せのおさんの書評 2020/09/17
# 書評☆2: 確率思考の戦略論 | 抽象的な話も多く個人事業への導入は無理
## 概要
- 書名: 確率思考の戦略論
- 副題: USJでも実証された数学マーケティングの力
- 著者: 森岡 毅 and 今西 聖貴
- ISBN: 9784041041420
- 出版: 2016-05-31
- 読了: 2020-09-16 Wed
- 評価: ☆2
- URL: book.senooken.jp/post/2020/09/17/
## 評価
個人事業で新しいビジネスを考えており,その際の勉強としてマーケティングについて調べていた。Amazonのマーケティングのカテゴリーで上位にあり,引用・言及の多かったので興味を持って読んだ。
USJの売り上げに大きく貢献した立役者である著者による,ビジネスマーケティングの方法論について書かれていた。
市場を支配するのは,消費者のプレファレンスということで,これに的をあてたマーケティング戦略について書かれていた。書名にある通り,確率に基づいてやっているとのことで,ところどころに確率のグラフや数式がでてくる。
最初の3章くらいまでは理解できる話だったのだが,後半から自身のUSJやP&Gでの事例や経験などの話が織り交ぜられながら,抽象的なよくわからない話が展開され,あまり理解できなかった。
数字に熱を込めるだとか,予想は大きく外さないとか,抽象的な話があったり,書籍の内容に直接関係ないようなUSJでの奮闘録のようなものも間に入っていたのが,余計にわかりにくかった。
本書の後半ではグラフのMを大きくすることを強調していたが,結局これも具体的にどうやればいいのかわからず,少なくとも自分には取り入れることはできないと思った。
既に大中企業でマーケティングを担当していて,ある程度知識があるならば取り入れられるのかもしれないが,マーケティング未経験の個人事業主が取り入れられるようなものではなかった。
## 引用
> ### p. 022: 3 市場構造とは何か?
> 冒頭で述べた市場構造を形作っている「本質」を、市場構造に見える様々な現象の奥底から探してみましょう。それら市場構造を決定づけているDNA、あるいは震源とも言うべき「本質」は一体何でしょうか?いきなり核心の答えを申し上げますが、それは消費者のPreference (プレファレンス) です。プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度 (簡単に言えば「好み」) のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されています。
本書の核となるプレファレンスについて説明されていた。
> ### p. 034: 6 経営資源を集中すべきは、プレファレンスである
> これらを結論づけると、「市場競争とは、1人1人の購入意思決定の奪い合いであり、その核心はプレファレンスである」という真理に辿りつきます。
> ___
> 市場の大きさは以下の式で計算できます。
>
> 市場の売り上げ=延べ購入回数×1購入あたりの平均購入個数×平均単価
>
> ここで競合と奪い合っているのは、延べ購入回数におけるシェアです。1購入あたりの購入個数や平均単価において、直接的な奪い合いが起こっている訳ではありません。すなわち、我々は購入意思決定の争奪戦を行っているのです。購入意思決定は、そのカテゴリーにおける消費者が持つ相対的なプレファレンスによって決まっています。我々が奪い合っているのは消費者のプレファレンスそのものなのです。
直前で説明されたプレファレンスが重要な理由がここで説明されていた。
> ### p.039: 2 戦略の焦点は3つしかない
> 第1章で確認したように、ビジネスの売上は、自社ブランドに対する消費者のプレファレンスによって最大ポテンシャルが定まるのです。その最大ポテンシャルが「認知」と「配荷」によって制限されて、現実のビジネスの結果が決まります。ということは、市場規模が一定と仮定すると、売り上げを伸ばすためには、1) 自社ブランドへのプレファレンスを高める、2) 認知を高める、3) 配荷を高める、の3つしかないということです。
> ___
> 私の経験上、問題のあるビジネスのたいていはプレファレンス以前に、「認知」と「配荷」にわかりやすい大きな問題があります。
> ___
> 認知を伸ばすこと、そして配荷率を伸ばすことは、一番わかりやすくて確実性の高い勝てる戦なのです。
プレファレンス以前の成果の出やすい部分として認知と配荷の重要性について説明されていた。
## 結論
個人事業のマーケティングの参考になればと思って読んだのだが,結果として全く参考にならなかった。
著者の背景が大中企業の幹部でいろいろ実務で関わってわかっているからこそできる方法だろうと感じた。
背景の似た大中企業のマーケティング担当者なら評価が高くなるのかもしれないが,マーケティング未経験の個人事業主が取り入れるのは無理だと思った。
後半などもいちいち細かいことを長ったらしく書いており,何がいいたいのか具体的にどうすればいいのか全くわからなかったのでパラパラめくって読み飛ばした。
凡人が読んでも時間の無駄な本だと思った。
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sugarさんの書評 2017/02/11 1いいね!
この本を読んでみたかった点としてはやはりマーケティング能力が現状の仕事に必要である、何かひとつでもその成功から得られるものがあるのではないか?と思い、手に取ってみた。
結論としては現職はBtoBであり、この本に書かれているのはBtoCでありそのままを応用するのは難しいかもしれないと感じた。ただBtoBであっても最終的にはCに対する意識が交渉を進めるうえでやはり大事である。ということであった。
またこの本の中にある「確率理論の導入とプレファレンスの数学的説明」は何かに役立てることができるのではないかと思えた。
その中でも特に以下の部分を挙げたい。
①行った業務は必ずその効果・結果・継続性などを検証し定量化を行い、次への糧にする。研修を行った際はそれがどのような効果をもたらし、どのような結果をどのくらい効果が持続したのかを見極めなければならない。
②まとめ:市場調査の本質と役割は3点に要約される。
1.消費者の本質的なニーズ(生きていく上での欲求)は変わらない。変わるのは、そのニーズを満たすカテゴリー便益の製造方法と個々の消費者への便益の配達方法であり、そのカテゴリーを構成している我々のブランドである。我々の取り扱う、カテゴリー・ブランドに対する消費者のプレファレンスが我々の運命を握っている。そのプレファレンスは消費者を取り巻く環境によって変わっていく。プレファレンスの強さを決める消費者の判断は状況に左右され感情的である。
2.1.の認識の下、中長期の未来に対しては、自身が取り扱っているカテゴリーとそのカテゴリーを含む上位商品群の本質(消費者の求める便益)を質的調査を基に見極める。(質的調査:主に仮説を生み出すための調査。その後に量的調査で仮説を証明する)次にそれらを基礎に整合性を使いカテゴリー上位商品群の法則性を見出す。
「カテゴリーとそのカテゴリーを含む上位商品群の本質」と見つけた法則性の2店から現行の戦略(プレファレンスの強化、認知の方法の改善、便益の配達方法も含む)を見直し、具体的な複数のシナリオを作成する。新しい重要な情報・学びが出るたびに改定する。
3.現状・近未来においては、コンセプト・テスト、コンセプト・ユース・テストにより消費者の現状のプレファレンスを競合に対して相対的に知ることができる。この現状のプレファレンスを基に需要を予測し、効率のよい投資判断ができる。現状のプレファレンスの改善は、このテストの購入意向を重回帰分析することによりわかる。
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