目次
序 章 新しい江戸時代像をめざして
一 近世史のパラダイム・シフト
1 封建制からearly modernへ
2 幕藩制構造論から国家論へ、さらに天皇論の転換へ
3 活性化する村役人層
4 変革主体としての豪農・村役人層――「静かな変革」論の提起
5 「状況の複合」と静かな変革過程
6 闘争から合意と共同性へ
7 領主と地域社会
8 地域の行政システムと村落自治
二 「世論政治」論の展開へ――本書で意図する論点
1 「タテの階級闘争」から「ヨコの集団間紛争」へ――「世論政治」論への到達
2 世論と政策調整
第一章 幕府官僚と利益集団――天保の油方仕法改革と政策過程
一 本章の課題
二 大坂油方仕法の改革案
1 大坂町奉行所と勘定役楢原謙十郎
2 改革の動機――楢原謙十郎の市場認識
3 楢原構想と理念
4 第一次改革案の成立
5 訴願と改革案の修正
6 改革案と老中伺書
三 江戸油方仕法の改革案
1 第一次改革案の成立過程
2 第一次改革案の修正
四 政策立案者と政治アプローチ
1 大坂仕法
2 江戸仕法
3 政策立案者とアクター・世論
五 地方官僚と中央官僚
六 勘定所と江戸町奉行
1 油方仕法をめぐる対立
2 油方仕法の改革と株仲間解散令
七 社会・政策と官僚――おわりにかえて
第二章 幕府の経済政策と地域住民――灯油市場をめぐる奉行所の対応
はじめに
一 制度と地域
二 堺奉行の仕法改革要求
1 市場としての自立
2 支配国としての自立
3 大坂町奉行の異論と老中伺書
三 仕法改革の発案と堺奉行
1 二つのアプローチ
2 改革案にみる論理――「諸民難渋」と江戸相場
四 堺奉行と京都町奉行
五 江戸油問屋と浦賀奉行
おわりに――いくつかの論点
1 制度と業界の請負
2 業界団体と地域編制
3 支配国/地域と運動
4 地域役所と地域社会
第三章 地域的公共圏の形成――郡中議定と社会・権力
はじめに
一 管理コードとしての郡中議定
1 宝暦五年の郡中議定
2 安永七年の郡中議定
3 天明期の群中議定
二 法としての郡中議定
三 公共圏としての郡中議定
四 下からの公共圏形成と領主
五 「郡中」公共圏を食い破る存在
1 郡中諸藩の動向
2 打ち壊し
六 幕領惣代の石代納減免交渉――江戸出訴一件
七 代官という存在
おわりに――いくつかの論点について
1 公共圏の多元・重層的構造
2 公論の場としての寄合と一郡集会
3 石代納・廻米減免交渉と米穀売買勝手令
4 巨大豪農と郡中惣代について
5 郡中議定の中断と再興
6 地域管理の性格と地域的公共圏について
第四章 天保期の社会と天保改革――世論と政策決定過程から読みなおす
一 天保の飢饉と幕府の米殻対策
1 東国諸藩の飯米確保
2 上方の米市場と大塩事件
3 幕府の全国的対応
二 天保改革
1 江戸の町触から
2 株仲間の解散
3 十組問屋と江戸町奉行
4 経済成長をめぐる評価――貨幣改鋳問題に関連して
5 人返し令と風俗取締りの政策意図――水野はなぜ江戸衰微政策にこだわったのか
6 水野忠邦がめざしたもの
7 幕府の政策決定システムについて
8 水野忠邦のリーダーシップについて
三 嘉永の問屋組合再興と江戸町奉行
1 遠山景元の動き
2 勘定奉行の異論と修正
四 庶民剣士と「惣国」の防衛
1 日本の領土宣言と国防の危機
2 庶民武芸と地域社会
3 庶民武芸と国防
第五章 武士と役人
一 役人のこと
二 士と武士
三 武士と学問
四 「汚辱不仁」なる役人たち
五 「清廉」なる士
六 江戸時代の役人について――おわりに
終 章 私にとっての江戸時代論
はじめに
一 連帯という幻想
二 民意と政治
三 役人という存在
四 階級国家と公共国家
五 大塩平八郎の蜂起は「戦の思想」
六 天保の改革と大塩の建議書
七 兵農分離と庶民剣士
八 武士と庶民の間
九 西洋人の日本認識――「帝国」と「皇帝」
あとがき