上悪くさせないためには」「透析導入の期間を遅らせるには」「CKD患者の心血管イベントリスクを減らすには」――。目の前の腎臓が悪い患者に何ができるか、どう関わっていけばいいかを考える、現場の第一線で働く薬剤師必携の1冊です。
目次
基礎編
定義と重症度分類
CKDの原疾患は?
透析導入までの期間は?
検査値の見方
尿検査の重要性
透析になると薬はどうなる?
急性腎不全とは
管理・指導編
【血圧】降圧目標を知ろう
【血圧】高齢者の降圧目標は?
【血圧】降圧薬の薬剤選択は?
【血圧】降圧薬の副作用管理は?
【血圧】RAS阻害薬のやめどきは?
【血圧】降圧薬3剤以上の高血圧患者(腎硬化症症例)
【血糖】糖尿病性腎症ってなに?
【血糖】糖尿病患者の血糖コントロール
【血糖】低血糖を起こさないためには?
【血糖】糖尿病治療薬はここをチェック
【血糖】糖尿病性腎症のフォローポイントは(症例)
【K】カリウム管理
【貧血】腎性貧血とHIF-PH阻害薬
【貧血】HIF-PH阻害薬ガイドラインとは
【リン】リン吸着薬服用中は食事や栄養状態も併せて評価
【薬】利尿薬の正しい使い方
【薬】SGLT2阻害薬が適するケースは?
【薬】ミネラルコルチコイド拮抗薬
【薬】クレメジンが飲めない?!
【薬】脱水を起こしやすい薬
【薬】シックディ時の注意は?
【薬】CKD患者の抗不整脈薬(本当にあった怖い薬のはなし)
【薬】CKD患者の抗ウイルス薬
【薬】CKD患者のPPI
【食事】腎機能低下リスクを減らす減塩 薬局でできる指導は?
カンファレンス編
糖尿病性腎症
IgA腎症