紹介
もし、あの時代に「広報」がいたら、日本の歴史は大きく変わっていたかもしれない――。
報道発表後に新たな情報が次々明らかになり、大炎上。事態はさらに悪い方向へ……。
政治、ビジネス、芸能界に至るまで、我々が生きる現代の日本は、広報対応のまずさが目に余ります。しかし、あらかじめ「こうなること」が分かっていれば、もっと適切な対応がとれていたに違いありません。
本書は大政奉還、本能寺の変、関ケ原の戦い、武田信玄の死といった、誰もが知る日本史の大事件を題材に、マスコミ向けの報道発表資料である「プレスリリース」を作成し、企業や組織による情報発信の重要性や広報という仕事の面白さについて解説しました。著者はアップル、そして現在は日本の大手パソコンメーカーで広報部門を率いる現役バリバリの広報マン。日々、手強いマスコミの記者を相手に記事化を働きかける熟練の広報テクニックを武器に、歴史の斬新な見方も私たちに提示してくれます。
客観的な事実の記録と思われがちな日本史ですが、実はある一方の側からの視点(大抵は時の為政者)で綴られているケースが少なくありません。著者はそこに着目し、情報を効果的に拡散させるべく、その時代にマスコミが存在すれば飛びつきそうな新しいアングルでプレスリリースを書き綴っていきます。もし、あの時代に有能な広報マンがいて適切な情報発信を行えば、歴史は全く違った方向に進んでいったかも……収録された抱腹絶倒間違いなしのエピソードからは、そんなロマンの香りすら漂ってきます。
さらに今回、歴史コメンテーターで東進ハイスクールのカリスマ日本史講師として知られる金谷俊一郎氏が監修を務めました。単なるフィクションに終わらない、歴史本としても説得力のある内容で構成されています。
目次
まえがき
第1章 リスクマネジメント
●武田信玄の死を広報的にごまかしてみる
●元寇に失敗した元軍の言い訳を広報する
●一方的な「忠臣蔵」を吉良家側から情報発信
●「本能寺の変」に学ぶ危機対応の原則
●顧客プライバシー保護が甘かった「池田屋事件」
●「金印」を紛失した役人はどうなった?
●弁慶が義経の広報官だったら
●「生麦事件」はワーケーション中の事故だった?
●「関ケ原の戦い」にはらむリスクを広報する
●日本初"バ美肉おじさん"紀貫之は謝罪すべき?
●混乱の室町時代は『北斗の拳』とソックリ
第2章 制度改革
●人にはどれだけの土地が必要か
●エグい「武家諸法度」はソフト路線で発表する
●お手本のような負のループ「徳政令」
●「生類憐みの令」は本当に悪法だったのか
●「大政奉還」の発表で幕府広報の葛藤を追体験
●「明治14年の政変」をミュージカルにしてみた
●「廃藩置県」よくあるご質問
●200年早過ぎた貨幣政策の天才
第3章 マーケティング
●源頼朝が編み出したエンゲージメント強化策
●超優良コンテンツ『古事記』で『ワンピース』超え
●松尾芭蕉を旅行系の人気ユーチューバーに
●「行基」は奈良時代のインフルエンサーだった
●遣唐使を現代流で募集するとこうなった
●求む、長篠方面に住む鉄砲に興味のある若い方
●仏教ブームの仕掛け人が豪族にアンケート
●大化の改新の記念事業で"謎の巨石"を大胆広報
●学習塾風に松下村塾の生徒を大募集!
●縄文人が米を食べた瞬間がイノベーションだ
第4章 広報テクニック
●「刀狩」にプレスが同行したらどうなるか
●江戸幕府が一揆について意識調査をしてみたら
●ヤマタノオロチ伝説でリリースの書き方を復習
●戦国武将の「ベストドレッサー賞」は誰の手に?
●社内広報で幕臣の心に「鎖国」を響かせる
●是が非でも『源氏物語』を売りたい出版社へ
●聖徳太子をメディアに売り込む最高の方法
●伊能忠敬に関する報道発表が簡素過ぎる問題
第5章 リーダーシップ
●井伊直弼、命懸けのコンプライアンス違反
●板垣退助“最期の言葉”を広めたのは誰?
●坂本龍馬が150年後に向けたプレスリリース
●上杉鷹山が発した名言にJFKが触発?
●「聚楽第」に未練無し、豊臣秀吉バブリー人生
監修者あとがき 日本の歴史はプレスリリースの歴史である
プレスリリース年表
参考資料