kamelifeさんの書評 2022/07/29 2いいね!
知ってはいけない 隠された日本支配の構造 矢部宏治
【サンフランシスコシステム】
国連憲章
サンフランシスコ平和条約
安保法体系
吉田アチソン交換公文
【ウラの掟】
裏の掟のほとんどは日米両政府の間ではなく米軍と日本官僚の間で直接結ばれた占領期以来の軍事上の密約を起源としている。
【安保法体系の構造】
この構造は1960年の安保改定後も、少し条文上の表現を変えただけで、「新安保条約」+ 「地位協定」 + 「日米合同委員会」という三重構造
のなかに受け継がれている。
【旧安保条約】
「アメリカは米軍を日本に配備する権利をもつ」(旧安保 第1条前半)→ (新安保 第6条前半)
「その配備の内容は、行政協定で決定する」(旧安保条約第3条) → (新安保条約 第6条後半)
【行政協定】
「日本は安保条約第1条の遂行に必要な基地を提供する。 具体的な内容は日米合同委員会で定める」(行政協定第2条)→ (地位協定第2条)
「アメリカは米軍基地の中で絶対的な権力をもつ。 米軍基地の外でも必要な権力をもつ。 具体的には日米合同委員会で協議する」 (行政協定第3条) →(地位協定・第3条)
「すべての具体的な協議は日米合同委員会でおこなう」(行政協定第26条) →(地位協定第25条)
【日米合同委員会】
日本独立後もアメリカ軍支配を維持するための組織。
会議の内容は非公開。国会の承認不要で様々な密約を締結。
「日米合同委員会の議事録や合意文書は、原則として公表しない」 (第1回日米合同委員会での秘密合意 1960年6月)
「日米合同委員会で決定した日米合意は、日本の国会での承認を必要としない」(安保改定交渉のなかでの秘密合意 1959年4月)
本会議には、日本側6人、アメリカ側7人が出席する。月2回、隔週木曜日午前11時から。日本側代表が議長のときは外務省施設で、アメリカ側代表が議長のときは米軍基地(西麻布のニューサンノー米軍センター)で開かれている。
【管制権密約】
日本政府は、演習を行う米軍機については、優先的に管制権を与える(1975年5月8日)
【裁判権放棄密約】
日本側はいちじるしく重要な事件以外は、裁判権を行使しない(1953年10月28日)
【身柄引渡し密約】
米軍関係者による犯罪が、 公務中に行われたものかどうかわからないときは、容疑者の身柄を米軍に引き渡す(1953年10月22日)
【指揮権密約】
1952年7月23日吉田首相とクラーク大将が指揮権密約を締結。
2度目は1954年2月8日吉田首相とジョン・ハル大将によって結ばれた。
(指揮権密約文書より 古関彰一獨協大学名誉教授1981年発見)
吉田首相とクラークは「戦争になったら日本の軍隊は米軍の指揮下に入って戦うこと」を合意した。
また、この合意は日本国民に与える政治的衝撃を考えると、当分のあいだ秘密にされるべきであるとも合意した。
【裏マニュアル】
日米合同委員会で合意された非公開の「合意文書」や「公式議事録」の重要なポイントを、現場の担当者向けのマニュアルとしてまとめたもの。
1952年9月 日米行政協定に伴う民事及び刑事特別法関係資料(最高裁判所事務総局編集・発行)
1972年3月 合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁
判権関係実務資料(法務省刑事局作成・発行)
1973年4月 日米地位協定の考え方(外務省条約局作成)
【日米地位協定の考え方 増補版」1983年12月(外務省作成高級官僚向け極秘マニュアル)】
アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる。
日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない。
このような考え方からすれば、例えば北方領土の返還の条件として「返還後の北方領土には施設区域(米軍基地)を設けない」との法的義務をあらかじめ一般的に日本側が負うようなことをソ連側と約することは、安保条約・地位協定上問題があるということになる。
つまり、現在の日米間の軍事的関係が根本的に変化しない限りロシアとの領土問題が解決する可能性は無い。
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