紹介
●求められる「アサーティブ」な会話
「アサーティブ」とは「自分を主張する」という意味だが、ここでは、相手を尊重しながらも自分自身の意見を伝えるという意になる。組織の多様性、そして心理的安全性が言われる職場において、誰もが臆することなく、一方で誰もが相手を追いつめることなく、意見を言える環境が求められている。
在宅勤務が増えて、オンラインやメール主体のコミュニケーションが増えると、発言がしにくかったり、顔が見えないことによる攻撃的なコミュニケーションが増える可能性がある。アサーティブ・コミュニケーションの考え方は以前から日本に導入されていたが、いま改めて、そのニーズが増しているといえる。
本書は、『日経文庫 アンガーマネジメント』の著者が、怒りをうまくコントロールした先にあるコミュニケーションとして、アサーティブ・コミュニケーションの考え方と実践法を語る。
●職場のケースを中心に
アサーティブ・コミュニケーションは、アンガーマネジメントの延長戦上にあるとも言える。相手を尊重し、自分の思いを抱え込むことなく語れば、他人への攻撃や自分へのイライラを押さえ込むことができる。アンガーマネジメントでは、「~こうあるべき」という思いが相手を許せないという行動につながっていたが、アサーティブ・コミュニケーションでは「アンコンシャスバイアス」という無意識な思い込みが、相手を必要以上にやっつけたり、必要以上に遠慮してしまったりする原因となる。
本書はビジネスの現場視点から書かれているのが特徴。事例が豊富で、コンパクトに基本がわかる1冊。
目次
はじめに
第1章 アサーティブ・コミュニケーションとは
(1)なぜアサーティブ・コミュニケーションが重要なのか~心理的安全性を実現するために~
(2)情報共有だけでなく、感情や価値観のすり合わせが必要な時代
(3)自分自身の自己表現の仕方を振り返る
(4)アンガーマネジメントとの関係
(5)アンガーマネジメントの手法を取り入れる
第2章 アサーティブになるための準備
(1)相手をコントロールしない、過度な謙遜をしない
(2)「相互信頼」のつくり方
(3)上下関係を意識しすぎて萎縮しない
(4)復唱できるくらいに「傾聴」する
(5)「同意」できなくても「理解」はする
(6)コミュニケーションのゴールは、アサーティブに伝えること
第3章 アンコンシャスバイアスの影響に気づく
(1)アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)とは?
(2)アンコンシャスバイアスが、人との行き違いを生む
(3)思い込みがハラスメントに発展してしまうことも……
(4)過去の対人関係からくるネガティビティバイアスが、人とわかり合うことを阻む
(5)自分の「当たり前」「常識」を無意識に他者に押しつけていないか
(6)「自分が正しい!」探しをすると、人との対話が成立しなくなる
(7)「あの人の言うことは正しい」という思い込みが、発言を封じてしまう
(8)アンコンシャスバイアスへの対処法とは?
第4章 アサーティブな表現のポイント
(1)ときには「言わない」という選択をしてもいい
(2)伝えたいゴールは明確か~ゴールがぶれていないかを振り返る~
(3)伝えたいことは、書き出しながら整理する
(4)客観的事実と主観を分けて伝える
(5)相手と共通認識を得られる言語を選ぶ
(6)伝える内容と態度の不一致は相手を戸惑わせる
第5章 ケース別対応例
(1)攻撃的な相手に、どう伝えればいいか
(2)取引先からの無理なお願いを断るとき
(3)権威ある人の発言を根拠に、意見を押し通してくる人への対応
(4)攻撃している自覚がない相手に応じるとき
(5)攻撃的な人と対話をするとき
(6)非主張的な相手に言いにくいことを伝えるとき
(7)繊細な人に注意を促すとき
(8)非主張的な自己表現を改善する
(9)「でも」「だって」「どうせ」が口グセの人と対峙するとき
(10)クレームを伝えるとき、クレームを言われたとき
(11)相手の本音を引き出したいとき
(12)コミュニケーション面で相手の改善がみられないとき
(13)よかれと思って言ったことが、相手を傷つけてしまったとき
(14)リモートワーク時でもコミュニケーションをとりたいとき
おわりに