内田裕介さんの書評 2018/01/01 3いいね!
35年ぶりの映画『ブレードランナー』の新作を見て、やや違和感があったので、原作にあたってみました。
恥ずかしながら、ブレードランナーの原作を読むのはこれが初めてです。
文庫でも300ページを越えるかなりな長編ですが、物語の設定と展開はいたってシンプル。
内面の描写に多くを割いている分、哲学的な香りの高い作品です。
タイトルの「電気羊」とはロボットのペットのこと。
核戦争後の生き物が絶滅しかかっている世界では、人々はほんもののペットを容易に飼うことができず、ロボットのペットに癒しを求めている。
アンドロイドという「ロボット」も人間とおなじようにロボットのペットに癒しを求めるのだろうか、という問いの意味は難解で、にわかに納得のいく答えは見つかりません。
しかし新作映画との関連でいうなら、その答えは「YES」で、そこから新作映画の物語が始まります。
ともあれ、原作と新作映画のテーマは違うということはわかりました。
デッカード自身がアンドロイド?というシーンは原作にもありましたが、まあ、そこは物語を面白くするための仕掛けでさほどの意味はない。
というよりも、原作のテーマはそこにはまったくない。
それがわかっただけでも収穫でした。
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